挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

14/854

命を奪うという事★

とりまる様から頂いたイラストを挿絵しています。
苦手な方はご注意ください。
 草原を抜け、拠点を山と森に移す。
 その頃になると戦い方も大分慣れてきたのかラフタリアの動きも良くなって来た。
 採取も順調。魔物から得る経験値と副産物で荷物が大分かさばって来る。
 と、その時だった。
 今まで、なんとなく無生物系っぽい魔物ばかり相手にしていた俺達だったが、とうとう動物に似た魔物に出会った。

 一頭身の……茶色いウサギ?
 ウサピル。
 変な名前だ。

「ぴょ!?」

 ウサピルは俺達を確認するや否や、跳躍して大きな前歯で俺達に襲い掛かってきた。

「危ない!」

 弱そうだと判断したのかラフタリアをターゲットにしている。
 だから俺がラフタリアを庇って前に出る。
 ガイン! ガイン!
 まだ俺の防御力の方が上のようだ。

「よし! 突き刺せ」
「あ……ああ……」

挿絵(By みてみん)

「どうした?」
「い、生き物、血、血がでそう……」

 うろたえるラフタリアの言葉に何を伝えたいのか察する。

「我慢しろ、これからこんな敵と戦っていくんだ」
「で、でも」

 ガイン! ガイン!
 ウサピルは何度も俺に噛み付きを繰り返している。

「我慢しろ、そうじゃないと俺はお前の面倒を見切れない」

 そうだ。折角の奴隷だが、戦えないのでは必要ない。
 悪いがあの奴隷商に買い取ってもらって別の、戦える奴隷を買うまでだ。

「い、イヤ!」

 目が据わったラフタリアが子供にしては恐ろしい形相でウサピルの背中にナイフを何度も突き刺した。
 引き抜いた時に、血が吹き出る。

「あ……」

 ガクリとウサピルが事切れ、地に転がる。
 その様子をラフタリアは目で追いながら、ナイフに付いた血を見て震えている。
 顔色が蒼白になり、見ているだけでいたたまれない気持ちにさせる。
 けど、同情する訳には行かない。
 これから俺はこんな事を何百何千とさせ続けなければいけないのだから。

「ぴょ!」

 茂みからもう一匹、ウサピルが出てきて、ラフタリアに噛み付こうと跳躍する。

「あ――」

 すかさずラフタリアとウサピルの間に入り攻撃を防ぐ。
 ガイン!

「……悪いな。本当だったら俺がやらなきゃいけない事なんだろう。だが、俺は守ることしか出来ない。だからお前にやらせるしか無いんだ」

 ウサピルを腕に噛み付かせて俺はラフタリアに言った。

「俺は強くならなきゃいけない。そのために手伝って欲しい」

 そうしなければここから先、俺に生きる道は無い。期限は迫っている。後一週間と数日で始めての災害の波に遭遇するのだ。
 今のままではとても生き残れる自信が無い。

「……でも……」
「一週間と少しした後、世界を脅かす波が訪れる」
「え!?」
「それまでの間に少しでも強くなりたいのが当面の目的だ」

 ラフタリアがワナワナと震えながら俺の話を聞き入った。

「あの……災害と戦うの?」
「ああ、それが俺の役目なんだそうだ。やりたくてやっている訳じゃないけど……そういう意味ではお前と俺は似ているかもしれない。強制させている俺が言えた義理ではないが」
「…………」
「だから、できるなら俺にお前を手放させるような真似はさせないで欲しい」

 また育てなおすロスも然ることながら、あの檻にもう一度入れるのはあまり気分が良くない。
 でも、今の俺には金が無い。売らねば、新しい奴隷は買えない。

「……分かった。ご主人、様、私……戦い、ます」

 蒼白だったラフタリアの顔色が徐々に血色が戻り、ゆっくりと頷きながら血塗れのナイフでウサピルの急所を一突きした。
 なんとなく、先ほどの怯えた態度を一転させ、決意に満ちた目をしている。
 コロンと転がるウサピルをラフタリアは見て、静かに目を瞑る。
 そして前に出て解体しようとナイフを持ち替える。

「それは俺にやらせろ。お前にばかりさせるわけには行かない」
「はい」

 俺は解体用のナイフを取り出し、ウサピルを解体した。
 これは現実。ゲームではない。
 できる事なら目を逸らしたい現実だがしょうがないんだ。
 生き物を捌くのは初めてだったが、これがこの世界で生きるための手段。
 手にウサピルの血が付いた時、少なからずラフタリアの気持ちが理解できた。
 二匹を一通り解体した所で盾に吸わせる。

 ウサレザーシールドの条件が解放されました。
 ウサミートシールドの条件が解放されました。

 ウサレザーシールド
 能力未解放……装備ボーナス、敏捷3

 ウサミートシールド
 能力未解放……装備ボーナス、解体技能1

 後者の盾に変化させ、俺は立ち上がる。

「ご主人、様。どうか、私を、見捨てないで」

 ラフタリアが高揚した表情で俺に懇願する。
 余程あの場所に戻りたくないと思っているのだろう。
 夜は叫び、病気持ちでガリガリ。
 下手をすれば死んでしまうかもしれない。それは後味が悪い。
 あのクソ女と重ねて死ぬ瞬間を嘲笑ってやりたいとも思うが、実益に合わない。

「役割をこなせば見捨てたりはしない」

 まだ、死んで貰っては困るのだ。
 まだ……そう、クソ女と同じ性別の生き物には……クソ女の!
 頭の中がぐるぐるしてくる。
 この考えは止めよう。心が病む。
 今は、少しでも奴隷と一緒に強くなる方法を模索していく時だ。

 EXP7×2

「私は、ご主人、様の、力になりたい、です」

 それからラフタリアは見違えるほどやる気を出して現れる魔物に切りかかった。
 一度なんて俺が足止めする前に、攻めようとしたので制止させたくらいだ。
 良い傾向だが、何か……心を逆なでする。
 俺のやっている事は決して褒められる事ではない。
 全部私利私欲の為なんだ。
 だが……それでも、しない訳にはいかない。

 その日の晩は森の休憩に良さそうな広い場所で薪に火を点け、キャンプをする事にした。
 採取した薬草で食べられそうなのとウサピルの肉を鍋で煮た料理を作った。
 残った肉を焚き火の傍で焼く。
 明日の夕方には一度町に戻る予定だが、魔物の肉が売れる確証は無い。
 食べられるかどうか不安だったが目利きスキルにも食べられると出ている。
 料理が終わった肉を一切れ、試食して問題が無いのを確認する。味は分からないが。
 ただ、焼いただけだし、煮ただけなので素っ気無い料理になってしまっている。
 料理スキルが作動して、品質は普通からやや良いになっているので不味くは無いだろう。

「ほら、食えよ」

 出来上がった鍋と焼肉をラフタリアに食べさせる。

「お、美味しい!」

 先ほどからグウグウとお腹を鳴らしてできるのを待っていたラフタリアは、目を輝かせておいしそうに食べだした。
 今日の戦いで俺のLvは10、ラフタリアもLv10に上がった。
 ついに追いつかれてしまった。
 まあ、しょうがない。
 俺は焚き火の明かりを元にして調合作業に入る。
 今は少しでもお金を貯めて装備を充実させる方向で行かねばならない。知っている薬の中でもっとも高く売れる物を作る。

 ゴリゴリゴリ
 薬研で薬草を擦り合わせ、混ざった薬草を絞り、エキスをビーカーに移す。

 治療薬が出来ました。
 栄養剤が出来ました。

 もう、作れるレシピはあらかた試した。
 簡易調合レシピ1では限界が来ている。この二つだって、直感で作った奇跡の代物だ。
 盾の力を使った付け焼刃のなんちゃって調合では限界も来る。
 品質だって基本的には、やや悪いだ。

「……ケホ」

 薬の効果が切れたか。
 無言で治療薬を渡すと、ラフタリアは渋い顔をしながら飲み干す。
 とにかく、新たな金策をするにも強くなっていかねばならない。

「交代で焚き火の番をするぞ、お前が先に寝て、そうだな……しばらくしたら起こす」
「分かりました」

 妙に素直だな。初めて会ったときとは雲泥の差を感じる。

「おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。そうだ。どうせ明日には売るんだ。毛皮を毛布にして寝ると良い」

 料理中に燻してダニやノミの類を追い払った毛皮をラフタリアに渡す。
 少々小ぶりだが、重ねておけば多少は暖かいだろう。

「はい」

 ラフタリアは毛皮の匂いを嗅いでちょっと渋い顔をした。

「煙いか」
「はい。とても煙いです」
「だろうな」
「でも、暖かそうです」

 ピタリと俺の背に寄りかかるようにしてラフタリアは目を閉じる。
 まあ、良いか。
 薬の調合作業を続け、ラフタリアが悲鳴を上げるであろう時間まで焚き火に薪をくべながら待つ。
 ……ふう。
 こんな生活をどれだけ続けるのか分からないな。
 最低、後一週間とちょっとか。
 死ぬかもしれないなんて思いたくも無いけど、備えなければいけないんだ。
 ……そろそろだな。三日目ともなると騒ぎ出す時間が分かってくる。

「ん……」

 徐にラフタリアは起き上がって目を擦る。

「起きたのか?」

 悲鳴を上げなかったな。
 あ、そうか。俺を背にして暖かいように寝ていたからな。
 トラウマだろうが、人肌を背にして寝ていれば大丈夫なのか。
 ぐう……。

「……お腹空いた」

 あんなに食べたのにもうお腹空いたのか。

「はいはい」

 明日の朝用に残しておいた焼肉の残りをラフタリアに渡す。
 ラフタリアはおいしそうに肉を頬張る。

「じゃあそろそろ俺は寝るから何かあったら起こせ」
「うん!」

 もぐもぐと肉を食べながらラフタリアは頷いた。
 まったく、元気になるのは良い傾向だけど、食いしん坊になりそうな様子だ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ