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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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夜食

 それからしばらくして……。
 コンコンと部屋の扉を叩く音が聞こえる。

「あの……」

 なんかラフタリアが……女の子の奴隷達を連れてやってきた。

「どうしたんだ?」
「えっと……」

 言葉を濁しながらラフタリアは俺に頼もうとする。
 なんだ? 察しろとか無茶な事を要求する気か?

「おねしょか?」
「違います。ほら、ナオフミ様にちゃんと言ってください」
「えっと……その」

 ぐー……。

 女の子奴隷達が恥ずかしそうに俯いた。

「……はぁ。分かった。どうせ他のガキ共も同じ事になっているんだろ? 一纏めにして待っていろ」
「ありがとうございます」

 俺は外の調理場に向かい。料理の準備を始める。
 ホント、腹減るの早いな。
 狩りに行かせた時に持ってきた魔物を捌いて、適当に串焼きにする。
 小さいのは面倒だから丸焼きにしよう。
 目下、料理班とか軌道に乗ったら作らないと暇が無いぞ。


 そんなこんなで翌日。

「さて、夜食まで食ったお前等に言っておこう。働かざる者食うべからず。食材は日に日に減る。増やすには狩りで補わねばならない。つまりお前等が採ってきた物で俺は次の献立を考えている。分かるな?」
「「「うん!」」」

 ……妙に素直だ。
 あの俺を敵視するキールでさえ頷いている。
 若干気持ち悪いが、やる気が出ているのなら問題は無いだろう。

「夕飯までは作ってやるが、次の飯はまだだ。そこは勘違いしないように」
「「「……はーい」」」

 昨日の夜は大変だった。作っても作ってもお代わりを要求するし、本当に腹が減っているみたいだったし。
 ここに着いてからずっと飯を作っている気がする。
 俺は母ちゃんじゃないっての。
 ある程度成長が止まったら色々と仕事を教えるつもりなんだ。それまでの辛抱だが……。

「「「ごちそうさまでした!」」」
「おそまつさまだ。さて、じゃあ夕方まで狩りに行ってこい」
「「「はーい!」」」

 昨日よりは表情が明るめでみんなフィーロの馬車に乗っていく。
 ……帰ってくる頃には平均20と少しくらいまで上がってくれたら良いのだが。

「勇者様の料理は美味しいですね。こっちも頑張りますよ」

 城の兵士も飯を食ってやる気が出ている。ま、こっちも作業をして貰わねばならないし、頑張って貰おう。
 俺は……若干虚しい気分になりながら夕飯の準備に取り掛かるのだった。
 残った時間は兵士の仕事の手伝いに割いた。

 目下必要なのは、食材の調達だ。
 そんな訳で念には念をと除草剤を大量に盾に作らせている。
 問題が起こった場合は即座に対応できるようにしておかねば。
 そのためにも奴隷共のLvをあげさせている訳だし。

 下手にあれを使って変異されようものなら何が起こるか分からないからなぁ。
 とりあえず、馬車から降ろした荷物に入っているあのアイテムの加工を行おう。


「「「ただいまー!」」」

 全員泥だらけになりながらも笑顔で村に帰ってくる。
 昨日よりも元気だな。反面、リーシアはくたくたになっている。
 ラフタリアやフィーロは特に疲れた様子は無い。

「おう、お前等今日も頑張って狩りをしたか?」
「うん!」
「あったりまえだろ!」

 子供の適応力はすさまじいものがある。二日目にして慣れたか。
 ラフタリアはもう少し戦闘に意欲が無かった覚えがある。

「じゃあ約束通り、飯は作ってあるぞ」
「「「わー!!」」」

 駆け込むようにして用意した夕飯を貪る。

「さて、ラフタリア」
「なんですか?」
「飯の後は、ちょっとした事をする……ある意味、怒られるかもしれない事だ」
「な、何をするのですか?」
「ジャングルだよ」

 俺の返事に思い当たる所があったのだろう。
 ラフタリアの表情が青ざめる。

「あれを植えるのですか?」
「ああ、どうせこの辺りは荒野が続いているしな。調度良いだろ?」
「ですが……」
「後の世を考えると土壌に問題が起こりそうだよなぁ……一応、奴隷商に土壌整備が出来る魔物を頼んでおいたけど」
「その……分かりました。背に腹は代えられませんよね」
「物分かりがよくて助かる」
「効率を考えたらしょうがありません」

 まあラフタリアは効率主義だよな。
 微妙に世間体を気にするタイプでもあるが。

「ついでに色々と研究したかったんだよ。薬草とかも生産できないかって」
「待ってください。まさか更に改造するつもりですか!?」
「ああ、出来ればタダで金のなる木に出来るような物を実らせるつもりだ」

 そう、俺の計画では金も必要になる。8人程度の奴隷で村を再興するなんて不可能だろう。仮に奴隷商に頼んだ奴隷が追加でやってきたとしてもだ。

「一応、管理がしやすいようにまだ滅茶苦茶な改造はしない。あいつ等が育ってきて、問題が起こった時でも対処できるようになるまでは食料生産を最優先だ」
「はぁ……本当に、気を付けてくださいよ」
「分かってるって」

 根底から破綻するような真似をする訳にはいかないけど、やれる事はして行かないとな。
 こいつ等には戦闘以外でも金稼ぎをして貰う予定だし。
 そんな風に考えているとあっという間に今日作った飯が無くなった。

「「「ごちそうさまでした!!」」」
「お粗末さまだ」

 ガヤガヤと楽しげな会話が聞こえてくる。
 ここに来て数日だというのに大分生活にも慣れてきたみたいだな。
 土地勘もあるし、故郷というのも理由の一つか。
 少なくとも奴隷として生活するよりは精神的に安定もするだろうし。

「さてお前等、ここで一つ重要な話をする。ちゃんと聞けよ」
「なーに?」

 フィーロと同じく奴隷が首を傾げて聞いてくる。
 ちょっと滑稽だな。

「良いから全員ついてこい」

 俺は畑の方に歩いて行き、全員がちゃんと着いて来て見ているのを確認する。

「ここに一つの種がある」

 奴隷全員が頷く。

「南西の地でちょっとした問題を起こした植物の種だ」

 この話題に城の兵士たちは聞いた覚えがあるのだろう。囁き合う。

「それを改良した物がこれだ。お前等、昨日の夜は腹が減って夜食を食ったよな?」
「う、うん……」

 キールが頷く。分からなくもないか。

「さすがに毎日俺が料理する訳にも行かなくなるのは分かれよ」
「でも……盾の勇者様の料理、とても美味しい!」
「そうそう! 毎日食べたい」
「お前等に作っていると俺の仕事が出来ないの。偶になら作ってやらなくもない。もちろん、それ相応の頑張りを見せれば望み通りに披露してやる」

 こういう開拓や復興事業って何にしても食料が最優先だ。
 ともすれば、やる事は一つ。
 こいつらの腹を握ってやれば良い。
 その為の準備として飯を食わせてやっている訳だ。これだけ飯を食わせればやる気も向上するだろう。

「でだ。今夜から俺が飯を作る時間以外で、腹が減ったらどうするか、それを見せてやる」

 俺はポンと地面に種を落とし、水を掛ける。
 種から芽が出てみるみる成長していった。
 身の丈、三メートル程、バイオプラントは伸びてトマトの様な実を宿す。

「ある程度繁殖力は制御してあるが、今夜中にはこの畑を埋め尽くすだろう。お前等の仕事は、この植物の管理だ」
「ど、どうするの?」
「定められた敷地を超えたら伐採しろ、とはいえ、予定範囲は大きめに取るから、まだ切らなくて良い。実の収穫は任せた」
「その実……食べられるの?」
「ああ、南西の村じゃ今でも扱っているはずだ」

 特産品として城下町で見覚えがある。料理の材料にも使われていたはずだ。

「腹が減ったら食べても良い。ただし、何か問題が起こったら近くの大人に伝えろ。以上だ」

 大きなトマトみたいな実をもいで、フィーロに与える。
 食い足りないって顔をしていたフィーロはもぐもぐと食べ始めた。
 それにつられて一緒に食べる奴もいる。

「すごいね……」
「うん」
「俺たちがこの村を復興させるって最初は無理なんじゃないかと思ったけど、この人ならしてくれるって思えてきた」

 何か不思議な物を見る目で見られているような気がするのは気のせいか?

「以上だと言ったはずだぞ。解散しろ」

 この実の管理が上手くいけば食料問題は一気に解決していく。
 むしろこの問題を解決させない限り、三か月半という短い時間で役に立つ部隊を作るのは不可能に等しい。
 俺が今まで異世界で得た知識や人脈、そして道具をフル活用して何処まで出来るか試す時が来ている。
 さあ……これからが正念場だ。


 翌朝。
 畑を覆い尽くさんばかりのバイオプラントを後目に朝の指示を出す。

「いてて……」

 奴隷共は節々の痛みを訴えている……成長痛だな。
 えっと、全員のLvを確認する。
 昨日の推理通り20前後まで伸びた。リーシアはLv27にまで上がっている。
 ラフタリアの例を見るに、成長してしまえば食料問題は解決していく。
 良い傾向だ。

 ぐう……。

 みんなして腹を鳴らした。

「朝ご飯は?」
「今日は弁当だ」

 大きな木箱に鉄製の容器を入れて、作ったものを馬車に乗せる。ちなみに中身は薄切りにした焼き肉を挟んだサンドイッチだ。

「いきなり出発かよ」

 キールがふてくされて呟く。
 またコイツか。
 丁度良い。今日はその態度を改めさせるには持ってこいな予定を組んである。

「俺の真心を知らないから言えるんだ。現地に着いてから食えよ。間違っても馬車の中で食うなよ? そうじゃないと大変な目に遭うからな」
「へ?」
「フィーロ、今日は遠出をしてこい」

 この辺りの魔物を駆逐されては生態系に問題が出る。
 ある程度強くなってきたこいつ等でも戦える程度の相手を基準に戦わせれば良い。
 フィーロはその辺りの理解は野性的勘でどうにかしてくれるだろう。

 問題は速度、ラフタリアが衰弱しきったあの乗り物酔いとの戦いをこいつ等は学ばねばならない。
 俺の計画には必要不可欠の慣れだ。
 何、慣れればどうってことない。

 ただ、食ったものをそのままリバースされたらもったいない。現地に着いてから食ってもらえば一石二鳥だ。

「ナオフミ様……さすがにあんまりですよ」

 馬車に乗ったラフタリアが俺にそう言う。

「リーシアもちゃんと慣れるんだぞ」
「ふぇえ……」
「お前、注意したのに相変わらずだな。お前だけ食べていくか?」
「が、頑張りますよぅ」

 その声に力がない。
 ま、落ちは見えているからなぁ。
 バイオプラントの葉でエチケット袋を作り、奴隷共に渡す。

「何これ?」
「すぐに分かる。じゃあいってこーい!」

 ポンとフィーロの背中を叩き、走らせる。

「いってきまーす!」

 フィーロは手を振って、全速力で走りだした。

「わ!」
「な――」
「ぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ……」

 ガラガラと音を立てて馬車はあっという間に見えなくなっていった。

「さーて、今日も準備をするとしよう」

 食料に関する問題はそろそろ解決すると思うし、次の段階へ移るか。

「盾の勇者様?」
「どうした? 材料が足りないのか?」
「いえ、問題はありませんが……こちらの朝食はまだでしょうか?」

 こちらの朝食ってお前な……。
 まるで俺が作るのが当たり前みたいな言い分だ。

「……あ、ああ、準備してある」

 兵士共に飯を配り、俺も朝食を取るのだった。
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