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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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出会った場所

「次は何処へ行くのですか?」
「出来れば会いたくない奴かな。大丈夫だと思うけど、いるかな」
「はい?」
「えー?」
「ど、何処へ行くのですか?」

 俺が歩く先を見て、ラフタリアは理解したようだ。溜息が混じる。
 良くこの会話でわかったな。エスパーかよ。
 ……あの領地を選んだ時点で流れ的に解るか。

「フィーロを売るの?」
「お前はそんなにアイツが怖いのか?」

 フィーロも分かったのか怯えた子犬みたいな瞳で尋ねてくる。
 天真爛漫なフィーロだが過去のトラウマからか、アイツに苦手意識を持っている様だ。
 ぶっちゃけやろうと思えば一撃で殺せそうだけどな。
 あれか、象が子供の頃に縄で木に縛って逃げられない事を覚えると大人になっても逃げないっていうアレ。
 それに似た状態なのかもしれないな。

「売らないから安心しろ」
「わかったー」
「え? え?」

 リーシアは……貴族なんだから知っていそうなんだけどな。
 没落だから知らないのかも。
 と、裏路地を歩いて、久々のテントに足を運ぶ。

「おや?」

 そこにはあんまり関わりたくない奴隷商が暇そうに座って客を待っていた。
 考えてみると真昼間から奴隷を買いに来る貴族とかって居るのか?
 魔物商の顔の方が有名っぽいよな。

「これはこれは盾の勇者様、お久しぶりです。ご活躍は耳に入っておりますよ」
「久しぶりだな」
「忘れられてしまったのかと思っておりました」
「お前のような奴を忘れてたまるか」

 なんていうか、独特のテンションのコイツを忘れると言うのはちょっと難しい。
 アクセサリー商よりもやり手に感じる。
 こういう商売って覚えてもらうのが一番だからな。

 考えてもみれば……フィーロのツメを買いに来たのが最後だったな。龍刻の砂時計でクラスアップが出来なかった時以来だ。
 あの時にシルトヴェルトとシルドフリーデンへ行く様に唆されたんだ。
 って、コイツ、裏で女王と繋がっているんだっけ? 女王自身、会った事は無いらしいけど。

「色々とやらかしてくれたよな。まさか国と裏で繋がっているとは」
「盾の勇者様の事は一目見て気に入ったのは変わりませんよ」
「はいはい。そういう事にしといてやる」
「して、今日は何をお望みで?」
「お前の本業の方だ」
「おお!」

 奴隷商の目が一際輝く。
 何がお前をそんなにワクワクさせているのか知らんが、想像通りの展開にはさせない。
 恐らく有名人になっても奴隷を買う俺を内心喜んでいるとか、そういう所だろう。
 間違ってはいないが、本質的な部分では大きく違っている。

「予算はどれくらいが望みで?」

 前に女王から貰った銀貨5000枚が手付かずで残っている。
 親父に武器防具を作ってもらった時は女王払いで頼んだ物だったし……これからはそこも自腹か。

「とりあえず銀貨3000枚の範囲で安目の亜人奴隷を買いたい。出来る限りLvの低い奴をな」
「それはどのような考えで?」
「話す必要があるのか?」
「存じておりますとも、新たな事業への投資ですね」
「前にも言ったが、知っている事を聞くな」

 本当、コイツは何処まで知っているのか……未来を見通せるとか言われても信じられそうだ。

「こちらでございます」

 奴隷商はテントの奥の方へ案内する。
 その後に続こうとする俺達にフィーロが足を止める。

「どうした?」
「……なんか行きたくない」

 ああ、独特のあの暗い雰囲気や匂いを感じ取っているんだな。
 俺はもう慣れたが、気持ちの良い物じゃないのは確かだ。

「じゃあそこで待っているか?」
「うん」

 フィーロはクンクンとたまごガチャの方で匂いを嗅ぎながら頷く。
 そこがお前と俺達が出会った場所だぞ。
 食べるなよ、と注意をして俺は奴隷商に続いた。

「あの……何があるんですか?」
「役職で言えばお前と同じ連中が居る所だよ」
「ふえぇえ!?」
「お前さー……没落とはいえ貴族だろ? しかも樹に助けてもらえるまで似た様な状況だったらしいじゃないか、気づけ」

 この国は奴隷制度を採用している。だから貴族や金持ちは奴隷を所持している事があるはずなのだ。
 なのにリーシアはそれを知らない?
 意外とボンボンだったのか?

「こ、ここがなのですか? 気づきませんでした」
「ま、人間は扱ってない所だけどな」
「はぁ……」

 奴隷商の後に付いていって、ラフタリアと出会った檻の近くへと進む。

「……ここが私の運命が変わった場所なんですよね……」

 感慨深いような気がしなくも無いが……。
 思えば、長いようで短いよな。

「では予算内で見繕いましょう。若干サービスさせて頂きます」
「気前が良いな」
「面白い事業を始めるご様子に私、ゾクゾクしています! これからお得意様になってくださるのでしょう?」
「まあ……カテゴリー的に言えばな」
「今は少々、暇な時間でございますが、盾の勇者様のお陰で儲けさせていただいておりますからね」
「どういう意味だ?」
「神鳥の時と同じ現象が起こっていると思えばご納得できるかと」

 ああ……ラフタリアが目立つ程、活躍していたからな。
 連合軍でも功労者扱いだろうし、そんな奴隷を売った所だと知れば儲かるか。

「見繕ってくれるのは良いが、今はそのほかにも買いたい奴隷が居るんだ」
「それはどのような?」

 俺は奴隷商の質問に頷き、ラフタリアを見る。
 そしてラフタリアに正面から近づいて肩に手を乗せる。

「な、なんですか?」
「さあラフタリア、この中にお前が住んでいた村の奴はいるか? 予算にもよるが好きなだけ選べ」
「!?」

 ラフタリアが驚いて目を見開いた。

「あ、あの……よろしいので?」
「何を今更、元々その地域に住んでいた連中を採用するのが効率的でもあるだろ? 少しは戦わせるが目的は領地の建設だ。それに……」

 ラフタリアも思い出の村を再興させたいとか心の何処かで思っていると俺は信じている。
 それに見合った活躍をラフタリアはしている。だからこそ、俺はラフタリアの故郷を領地として望んだ訳だしな。
 この考えはラフタリアが墓参りをしている時に閃いたものだ。どうにかして俺がこの世界を去った後、ラフタリアに居場所を作って上げられないかを考えて導き出した。

 無論、それだけが理由では無い。
 ラフタリアの村があった地域は港が近い。そして山も数時間も歩けば到着する距離にある。
 そして元々人が住んでいた土地だけあって比較的になだらかな地形だ。
 色々と試すには絶好の場所と言っても言いだろう。

 波の所為で、文句を言う先住民もいないしな。

「ああ、奴隷商。お前も顔なじみの同業者の店へラフタリアと一緒に見てきてくれ、他にもラフタリアから話を聞いて貴族からの買戻しも視野に入れてくれよ。盾の勇者が欲していると聞けば喜んで譲ってくれるかもしれない」

 この国で俺の評価はうなぎ登りだ。使えるなら利用しない手は無い。

「奴隷に飴を与えつつ働かせる勇者様の考えにゾクゾクしますね! 分かりました!」
「で、ラフタリア。ここにはいないのか?」
「ええっと。待っていてください」

 それにしても、このシルクハット……俺がする事をなんでも肯定するよな。
 なんか裏がある様で怖い。後で何か無いか調べておくか。

 奴隷商に案内されてラフタリアは奴隷の入った檻の中を見て回る。

「――いました!」

 おお……居たのか。
 ラフタリアは檻に入ってうずくまっている亜人の子……なんか犬っぽい男の子に声を掛ける。年齢は見た感じ10歳前後。出会った時のラフタリアより少し大きいくらいかな。

「キールくん。だよね?」
「お姉ちゃん誰? 何で僕の名前知っているの?」

 先ほどの会話は聞こえてなかったんだな。

「忘れちゃったの? 私、大きくなったけどラフタリアだよ」
「え!?」

 キールと呼ばれた男の子は驚いたように顔を上げる。

「嘘だよ。ラフタリアちゃんは僕より小さいし、お姉ちゃんみたいな美人じゃないよ。可愛いとは思ってたけど……」

 もう死んでしまった人のような口調でキールは俯く。

「じゃあ私が本物だって証明してあげるね。キールくんはあの事件の二ヶ月前、お父さんの誕生日祝いにと綺麗な貝を探して海に潜って、溺れかけてサディナお姉ちゃんに助けてもらって一緒に――」
「……え!? 本当に……ラフタリアちゃんなの?」
「そうだよ。後、近所の平原で毒キノコを食べてお腹を壊して見つからないように隠れていた事もあったよね。みんなには絶対に内緒だ! って見つけた私に言ってたじゃない。漏らしなが――」
「わー! うん! 信じるよ! お姉ちゃんがラフタリアちゃんだって!」

 幼き頃の思い出という奴か、微笑ましいな。
 だが、内容はかなり恥ずかしい。

「ラフタリアちゃん。どうしてそんなに大きく……美人になったの?」
「あのね。私は今、盾の勇者様であるナオフミ様の奴隷をしているの」
「え!?」
「ナオフミ様はとても信頼できる方よ。私はナオフミ様に頼まれて、村に居た人達を集めて欲しいって言われているの」
「そ、それで僕を? あの村に帰れるの?」
「ええ、だけど……ナオフミ様の奴隷として働かされるとは思う……でも、絶対に悪い結果にならないから付いてきて欲しいの」

 キールという子はパチクリと何度も瞬きをしてラフタリアを見つめる。
 若干、顔が赤いな。

「盾の勇者様ってそこに居る男か?」

 キールが俺を睨みながら訪ねる。
 なんだその態度は。

「そうよ。ちょっと目つきが悪いし、嫌いな相手がいやな目に遭うと笑う癖があるけど、良い人よ」
「説得する気があるのか?」

 さりげなく俺に嫌味を言うようになるとは、言うようになったじゃないか。
 だが、その説得じゃあ無理だろ。
 少なくとも俺だったら逆に警戒を強めるレベルだ。
 むしろラフタリアが変な男に引っ掛かっている様にしか見えない。
 ……あながち間違ってもいないのが痛い所か。

「今じゃ、この国の英雄でしょ? 知らないの?」
「騒がしいのは聞いてたけど……本当に、あの村へ?」
「うん。お父さんやお母さんは……無理だけど、頑張れば私達で取り戻せる。だから来て」
「……分かったよ」

 キールは頷いてラフタリアが伸ばした手を掴む。

「では買い付けを行いますので、勇者様の奴隷と一緒に探してますね。少々お待ちください」
「ああ、俺はその間に色々と準備してくる。任せたぞ」
「はい!」
「ふふふ、楽しくなってきました」
「じゃあリーシア。行くぞ」
「良い話ですね……はい!」

 涙ぐみながらリーシアは俺に付いて来る。
 インテリっぽいリーシアはこう言う物語展開に弱いんだろうな。読書が趣味に見えるし。
 どうも博識っぽいから間違っていないだろう。
 奴隷商とラフタリアに後を任せ、俺はリーシアを連れてテントの入り口へ戻った。
 フィーロが俺を見つけて駆け寄ってくる。

「終わった?」
「ああ……そうだ。フィーロ、頼みたい事があるんだが」
「なーに?」
「リーシアを乗せて、Lv上げに行って来い。気が済むまで狩りをしていいぞ」
「ふぇ?」

 フィーロの目が輝き、リーシアが声を漏らす。
 何をボケた顔をしているんだ。
 お前の本懐は強くなる事だろうが。

「どうせ買い付けた奴隷のLv上げも行う予定だしな、その練習にピッタリだろ。リーシアも何時までもLv1だと困るし」
「で、ですが……フィーロさんと、どうやって」
「安心しろ。お前はフィーロの背中に乗って落ちないよう掴まって居れば良い。フィーロの馬車は乗り物酔いが激しいから訓練にもなる。あのラフタリアも通った道だ、我慢しろ。一石二鳥だしな」

 オンラインゲームで言う所のレベリング行為だ。他にも育成ゲームとかそう言う類のゲームにもある。
 高Lvのキャラクターを使って低Lvのキャラクターを安全に育て上げる方法だ。
 フィーロに任せれば安全に行えるだろう。

「じゃあ行って来るねー」
「ふぇえ!?」

 魔物の姿になったフィーロがヒョイとリーシアを背中に乗せ、テントから飛び出し、走り出す。

「ふぇえええぇぇぇぇぇぇぇ――」

 あっという間にリーシアの叫びは小さくなっていった。

「さてと」

 俺はローブを纏って、テントから出る。
 他にも寄る場所は沢山あるからな。
+注意+
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