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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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勇者の処遇

「盾の勇者様ありがとうー!」
「勇者様ー!」

 城へ向うのだが、フィーロが先に行ってしまっているから女王が用意した馬車に乗って行くと凱旋中みたいに城下町の連中が俺に手を振っている。
 現金な奴等だ。
 ま、民衆意識ってそういう単純な所があるんだってアニメとか歴史で知っているけどさ。

 問題の無い程度に手を振って応じる。これが数ヶ月前だったらゴミの一つでも飛んで来そうだな。
 なんたって盾の悪魔だし。
 というか最初の波を乗り越えた時、なんでお前がいるんだ? みたいに睨まれたぞ。
 正当な評価を受けたと喜ぶ所なんだろうが、どうにも引っかかる。

 やがて城に入ると会議室に通された。
 連合軍の連中が女王と一緒に待っていた。

「盾の勇者様、この度は霊亀の討伐に尽力を尽くして頂き、真にありがとうございます」
「前置きは良い。現状報告を聞きたい。波に関してだ」

 波の状況やその他、聞きたい事が山ほどある。
 霊亀は緊急事態だったから混乱していたが、調べてわかった事は沢山あるだろう。

「……分かりました。現在、世界中の龍刻の砂時計が停止しております」
「世界中の?」
「はい。全ての砂時計が停止しております」
「霊亀の中にも龍刻の砂時計に似た青い奴があったがそれもか?」
「あ、ナオフミ様」

 ラフタリアが手を上げる。
 ラフタリアとフィーロは心臓部を倒してきたんだから知っているのか。

「霊亀を討伐した時の事なのですが、心臓からの帰り道で、あの砂時計がフッと消えたのを見ました」
「何?」
「どうも掻き消えるように、光となって消えたのを私は見ました」

 どういう意味だ?
 次の波である砂時計の襲来する時間をまた見直す。
 やはり3ヶ月半ほど時間がある。

「その件は、現在調査中です。追ってご報告いたします」
「分かった。勇者しか認識できないか分からないが、俺の方も砂時計の到来予測時間は止まっている」
「はい……七星勇者の方からも聞いております」
「ただ、もう一つの砂時計に3ヶ月半の時間が映っている。客観的に見れば……」

 その場の空気が重くなる。
 連鎖反応で霊亀の次の化け物が出現する事を表していると思って間違いないだろう。
 四霊だから鳳凰、麒麟、竜か。

「期限は3ヶ月半。それまでに準備を整えるのが妥当な所だな」
「御意」
「被害総数はどんなものになった?」
「……都市が7つ、砦が4つ、城が2つで済んだのは幸いでしょう。他に村を入れたら……」
「そうか……」
「被害者総数は……まだ測定が終わっていません」

 芳しくは無い。こんな被害を出す化け物がまだ出現する危険性があるんだ。

「まったく、3勇者はどうなっているんだ?」

 こんな事を仕出かして置きながら今尚姿を現していない。
 霊亀の中にもいなかったし、後からひょっこり出ても来ない。
 リーシアが心配していた樹は何処をほっつき歩いて居やがる。
 一番有力な線は死んだか。
 だが、俺の中ではアイツ等が死ぬというイメージがどうも沸かない。
 うざいドヤ顔で華麗に勇者しているムカつく野郎だからな、アイツ等。

「霊亀のどこかで見つかったとか報告は無いのか?」
「今のところありません。各地に捜索を出していますが、現在どこにいるのかすらわかりません」
「むう……」

 謎だ。封印を解いて、何がしたかったのか。
 霊亀の封印された土地の下に強力な武具の眠る迷宮があるとかじゃない事を祈りたい。
 もしもそうだったら、一発打ん殴る程度じゃ済まないぞ。

「で、その封印を解いた勇者に関してなのですが……」
「ん? 何かあるのか?」
「混乱を避ける為、封印を解いた首謀者であるのは伏せられる事になります」
「何?」
「一応国が保護する形となりますが、責任を問う事は大きなリスクが生じるので……」

 ……確かにそうだよな。
 下手に今回の大災害が勇者によって起こされたと国が発表したら、無関係の勇者にも被害が及びかねない。
 四聖勇者の三人がこんな災害を起こしたんだ。他の勇者がやらないとは限らない。
 というよりも混乱……この場合、勇者の信頼性か。

 先程の凱旋を見れば、この世界の住人がどれだけ勇者に期待しているのか理解できる。
 これが勇者が首謀者だと知れれば暴動が起こりかねない。
 そして暴動鎮圧と波を同時に相手せざる得なくなり、最終的に共倒れ。

 国としては真実を公表するより、隠蔽して勇者の活躍で霊亀は倒された。という形にしたいのか。
 所謂、責任問題を押し付け合った結果という感じだな。
 ありがちな話だが、何とも……。

「それに勇者はとても強い存在ですので裁くには同等の力が必要となりまして」

 ……捕まえるのも一苦労か。
 だから事実を伏せると。

「だが、この事実は知れ渡っているんじゃないのか?」
「まだ噂の域を出ておりません。なので各国が沈黙を貫けば民衆の支持に大きく影響は出ないかと思われます。あくまでも今回の事件は波だったと公表します」

 ただでさえ世界の終末を暗示する波があるのに希望であったはずの勇者が災害を助長したとなれば、活気にも関わる。
 しょうがないとは言え、納得も出来ないな。

「……ですが、風聞というものがあります」

 女王が補足を加える。

「他の勇者様方には噂の域を出ない風聞を罰として受けてもらうのが筋だと私は認識しております。もちろん、盾の勇者であるイワタニ様は大活躍をしたと大々的に宣伝は行いますが……現状城下町を見る限り、必要性は薄そうですね」
「生温い! 首謀者を捕らえ! 波とだけ戦わせる! それこそが罰ではないのか!?」

 堪え切れなかったのか、騒ぎ出す奴が現れる。
 この場合、本人を捕まえて来て奴隷にでもすれば良いのに……できないんじゃないか?
 もしも奴隷にできるのなら召喚時に四人全員奴隷にした方が効率的だ。
 高度奴隷紋でも掛けておけば民衆にも誤魔化せるし。

 そもそもあのクズが俺に奴隷紋を掛けなかったのが何よりの証拠だ。
 今更聞く内容でも無さそうだな。
 問題は使い辛い奴等が奴隷として使えない事か。
 まあそのおかげで俺も奴隷にならずに済んだんだろうけど。

「それを行えるのがイワタニ様と七星勇者だけだとご納得してから述べているのですよね?」
「ぐぬ……だが、我等が国、そして無意味に散っていった者達に顔向けできないではないか!」

 問題は、そこなんだよな。
 アイツ等、腐っても勇者だから下手に捕まえると言うのが難しいんだ。
 暴れたら停めるのも一苦労だ。
 俺だったら戦えはするが、3割まで低下したステータスで戦えるかというと厳しい。
 最低でも完治するまでは戦うべきじゃない。

 他にラフタリア達に任せるという手もあるが、それこそやってみないとわからないぞ。
 そんなリスクは背負いたくない。

「もちろん可能ならば、これまで通り波との戦いに参加させます。ですが勇者は力を持った者です。暴走の危険は常にあります。虎視眈々と勇者を集めようとする国がいないとも限らないのをご理解してのお言葉ですよね?」
「メルロマルクの女狐め! 貴様が言うのか!?」
「確かに我が国に非はあるでしょう。ですがこの話は既に済んだはず。政治的問題をここで蒸し返して何をするつもりですか? 力を持った勇者を政治の道具にしようとする輩がいないとでも言うのですか?」

 ……面倒な。
 ここでメルロマルクや各国が勇者に賞金を掛けて罰し様ものなら、勇者は自分に優しい国に亡命し、政治の道具として使われる危険性があるのか。
 だから強く裁けない。
 俺は自分に優しい国の勧誘を知らないうちに蹴ってしまったから、そういう事にはならなかったけど。アイツ等なら乗りかねない。
 本当、箸にも棒にも乗らない立場の連中だ。
 その連中の1人でもある俺が思うのもアレだけどさ……。

「勇者の処遇は分かった。他に、これだけの災害に対して……復興できるのか?」

 俺の問いに連合軍のテンションが急激に下がる。
 ああ、やはり厳しいのか。

「内部進入や誘導で連合軍自体の被害も相当出ております」
「守りきれなくて申し訳ない」

 盾の勇者である俺は本来、犠牲を如何に出さないように動かなくてはいけなかった。にも関わらず、相当な被害を出してしまった。

「いえ……彼らも本望でしょうし、内部進入に参加した者は皆、盾の勇者様が居たお陰で死地を乗り越えられたと申しております」
「そう言って貰えるのは嬉しいが」
「近隣諸国の打撃も多く、復興には長い時間が必要となるでしょう」
「……そうか」
「正直な所、イワタニ様への援助も若干厳しくなっております」

 ここは頷くしかあるまい。これだけの大災害を受けて尚、俺への多大な援助ができると言うのなら、何処からそんな金が出ているのか気になる。

「出来る限りの援助は行いますが、予定していた物と比べると……」
「ああ、分かっている。金が欲しいなら自分で何とかしよう」

 むしろ復興資金とかを集めなきゃいけない次元だろ。
 ここに来るまでに城下町の被害も見た。
 城下町の4分の1が霊亀に押しつぶされているんだ。家を失った連中の為に開拓もしなくてはいけないだろう。
 開拓……そうだ。

「なあ、援助って金じゃなくても良いんだよな」
「ええ、むしろ現状ではお金以外の方がこちらとしては助かります」

 これは連合軍を引き連れていて解った問題点でもあるし、今まで思っていた事でもあるのだが。

「じゃあ――」
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