挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

125/846

可能性

「まだだ! 状況を報告しろ!」
「あの攻撃を受けた者が倒れております。現在、状況確認中!」

 前線の方はどうなっている?
 俺は心臓の方で戦っていたラフタリアとフィーロに目を向ける。
 霊亀の使い魔諸共、疲労困憊したように肩で息をして戦っている。
 隙を突いて、戻ってくるが、顔が青い。

「だ、大丈夫か!?」
「は、はい……ですが……魔力が……」
「うん……あのね……魔力が取られちゃったの」

 くっ……厄介な。頭のブレスと同じでドレインの効果があるのか。
 後方から状況報告が来る。

「魔力枯渇で死亡したもの多数!」
「戦線は維持不可能か?」
「いえ……盾の勇者様のお陰でまだ辛うじて封印の魔法が使えます」
「そうか」

 ドレイン無効がこんな所でも役に立っているんだな。
 被害は大きいが作戦遂行に支障が無いなら引く訳にはいかない。

「つらいだろうが、急いで唱えてくれ!」
「りょ、了解!」

 このパターンだと……。
 霊亀の心臓が高出力の熱線を出す動作に入った。
 俺は駆け出して、熱線の軌道を変えるように盾を構える。

「―――――!」
「ぐう……」

 先程よりも威力が高い! 軌道を変えられない。
 放出された白い塊が霊亀の心臓に戻り、熱線の威力を高める。
 長い! さっきよりも遥かに長い熱線に盾が熱に耐え切れず俺にダメージが入る。

「ぐうううう……」

 下手に変な方向に熱線の向きを変えられたら、損害が出るぞ!

「むー……フィーロの力でごしゅじんさまを傷つけないで!」

 フィーロが魔力を吸引する構えを取る。

「ラフタリアお姉ちゃんとフィーロの真似の寝巻き着てるお姉ちゃん! 絶対にフィーロに魔物を近寄らせないで!」
「は、はい!」
「わ、分かりました!」

 ラフタリアとリーシアがフィーロを守るように陣形を組んで、霊亀の使い魔を遠ざける。

「すうぅううううううう……」

 フィーロが深く、深呼吸する。
 辺りに風が循環するのを肌で感じた。
 心臓に戻ろうとした白い塊がまるで吸い込まれるかのように俺の後方へ飛んでいく。
 いや、正確にはフィーロに吸い込まれているんだ。
 白い塊は辺りの魔力を吸い込むフィーロに引きよせられて心臓に戻ることができない。
 やがて熱線の出力が弱まった。

「よくやったぞフィーロ!」
「ゲプ」

 振り返ると、何か膨れ上がったフィーロが俺に手を振っていた。
 ……あの白い塊を吸った所為か?

「……お返し」

 フィーロが心臓に向けて口を開いて何かを吐き出す。
 凝縮された風の玉だったのだと思う。
 視認出来るほどの真空の玉は心臓に向って飛んでいく。

「―――――!!!」

 霊亀の心臓は魔法防御の結界を展開し、フィーロの反撃に対して守りの姿勢を取った。
 使い魔も心臓を守るように真空の玉に向って飛び込んでいく。
 だが、真空の玉は使い魔を粉みじんにして、心臓に向っていく。
 そして大きな音を立てて、心臓が張った魔法結界にぶつかる。
 拮抗した力のぶつかり合いで時間が稼げている。封印するなら今だ。

「よし! 行け!」
「「「は!」」」
『『『力の根源たる我等が命ずる。真理を今一度読み解き、厄災の四霊、霊亀を停める楔を今ここに!』』』

 霊亀の心臓を取り囲むように巨大な魔法陣が展開される。
 心臓はフィーロの攻撃を耐えるのに意識を集中していた所為で、追加攻撃に目を白黒させて居やがる。
 これで勝った!

「高等集団魔法『封』!」

 幾重にも重なった魔法陣が、やっとの事でフィーロの反撃を相殺した霊亀の心臓を縛り付ける。

「―――――!?」

 ドクン……ドクン……ド……クン……ド……。
 霊亀の心臓の鼓動が弱まり、やがて完全に停止した。
 外側も心臓を封印されて立ち止まるのをやめたのだろう、壁を通じて少しだけ音が聞こえてくる。

「よし!」

 歓声が沸き立つ。

「勝った! 俺達は勝ったんだ!」
「やった!」
「これで全てが終わる。長かった!」

 ふう……。

「お姉ちゃんにも返すね」
「へ? いや、フィーロ、それを私にねじ込まないで!」

 フィーロが体からぬるっと取り出した白い塊(霊属性?)をラフタリアにねじ込ませた。
 青かったラフタリアの顔色がみるみる良くなっていくけど、ラフタリア自身は服の中に虫が入ったみたいに嫌がっている。
 すぽんと白い塊を投げ捨てて、ラフタリアはフィーロを怒って追いかけっこを始める。

「こら、フィーロ! 絶対に許しませんからね」
「あははー」

 ふう……どうにか封印することが出来たか。

「――ごしゅじんさま!?」

 追いかけられていたフィーロが表情を変えて俺に告げる。
 ドクン! ドクン!
 霊亀の心臓の鼓動が再動した。
 バキンと音を立てて封印の魔法陣が砕かれる。

「そんな、バカな!」
「な、どうして!?」

 霊亀の心臓は目を大きく見開いて、熱線を放つ。

「往生際の悪い!」
「うん!」
「失敗か?」
「いえ……術式は成功したはず……なのにその呪縛を解いて動き出しました」

 くそっ!
 手段がもう無い。頭は再生する。心臓は封印できない。
 ……いや、他にもあるはずだ。諦めるな。

「ラフタリア、フィーロ! やれるか?」
「お任せを」
「頑張るよ!」

 ラフタリアとフィーロがそれぞれ、一番強力な必殺技の構えを取る。
 再動したとしても何か得られる情報さえアレば……。

「連合軍は後方に下がれ!」
「しかし――」
「二人の援護を最優先、他は自分の身を守る事を考えろ! 最悪、撤退だ!」
「りょ、了解!」

 連合軍は俺の指示に従い、後方に下がる。
 そしてラフタリアとフィーロ、俺、影とリーシアの順番で陣形を組む。

「ツヴァイト・オーラ!」

 俺が二人に援護魔法を掛けなおしたのを合図に、二人は駆け出す。

「すぱいらる・すとらいく!」
「八極陣・天命剣!」

 行け! 強引な手だけど他に無い。

「――――!?」

 霊亀の心臓は二人が飛び込んでくるのを見るなり、使い魔に身を守らせようとした。
 だが、全ての魔力を使って一点突破を図る二人を止められない。
 ビチャッと生々しい音を立てて、霊亀の心臓は穿たれる。
 突撃が終わった二人はその速度のまま俺の目の前に戻ってへたりこむ。

「ふへぇ……」
「限界です……」
「よし……状況を確認するぞ」

 俺は霊亀の心臓を凝視する。先ほど封印した時と同じように地震が発生する。倒せたか?
 殆どの管が切り裂かれ、心臓自体も大穴が空いている。
 これで再生したらそれこそ、化け物だ。
 ……ドクン。
 ――!?
 逆再生をしているかのように霊亀の心臓は管が再生して形を取り戻し、二人が開けた穴がみるみる塞がっていく。

「な……」
「なんてしぶとさですか」
「ふぇえええ……」

 俺もふぇえええって言いたいよ。まったく。

「八方塞でごじゃる……作戦は失敗、一時撤退を提案するでごじゃる」
「撤退してどうするんだ? こんな化け物を相手に七星勇者が居れば勝てるのか?」

 半ば八つ当たり気味に思わず突っ込んでしまった。

「そ、そうでごじゃるが、ここで魔物とずっと戯れるつもりでごじゃるか?」
「く……」

 確かにそうだ。幾らなんでもこんな化け物の中で長時間戦ってなんていられない。
 そもそもこの生命力は何処から来ているんだ?
 これがゲームだったのならとんだクソゲーも良い所だ。

「……わかった。一度戻って次の策を考えよう。撤退する!」
「了解……」

 連合軍の声も重い。
 勝てるはずだったのにこれでは精神的に打撃を受けてしまったような物だ。
 辺りを警戒しつつ、心臓のある場所から離れて、俺達は霊亀の体内から脱出を図る。

「山間部よりも町の方を通った方が逃げやすい」

 山の方が斜面が傾いて居て、霊亀の動きで振動する所為で足が取られる。
 瓦礫が邪魔ではあるが、それなら町を抜けて脱出した方が安全だろう。

「安全な進軍ルートの進言、感謝致します」

 連合軍の隊長が俺に感謝を述べる。

「気にするな、守るのが俺の役目だからな」

 だが……これだけの事をして徒労に終わるとは……。
 まあ、封印の魔法が効かないというのが収穫か。
 他に倒す術が無いのか。

 連合軍を守りながら、町の方の出口から出た。

「ここは……」

 フィーロと一緒に調べた寺院とはまた別の建物のようだ。

「霊亀の洞窟と繋がる管轄寺院でごじゃるな」
「わかるのか?」
「一応、事前調査はしているでごじゃるよ。ああ……勇者の残した石版が粉々でごじゃるな」
「石版? 別の寺院で見た壁画か?」
「あれは石版を当時の者が参考にしたものでごじゃるよ。名物としての評価はあちらが上でごじゃるな。他にもあるそうでごじゃるが、存在した町は全て霊亀によって壊滅しているでごじゃる」

 何? 参考という事はあの日本語の文字がこっちにも書かれているのか? 正確にはこっちの方が正しいと。
 だが……石版が粉々と言っていたな。
 桂一という勇者は倒す方法を記していた。ならば、今ほど必要な時は無い。

「少し見させてくれないか?」
「それ所じゃないでごじゃるが……」
「壁画の方に俺の読める文字が書かれていたんだ。霊亀に関する重要な所だけ抜けていてな」
「それは驚きでごじゃる。みんなで調べてみるでごじゃるよ!」

 影の言葉に釣られて俺達と連合軍総出で石版を拾い集める。
 こっちの石版は余り上手な絵ではないが、版画みたいに石に刻まれた霊亀と思わしき絵と文字が描かれていた。
 ただ……石版は壁画よりも霊亀が動いた所為で損耗が激しい。

「……読めるでごじゃるか?」
「どうですか?」

 俺はジグソーパズルの要領でパーツを繋ぎ合わせて見るのだが……殆ど、石の欠片状態で判別が不可能にまで陥っていて、解読が出来そうに無いな。

「他にも見つけましたよ!」

 リーシアが石版の欠片を持ってくる。
 ……あった! 辛うじて読める部分がある。

 目的は波による世界・・の阻止

 他に頭、心臓、同という文字が辛うじて読み取れた。

 考えろ。あの圭一という勇者が残した文字には何て書いてあった?

 脳内で補完すると……この化け物を倒す方法は、で、切れて読めない。
 よく考えろ、封印する方法ではなく、倒す方法なんだ。
 つまり碑文が劣化するよりも以前、何百年も前の時代には倒す方法がわかっていた。
 それで尚、封印するに至った理由があるはず。
 わからない。

 わからないなら仕方が無い。次の文を考えよう。
 ここから導き出せる答えなんて限られている。
 頭、心臓、同という言葉は他に使われていない。
 ……一つ考えはあるが、ゲームやマンガみたいな策だ。
 本当に効くか確証が無い。

「なに! それは真なのか!?」

 考えに耽っていると連合軍の連中が騒ぎ立てている。

「どうした!」
「霊亀の進軍で、まだ避難が終わっていない都市が近づいているのが目視できたとの事です!」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ