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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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勇者の碑文

「さて、霊亀に飛び乗ったのは良いが……」

 足場が定期的に揺れる。霊亀が前進を始めたようだ。
 ま、首はそこまで伸びないようだから背中にまで意識を集中することができないという所か。
 俺は辺りを確認する。
 俺達が飛び乗った所は丁度町のあった場所だったらしい。
 何か中華風な町並みだ。まあ、霊亀は崑崙山を背負っているという話でもあるからなぁ。

「フィーロ、連合軍がどこにいるか分かるか?」
「んー……多分あっち……かな?」

 町を抜けた山の奥の方をフィーロは指差す。
 ま、霊亀の後ろの方だから間違ってはいないだろう。

「とりあえず町の跡地を抜けて合流を図ろう」
「うん!」

 フィーロに乗って町を通り過ぎる。
 ……廃墟と化した町で無数の死体が転がっている。直接的な死因は霊亀の使い魔の攻撃だろう。
 これが全て……原因が他の勇者共か。
 アイツ等はどうしてこんな真似をしたのか……。
 腐敗臭が鼻を掠めて酔いはしないが気分が悪い。

「ごしゅじんさま、フィーロにちゃんと掴まっててね」
「ああ」

 フィーロはゴリラのような霊亀の使い魔や、雪男のような使い魔を蹴り飛ばしながら走っていく。
 道中、設置型の目玉みたいな使い魔も現れ、蝙蝠型の使い魔よりも高威力の光線を放ってくる。
 その全てを俺が耐えてフィーロが倒す。
 まだ町を突破し切れていない。

 ……死骸がずっと転がっているな。
 そう思っていると人影が見える。
 霊亀に乗り込んだ連合軍の連中かと確認しようとしたのだが……。
 亀の甲羅を背負った死骸が動き出していたのだった……。

「死して尚、体を操られている訳……か」

 ゾンビなんてゲームの世界でしか見たことが無かったが、実際は腐敗臭がきついな。
 俺が出会ったアンデットはスケルトン系ばかりだった。肉付きのと遭遇するのは珍しい。
 むしろ無いな……。
 子供のゾンビとかが出てきて、フィーロが蹴るのを躊躇っている。

「逃げるか?」

 あの、人間だろうと食べそうなフィーロもさすがに子供のゾンビを蹴るのに躊躇はするのか。

「……ううん。ごめんね」

 フィーロは一際力を込めて、ゾンビを蹴り飛ばした。
 霊亀に操られて虚ろに徘徊するよりも、肉片となって跡形も残らない方が、良いだろう。
 あくまでエゴでしかないのは自覚している。

「あの子……ちょっとメルちゃんに似てたの」

 本人は城に居るから、フィーロ自身の思い込みだ。
 俺はあのゾンビにメルティとの共通項を見出せなかった。

「なんでこの子はこんな事をするんだろうね?」

 フィーロが霊亀を指差して呟く。
 確かにそうだ。霊亀の目的が見えない。
 食べるわけでもなく、生き物を殺して回っている。
 まるで殺す事自体が目的の様な……。

「早くお姉ちゃん達の所にいかなきゃ」
「ああ……っと?」

 不意に寺らしき建物を見つけた。
 東の国の文化とは違うっぽい。良く言えば俺の世界の寺に似ている。
 こういう所にヒントとかあるんだよな。ゲーマーの心が疼くな。

「ちょっとあの建物に寄ってくれ」
「はーい」

 寺院によって中を見る。
 霊亀が歩いている所為で半壊状態だ。
 他の勇者共が破壊した像とか……ここにあるのかな?
 そう思いながら、寺院を調べたのだが……霊亀の絵が書かれた壁画しか見つからなかった。
 女王の話をもう少し聞いていた方が良かったな。
 余計な事をしたか。

「これは……!」

 壁画の隅に見慣れた文字を見つけた。
 日本語だ。

「何々……」

 もしも日本から召喚された・がこの文字を読んでいるのなら、覚え・い・欲しい。
 こ・化け物はどれだけ厳・な封印をしても終・の時に七・目・破・・るだろう。
 調べた結果、目的は・・・・・・・・・・・であり、世界の・・・だ。
 願わく・、意・的に封印を破らない事を祈る。
 犠牲者を出すのはもしかしたら世界の為ともなりえる。
 その代価に見合う見返りがあるのだから。
 だけど……傲慢・し・ない。終末・・にこの文字を・む者がいるのなら、世・より・人・の為に出来る限り・く倒し・くれ。
 ・の化・物を倒す方法は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 ・の八・勇・ ・・桂一より。

 ……掠れてあまり読み取れない。
 繋ぎ合わせれば内容は想像出来る。
 七つ目に封印が破られるだろう。という所か。
 青い砂時計の数字と合うな。というか封印数字がこの時に予測されていたのか?
 目的とか肝心な部分が読めないって嫌な具合に消失している。
 犠牲者を出すのが世界の為? 勇者が残したにしては意図が掴めないぞ。

 というか、アニメやマンガじゃないんだから必要な情報だけ抜けているとかどうよ。
 随分昔の物みたいだし、文句は言えないが釈然としない。
 ただわかった事と言えば、名前位か。
 苗字はわからないが、桂一という名前の勇者がいた様だな。

 霊亀の地震以外にも、元々古い物みたいだし、どういった人物なのかはわからない。
 俺やアイツ等みたいに異なる日本から来た可能性も高い。
 この壁画が作られたのがどれくらい前なのか不明だから、もしかしたら世界間で時間がバラバラなのかも。
 まあ錬の例があるから、時代を考えても意味は無いか。

 しかし、八? 何かを意図しているのかもしれないが、これだけ崩れていると読めない。
 うーむ……。

「ごしゅじんさま読めるの?」
「まあな」
「へー、この文字、何か変わってるね」
「確かにメルロマルクで使われている文字じゃないな」

 ちなみに国外だと文字や言語も変わるらしい。
 盾は翻訳機能持ちだからある程度はどうにか出来るけど文字はな……。

「他にめぼしいものは無いみたいだな。行くか」
「うん!」

 寺院を後にして俺達は山の方へ向った。

「こりゃあ……何処にラフタリア達が居るのかを見つけるのも一苦労だな」

 山に入った後、俺達は霊亀の後ろの方へ回りこむように進んでいた。
 上の方は中国っぽい山なのだけど、下は木々が生い茂っていたりして、連合軍の連中を見つけることが出来ずにいる。
 伝承では洞窟から体内に侵入するらしいから、連合軍の奴等も洞窟を探しているとは思うのだが。
 考えてみればあの町に入り口があるという可能性もあったのか。
 というか他の勇者共は何処に行ったんだ?
 体内で戦闘中とかじゃないよな。道に迷っているとか。
 既に三日目だぞ? いい加減仕留めろよ。

「フィーロ、分かるか?」
「えっとね。あっち」

 フィーロに任せて山道を進む。
 こういう時は野生の勘が頼りになる。

「お?」

 真新しい犠牲者を発見。見た感じ連合軍の兵士のようだ。
 転々と時々、兵士の死体が転がっている。

「後を辿っていくぞ!」
「はーい」

 走らせ続けてしばらくすると戦闘中の連合軍を見つけた。
 さすがにあれだけの数がいれば見つけられない事も無いか。
 先頭でラフタリアが霊亀の使い魔を仕留めている。その後方で動きの良い奴がラフタリアの後ろに付いて戦っている。
 リーシアは後方から援護しているな。
 ただ、群がる使い魔の猛攻に脱落するものも多いのだろう。

「よしフィーロ! 合流だ!」
「うん!」

 高速で走り出したフィーロがラフタリアと戦っている使い魔を蹴り飛ばす。

「ナオフミ様!」
「おう。やっと合流できた。状況はどうなっている?」
「洞窟を探している所です」
「まだ見つからないのか?」
「土地勘のある連合軍の兵士さんの話では霊亀が動いている所為で把握できていないそうです」
「ふむ……」

 使い魔との戦闘でさえも苦戦している連合軍の連中、コイツ等を心臓まで連れて行くのか……。
 無限に湧き出る霊亀の使い魔との戦闘を考えるとな……厳しい。
 そう考えていると別の部隊で動いていたらしき連合軍兵が駆け寄ってくる。

「目的の洞窟と思わしき場所を発見いたしました。おそらく、私共の地域では霊亀洞と呼ばれている場所です」

 そして指差したのは山の中腹だ。よーく目を凝らすと確かに洞窟が見える。

「それは良かった。俺が先行する。行くぞ!」
「了解!」
「皆の者! 盾の勇者様に続け!」
「「「おおー!」」」

 俺達は使い魔を倒しながら兵士が見つけた洞窟に侵入した。
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