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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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時間稼ぎ

「では、部隊が霊亀に乗り込み終わったら照明の魔法を打ち上げますのでイワタニ様も乗り込みください」
「分かった。じゃあ、作戦開始だ!」
「了解です。皆さん! 行きますよ!」
「はい」
「はーい!」
「頑張ります!」

 こうして俺とフィーロは霊亀に向けて再突撃した。
 その間にラフタリアとリーシア、連合軍の半分が霊亀の背後に回りこんで乗り込む事になった。

「ごしゅじんさまと二人でー」

 フィーロが機嫌よく俺を乗せて霊亀に向って走り出す。
 緊張感の無い奴だ。
 魔力水と……薬の数を確認して……霊亀の目の前に俺達は立つ。

「――――――――――――――――――――!」

 霊亀が俺達を発見すると同時に使い魔が群がってくる。
 そして本体の踏み付けが俺達に向って来た。

「ツヴァイト・オーラ! 流星盾!」

 俺は声を上げながら援護魔法を唱え、流星盾を展開させる。
 地響きを立てて霊亀の足が俺の上に降り注ぐ。
 馬鹿正直に受けていられるか!
 そのまま滑るように流星盾が壊れる前に霊亀の足から逃れる。
 地面に地割れが起こる。
 俺は砂煙が上がっている中、霊亀が足を上げる前にその巨大な足を全身を使って掴んだ。

「――――――――――!?」

 霊亀の奴、思い通りに足が上がらなくて驚愕の声を上げているようだ。
 ざまあないな。
 ぐ……ぐぐ……。
 ただ、少しでも隙を見せようとなら霊亀の足を上げようとする力によって呆気なく空中に放り出されそうだ。
 幸いなのは俺達がいる前足の先まで首が伸びない所か。そっちへ引っ張ろうともしてくる。

「――――――――――――――――――――!」

 使い魔が俺達に向って群がる。
 今だ!
 上空に多重の魔法陣が展開し、火の雨が降り注ぐ。
 後方から使い魔を一掃する援護魔法が降り注ぎ、その合間を縫って。

「たああ!」

 フィーロが使い魔を蹴り飛ばし、俺を守る。

「どれくらい待つの?」
「さ、あな」

 ぐぐ……。
 ヤバイな、少しでも気を抜くと霊亀の足を止めていられない。
 霊亀は持ち上がらない足に戸惑いながらこれでもかと暴れだす。
 ただ、意識が俺の方にだけ集中していて、後ろの方はおざなりだな。

「ごしゅじんさま……あれ」

 足の合間から霊亀の後ろを見る。まあ豆粒みたいな大きさしか見えないけど。
 背後に周り込んだ連合軍とラフタリア達が霊亀の甲羅の淵に上る為の梯子やロープを掛ける。
 他にも飛竜に乗った兵士も順調に霊亀に乗り込んで、手助けしているようだ。
 よし……。
 バチバチと霊亀を通じて振動が伝わってくる。
 これは……。
 霊亀が俺達に向けてあの必殺技を放とうとしてくる。

「フィーロ!」
「うん!」

 フィーロは俺の背後に隠れる。
 霊亀が口を開いて自らの足もろとも消し飛ばそうとあの強烈な雷が放たれる!
 咄嗟にラースシールドに変化させる。
 心の奥底にボッと怒りが出現した。

「ごしゅじんさま」

 フィーロの手足が黒い炎に包まれる。
 まだ……俺は耐えられる。ラフタリアやフィーロが力を貸してくれているのだから。
 眩しいほどの閃光と、爆音が一拍遅れてやってきた。
 盾を前に出し、ラースシールドで身を守る。
 ……前回のような痛みがない。
 さすがはラースシールドか。無傷だ。
 そう思って、霊亀の攻撃を待っていると、視界の隅にタイムカウンターが現れているのに気が付いた。

 4:37

 一秒ごとに減っていくこの数字……。
 なんだ?
 その数字が4:30を下回った時に霊亀の攻撃は止む。
 よし、耐え切ったぞ。と其処で気づいた。何か体に力が入らない。

「ごしゅじんさま?」

 何が起こったんだ?
 ステータスを確認した。
 ……SPが0になっている!?
 なんだ? どうしてSPが0に?
 まさか霊亀のあの攻撃、SPドレインも掛かっているのか?
 ソウルイーターシールドに変化させ、群がる使い魔からカウンターでSPを奪い取って回復させる。

 流星盾を唱えなおす。
 ラースシールドに変化させた時にあった数字が消えている……。
 嫌な予感がする。
 あの数字、もしかしたら俺、もしくはフィーロがラースシールドに支配されない時間を数値化しているのではないか?
 0になったら何か嫌なことが起こりそうだ。
 霊亀が黒焦げになった足を再生させて俺たちを踏みつける。

「またか!」

 俺は同じように霊亀の足を掴んで止める。ラースシールドに変えると近接攻撃でダークカースバーニングSが作動してフィーロを巻き込んでしまう。ギリギリまで変えない。
 すると霊亀は待っていたとでも言うかのようにあの電撃を吐こうとする。
 幾らなんでも早すぎる!?

 嫌な汗が頬を伝う。
 SPドレインの効果があるとして……その回復したSPで電撃を吐く、そして俺から奪ったSPでまた吐く。
 ラースシールドだと無傷だがSPが吸われる。ソウルイーターシールドだと大ダメージを受けるがドレイン無効のお陰でSPを奪われず、電撃を吐くのに時間が掛かる。
 こんな所か?

「チッ! シールドプリズン!」

 霊亀の頭目掛けて檻を召喚する。
 しかし、檻は出現すると同時に砕けた。
 さすがにあそこまで大きな物は囲めないか。
 こりゃあアイアンメイデンを撃つ事は出来なさそうだな。

 次の電撃をラースシールドに変えてやり過ごす。
 だが、代償にSPを全部持っていかれた!
 ソウルイーターシールドに戻してカウンターを……。
 そこで辺りを見ると使い魔が、集まりきらない。

「ごしゅじんさま大丈夫?」
「ぐ……」

 フィーロに乗って逃げ切るか?
 あの攻撃は洒落にならない威力がある。下手にぶっ放して連合軍の部隊に当たったら大打撃だ。
 辛うじて回復したSPで流星盾を展開させて構える。

「フィーロ、痛いかもしれないが堪えろよ」
「うん!」

 フィーロが俺を支えて電撃を受け止める。

「ぐう……」

 約30秒の電撃が俺を突き抜ける。
 俺が前に居た元の世界じゃ受けたことの無い痛みだよな。全身を焼けるような痛みと共に感電するようなこの感覚は。
 ……意識が飛びかけた。
 回復魔法を唱えると同時に後方部隊から援護魔法が発動する。
 傷を治したが、負傷から回復した時に失われた体力は疲労として蓄積する。

「フィーロも行くね」
「任せた」

 頭をフィーロに吹き飛ばさせればそれだけ時間が稼げる。
 必殺技の構えを取ったフィーロが狙いを定めて突撃する。

「すぱいらる・すとらいく!」

 フィーロの突撃が霊亀の咽喉元に到着し、貫通する。
 だが、ラフタリアが居ない所為か、切断とまでは行かない。
 ぶちぶちと嫌な音がして霊亀の傷がみるみると修復していく。

「ふへぇ……」

 着地すると同時の俺の結界の中に逃げ込むフィーロは疲れたように肩を落とす。
 霊亀はまたも電撃を吐こうと口を開く。
 な……ダメージによって次を撃つ為の時間が短くなるのか!?

「フィーロ、次にコイツが踏みつけてきたら離れろ」
「うん!」

 魔力を回復する時間が用意できるからか、フィーロは羽毛を逆立たせて意識を集中させている。
 そういえば霊亀の電撃の時間とフィーロが魔力を集める時間は同じだ。
 霊亀が電撃を吐き、俺はラースシールドに変えてやり過ごす。
 そして霊亀は黒焦げになった足を再生させて、俺を踏みつけようとした。

「今だ!」
「はーい!」

 フィーロが高速で離脱し、俺は霊亀の踏み付けをラースシールドで受け止めて顔面に向けて駆け出す。
 ダークカースバーニングSが作動して黒炎が俺を中心に巻き起こる。
 霊亀の足と顔面を呪いの炎は焼き尽くした。

「どうだ!」

 ダークカースバーニングSの効果は治療遅延の呪い。あの驚異的な再生力を抑えることができるかもしれない。
 そうすれば時間稼ぎは簡単に出来る。
 だが……墨と化した足と顔の一部は何事も無かったかのように再生した。

「――――――――――!」

 な、なんて生命力だよ。

「ごしゅじんさま」
「ああ、分かっている」  

 ラースシールドからソウルイーターシールドに変えて時間を節約する。
 こりゃあ……長期戦になるぞ。

 またも電撃を耐え切った時、俺はフィーロに伝言を指示する。

「フィーロ、タイミングを計って女王に進行状況を聞いてきてくれ、かなり厳しい。出来る限り早くさせろとな」
「それだとごしゅじんさまが……」

 今にも泣きそうな声を出してフィーロが俺に答える。

「大丈夫だ……」
「……うん」

 霊亀の奴、SPを奪えなかった"からか"悔しそう"な"声を出していた。
 次の発射までは耐え切れるだろう。
 フィーロは敵を蹴り飛ばし。

「はいくいっく!」

 高速で走り去って女王の下へ行く。
 使い魔から奪ったSPで流星盾を張って、霊亀の足を押さえつけるのを繰り返す。
 電撃によって更に悪くなった足場の所為できついな。地響きで生じた地割れとクレーター跡だ。
 思った以上に厳しい……。
 ガツンガツンと霊亀の使い魔が流星盾で作り出された結界を攻撃している。
 ……もしも他の勇者共の強化方法を学んでいなかったら、死んでいたんじゃないか?
 ま、その勇者共の所為でこの状況になっている訳だけど。

『力の根源たるフィーロが命ずる。ことわりを今一度読み解き、かの者を激しき真空の竜巻で吹き飛ばせ』
「ツヴァイト・トルネイド!」

 俺に群がる使い魔を竜巻が吹き飛ばす。

「ただいまー!」
「ど、どうだった?」
「急がせているけどもう少し掛かるって」
「そうか……」
「あ、後、スタミナを回復させる薬だって」

 フィーロは行く時に持っていなかった袋から薬を出して俺に渡す。
 飴のような薬だった。
 口に含むとミントのような味がした。少しだけ力が回復するような気がした。

「後はごしゅじんさま用のとっておきだって」
「何?」

 ……ルコルの実だ。

「はいはい」

 それも口に含む。
 ……飴よりも力が戻ってきたような気がする。ステータス魔法で確認するとSPと魔力が回復した。
 ルコルの実には回復の効果があるのか。覚えておこう。
 こうして霊亀の足止めという長い戦いが幕を開けた。
 この攻防はもう二度とやりたくないと思う。
 時にラースシールドで耐え、時にソウルイーターシールドで耐えるを繰り返した。
 蛮族の鎧が所々ボロボロになっている。
 自己修復が追いつかなくなってきている。
 きついな。

「はぁ……はぁ……」

 ラースシールドのタイムカウンターが0:30を下回った。この頃になるとフィーロも頭を掻き毟るように何かを堪えている。
 俺も何か心を支配する黒い感情に頭がおかしくなってくる。

「ご、ごしゅじんさま……フィーロ、もう……」

 ぶつけ所のない怒りを逃がそうとするフィーロと俺。限界が近いな。
 もうラースシールドに変えていられない。

「分かってる。もう変えない! 耐えるぞ!」
「うん」

 霊亀の電撃をソウルイーターシールドで耐えた。
 全身を焼く感覚は何度目か。これだけでもうウンザリしてくる。逃げるか?
 そう考え出した頃になってやっと照明が撃ちあがった。

「よし! 行くぞ!」
「やった! フィーロ頑張る!」

 霊亀が足を再生させ、踏みつけようとする瞬間に俺はフィーロの背に乗り霊亀の股下を高速で通過する。
 ちっ! 霊亀の奴、全身を使って俺達を押しつぶそうとする。
 霊亀の腹がまるで天井のごとく一秒ごとにこちらに迫ってきた。


「はいくいっく!」

 フィーロの高速移動で途中方向転換し、背後に回りきる前に脱出、地震を跳躍でかわして着地すると同時に方向転換。
 霊亀の甲羅に大きく跳躍して飛び乗ったのだった。
+注意+
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