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村上春樹な文体を真似してヤクザ小説を書いてみた。

作者: 峯岸

 



 麻薬をやりながらゲームをする。それが憩いの時間だとは人に言うことはできない。けれども今日は麻薬の良さを人に惜しげもなく語ってる。マリファナやスピードの良さをあれこれと語るうちに自身が一般人になりきっている状況を忘れている事に気づいてしまう。できれば気づく前に悔い改めたかった…


 いずれ自身が犯罪者であるのは仲間にバレてしまうことだった。悲観的に受け取とらなくていい。あくまで自分はヤクザ者であるのだから、価値観が一般人と合うことはないのだ。仲間意識を求めて馴れ合うのは常識に合わないものだろう。所詮はゲームなのだから、ゲーム仲間が一人減ったくらいで、悲しむ必要なんてない。仲間がいなければ、またイチから作ればいい。それがネットの利点だし、匿名なのだから気兼ねする必要なんてない。ネット世界は簡単に出会いの行動ができるのから。

 

  オンライン型のMMORPGにはまったのは結構前のことだ。五感全てを使って電脳世界に入り込んで遊ぶゲーム、巷では「ゲームとリアルの世界が区別がつかないゲーム」とか「仮想現実ゲーム」「VRゲーム、バーチャルリアリティ」と評される。ゲーム機械が脳に電気信号を直接送ることで、あらゆる幻をプレイヤーに魅せる。恐怖、快楽、記憶も自在に機械が操る。ゲームが与える偽の体験記憶が、プレイヤーに幸福をもたらす。虚構の中で遊ぶこと、虚構の中でも幸せになれること、VRゲームの重要性について、この時代の人々は忘れている


  このVRゲームの初期構造は、『人体体験システム』

  このシステムは元々、実生活が不便な障害者の為に開発されたシステムだ。手の無い者、足の無い者、目の見えない者、障害者たちにとって多くの健常者が体験している行為は諦めないといけない。だが『人体体験システム』さえあれば脳の世界に人間らしい自由を求められる。


  VRゲームの本来の役割として人体体験システムが根っこある、私を含めた多くの現代人にとって、そんなバックストーリーは、どうでもいいに違いない。重要なのは自身が快楽を得られるかどうかで、VRゲームを必要とするかどうかの問題でしかない。私もその他大勢も、細かい事は考えずに電気信号に身を任せる日々に価値を見出している。多くの者が仕事をしない時間にバーチャルな世界に入り込み、現実を捨てる。

  インドア派もアウトドア派も余暇はVRゲームを楽しむ。多くの人が麻薬に依存するかの様にゲームに依存する。


  現実世界では「麻薬に毒されたヤクザ」、それが私の正体である。麻薬を売りつつ組織の為に生きる。組のシノギである麻薬に手を出している私は、麻薬をやりながらバーチャルゲームの世界に入り込む。脳神経に作用するゲームだから、麻薬で脳が毒されてると、正常な思考が働かなくなる。ネットで知り合ったゲーム友達の前で、私は醜態を晒した。ある意味、酒の席で裸になる様な愚かな行為である。つまり私はネット友達の一般人に自身がヤクザであることを語り、縁を切られた。自己責任だと言ってしまえばそれまでだが、醜態を晒したのは不本意であるから、私はウジウジとネットの友人を失った件を引きずっていた。全ては麻薬が原因であるし、麻薬さえ使わなければ良いというだけのはなしだ


 麻薬は良くない。頭ではわかってる。しかし、止められないのだ。






 

「なあ、おまん、VRゲームやっとる言うとったなぁ」

  突然、組長の接待ゴルフに呼び出しされた私、昨日の夜、覚醒剤を使って疲れていたから眠い。

「おまん、うちで扱っとる麻薬、VR使って売れるか?」

  組長が言っているのはネットを使って麻薬を販売できるか、という意味だろう。

「勿論、できますが…」

 やろうと思えばできる。不可能ではない。そんな意味で答えたつもりだった。

「よし、じゃあ、今から組の1つをお前にやるから、好きにやってみろ!」

  組長は本気で言っている。暴力団の組長が、やれというなら、断る権利があるはずも無い。二つ返事で了承したのは、止むえないとして、失敗したら止むえないなんていう言い訳は通用しない。成功しないならまだしも、逮捕される様な事態になれば口封じに殺されるだろう。一旦出来ると言ってしまったから、少なからずの成果を出さいといけない。


  できない言い訳を考えるべきだったかも知れないが、出世する野心もあったから断わる理由はなかった。


 組長から与えられた組は平井組平井一家、構成員30人程度の小規模暴力団である。小規模故に世間にはあまり知られてない。検索しても多くの情報は出てこない。

  『世間で目立ってないからこそ、悪さをしても自由に動き回れる』

  麻薬の密売拠点として平井組平井一家は影なから親分である山口組を支えている。VR世界で麻薬を売る前に、まずは組員達の情報を頭にインプットしなければならない。


  直属の部下となるのがマサシ。マサシは平井組の古参であり、平井組の内情を一番知る人物だ。部下だからいって、下に見てはいけない。30人のヤクザを纏めあげているのだから、暴力に精通している。ましてや違法なビジネスに関わるのであるから、親組からしてみれば平井組はトカゲの尻尾である。いつでも切れる準備がある。それだけに、平井組は本家山口組に対して不信感が強い。山口組から派遣された私の事なんて内心では親分だと思ってないだろう。もし、私がヘマをすれば多くの恨みを買う筈で、致命的な失敗をすれば恨みを買ってしまい殺されかねない。


 注意するべきはマサシだけではない。平井組の元党首である原誠司だ。原は組を引退して道楽を追求して、売れないお笑い芸人になっている。ヤクザ仲間を引き連れてトリオを結成している。


 原は、平井組の活動に口を出せる立場ある。私とは兄弟盃を交わしているから、口を出さない筈がない。原誠司はヤクザの中でも特に規律と上下関係に厳しい。原誠司の機嫌を損ねてしまえば、このビジネスから降ろさせて貰えるだろうが……






 原誠司=原の兄貴=平井組の元頭=サラリーマンでいうと引退した社長。平井組には他に部長や課長なる幹部の地位の人がいたが、原の兄貴は二人を引き連れ吉本〇業に入所した。



「おう! よく来た!」

 原誠司は大きな声で寺井を迎えた

「組の細い事はマサシに聞けばいいとして」



 マサシは本家の会合で酒の席で何回か会ったことあるだけで、殆ど喋った記憶がない。眼の下に大きなクマあり、薬物中毒になってる恐れがある。マサシはこれから平井組の実質ナンバー2になるわけで、兵隊組織の成り上がりの猛者だろうから、性格もキレやすいはずで、扱いは慎重にしないといけない。


 マサシの本名は根岸あきひと、というが、どうせ偽名だろう。偽名を使うのは仕事柄仕方ないことであるが、仲間内ではこの名前では呼びあわない。もし、どこかの面倒な敵対ヤクザに呼びあってる名前が漏れると、身元がバレかねない。警察にも手掛かりを与えかねない。特に平井組は現場主義だから名前ひとつ、あだ名ですら、徹底的にルールを守っているはずで……






 マサシは言った

「大作さん、宜しくお願いします!」


「おいマサシ! 何か勘違いしてないか?」

 原の兄貴はドスの効いた声でマサシに言った


  マサシは寺井(私)の部下となったのである。しかも私は頭だ。カシラと呼ぶべき自然な決まり事 しかも名簿名(偽名でない名前)で呼んでしまった。





「おいマサシ! 何か勘違いしてないか?」

 原の兄貴はドスの効いた声でマサシに言った


 マサシは、はっとした。失言に気づいて

 訂正しようとするものの

 とき既に遅く、原の兄貴はマサシを白けた目で見つめていた。


 マサシは幹部たちの前でドジをして冷や汗をかいている。マサシは寺井に土下座し、


「言い違えました。すいませんでした。カシラ!」


 そんな表面的な言葉で上下関係に五月蝿い原の兄貴は納得しないだろう。ヤクザの世界は土下座は御法度だ。誠意を示す態度なら指の一本は差し出せる。土下座で済まそうとするのは謝罪の為に何も捧げる物がない、と言っているものである。何より土下座は男らしいない、。サラリーマンでもできるのだからヤクザは土下座を嫌う。


 しかし、土下座は

 滅多に見れるものでもないから、何故土下座がいけないのか理解できてないヤクザは多い。

 マサシはきっと、これまでの人生で土下座を強要してきた側で、それはある意味、失敗を犯した経験がないエリートで、もしかしたら土下座するのは初めての経験なのかもしれない。


 元来優秀であるならこその、些細な失敗であるなら、これくらい多めに大目に見ても……


 原の兄貴はタバコに火を着けて一服しはじめた。



 部屋が静まりかえる


 まさか

 こんな些細な失敗で根性焼きをするのか(※根性焼きとはタバコの火を顔とか体にに擦り付けること)


 やはり平井組。トカゲの尻尾として最前線の兵隊だ。部下の支配は徹底的してる。


 原の兄貴はタバコの火を持ち変えマサシに近づいて





「まあ、今回のは多めにみてやってくれんか?」

 原の兄貴は呟いた


「新しいシノギに挑戦できる!言うて、マサシも、舞い上がっとったのや、なあマサシ」


 マサシは土下座したまま頷いた。


 原の兄貴を立てる為にも許さなければいけない。寺井としては許すもなにも最初から怒ってはいない。原の兄貴が、ピリピリとした敵意の様な空気を感じ取ったから、協調して怒ってる様な振り従っただけであった。


「もういいから。土下座はみっともないから辞めてくれ」

 寺井の言葉にゆっくりと立ち上がるマサシは、もう一度謝罪し、お辞儀をした。

「すみませんでした!」

 まるで自衛隊隊員がやるような迫力あるお辞儀をしたマサシ、どんな時でもヤクザはこれが正解である。






 それにしてもふに落ない。ここは兵隊の集まりで土下座はありえない、ましてやマサシは平井組のナンバー2になる男だ。上下関係に誰よりも厳しい原の兄貴が、しっかり教育してても良さそうに思うのだが……




「なんか気づかんか?」

 原の兄貴が寺井を向いて呟いた。


「土下座はマサシにとっては挨拶なんや」



「マサシは土下座しながら、自慢しとんのや」



「手をよう見てみい」



 マサシの手をみると両方共義手だった。一見すると義手に見えないくらい精巧にできた義手だ


 原の兄貴はマサシの手を取ると、寺井にマサシのこれまでの武勇を語って聞かせた。武勇伝の中には失敗したものも多々あり、たとえば、敵対ヤクザにスパイとして潜り込みヘマをした話。縄張り争いでボコボコにされて拉致監禁された話。土下座で失敗して指を切断された話。美人局で失敗して泣きながら、おもらしした話


 マサシは、あらゆる修羅場をくぐり抜けてきた際に、失敗を沢山した。ヤクザとして誠意を示す為の指詰め儀式で、指を全て使いきってしまった。


 マサシが土下座して手を前に出すのは、相手にそれが見えるだろうと思ってのことで。そしたら驚くだろう。相手がそれに気付いたら自慢してやろう。という思いから、土下座をしてしまうらしい。


 マサシが個人的に自慢したいが為に安易に土下座をするようになった経緯もあって、平井組では土下座に見慣れて慣れてしまい、土下座自体をタブー視する文化はなくなったのだそう。マサシにとっては土下座は挨拶のようなものであり、謝罪の意が一番込められていたのは、自衛隊式の礼の方だった。


 それにしてもマサシ

 初日から頭の寺井より目立ってる。部下の癖して、大将より目立つとか空気読んでない。 原の兄貴にも可愛がられまくってるから、寺井の影が薄い


 頭として舐められてるみたいで、不安になった寺井は、マサシの自衛隊式挨拶を真似た


「今日から俺の事は教官と呼べ!」

 かなり高圧的に言った寺井。




 原「カシラとしての笑いのセンスないな」


原誠司は平井組の麻薬の密売ルールについて語り出した。


  平井組が経営しているパチンコ店、そこが密売の拠点になっている。店内は煙草の匂いがこびりつき、麻薬犬の対策は十分らしい。麻薬は月に一度、パチンコ代のフレーム内部に隠して、引越しトラックにて持ち込まれる。ネットで注文を受けて、依頼人の住所宛に封筒にて配送する。


 原誠司と平井組を含めてネット販売の知識は詳しい。ネットはアクセス記録がサービス会社に必ず残り、リアルで販売するのと同じくらい証拠が残る。


 VR世界での、麻薬シノギをするにあたり、本家山口組は密売交渉の代理人としてアフリカ人を起用した。現地にスタッフを派遣していて、アフリカ人に犯罪教育をしている。 アフリカは途上国として住所の無い者が多い。ネットで犯罪行為をさせるにはうってつけであり、警察の捜査の手が及ぶ前に、退職金を払い地方に隠居してもう。現地人にとっては一年働けば一生食うに困らない稼ぎが生まれる訳であり、仕事に飛びついてくる。


  アフリカ人でも日本人相手にビジネスが出来るのがこのVR世界の凄いところかもしれない。ゲーム内では脳の言語野、感情野で直接対話できるから、日本語を知らなくても日本人相手に麻薬の取引を持ちかけられる。


  私が任された仕事はアフリカ人と現地スタッフに対する教育である。密売するに当たって様々な細いルールを共有し合う。私がこの仕事に任命されたのは、たまたま組織の中で一番、ゲームと麻薬に溺れていたからだ。堕落していただけなのに、小規模とはいえ組の頭になれるのだから、世の中何が起こるか分らない。


「社員教育」言葉を変えると私のしている仕事はそういことになるのだろう。教育と言っても、全てVRを使ったオンラインで行われる。体は日本のとあるパチンコ店にある。

 

  私の今日の仕事はひと通り終わり、自宅への帰路する

  帰り道、特別トラブルもなく無事に家への前に着いたが

「あのう!」


  声のする方向に振り返るが、しかし、誰もいない。

  「こっちこっち」

 足元から声がして向くなり、子供がいた。こちらに向かっては話しかけていた。

「あたしね、しってるんだよ? おじさんがVRでなにやってるか!」

 







「お嬢ちゃん、もしかして原さんとこの子?」

  平井組の元党首、原誠司には子供がいるという話を聞いたことがある。ヤクザが所帯を持ったら家族に危険があるからと、原誠司は一部の幹部にしか家族の話してない。話したと言っても酒の席でうっかり、という程度であり……

 






「お嬢ちゃん、もしかして原さんとこの子?」


「だれそれ? はらってなーに?」








「お嬢ちゃん、良かったら、知ってること教えてくれないかな?」


「どうしよかな~」


「おじさんち、すぐそこ、だから、お菓子食べながら、お話しようよ」


「ヤった! お菓子だ、わーい!」



 ~自宅にて~


 自宅に幼女を招き入れ、玄関の鍵をかけて、ソファーに座らせた。

 お菓子は会合で貰った饅頭くらいしかない。お茶を入れる為に湯を沸かす


「で? どんな話をきいたのかな?」


 一応、原誠司に電話をかけてみる。原誠司が偽名で家族を作ってる可能性もあり、原の姓を知らないだけかもしれない。もし原誠司とは関係なく、ただの一般人だとしたら、口を封じなければならないだろう。




「で? お嬢ちゃんはVRの何を知ってるのかな?」





「お嬢ちゃんではないです。ウチはもう小学6年生です」





「そうだね。おじさん失礼だったね。じゃあ、何て呼べばいいのかな? おじさんは、おじさんで良いとしても、君には名前があるんだよね?」



「名前は……」

 声が小さくて聞き取れない。


「ごめんね、もう一回名前いいかい?」


「えー」

 少女は勿体無いぶる様にしている。


「そんなこと言わないでさ、お菓子はあるからさ」


「わーい!」






「お菓子は饅頭しかないのだけど」


「わーいー!饅頭すきすき」





「で、君のおなまえは?」


 少女はしばらく俯いている。まるでこれから答える名前を考えてい様だ。


「メナード!私の名前はメナード!」



 最初から騙すつもりなら、お互い様である。名前か嘘だろうと、この際どうでもいい。この少女に何をどこまで見られたのか、その内容次第で、この先のやるべき仕事が増えるのだから。



 頭の中で少女の殺害の、段取りを考えていると、原誠司から電話がくる


「もしもし、原だ。なにかあったか?」


「原さん、今うちに小学生の子供が訪ねてきてて、」


「小学生のこども?」


「はい、原さん前に子供いるって言ってたじゃあ、ないですか。」


「ああ、いるぜ、高校生の息子と大学生の娘が」








 いよいよ、殺さなければならない。

 いまだかつて子供は殺した事はない。ましては暴力さえも。

 寺井は軽く目眩がした。頭が真っ白になった。

 電話の最中、今の自分が何を話してるのかわからない。


 できれば身内で子供であって欲しかった。

 そうではあれば、殺さずに口を封じる選択肢もあった。このままこの少女を自宅に返す訳にはいかない。


(自宅に返す訳にはいかない?)


  この少女は寺井の自宅前にいた。寺井の自宅の住所を元々知っていて、「やってきた」のだとしたら


 寺井の自宅を知っていて、VRを寺井がやってると知っている人は……

 非通知の電話が鳴る。出ると鼻息が聞こえてくる。




「ぜえ、ぜえ、はあ、はあ、はあはあ! おい!、ウチの子見んかったか!寺井!」


 声の主は本家党首の声だった。


「そっちにウチの子邪魔しとらんか? アイツほんまに勝手に出歩くなって言ってんのに!!」


 組長に娘はない。孫が1人いる


「寺井、ちょっとナギに電話代わってくれ」

 携帯をナギに貸して、数分の後、組長は言った。


「寺井、悪いがしばらくナギを預かってくれんか?」


「どういうことです?」


「実は嫁さん、ナギの母親の事だが、病気をしていてな、かなり精神が参ってしまっている。ナギがいると八つ当たりしかねないから、預かってくれんか?」


「こちらにはセキュリティの問題もありますし、使用人も居ません、ナギお嬢様を預かるのは不安がありますが…」


 寺井は正直預かりたくない。万が一事故でも起こして怪我でもさせてしまったら、と思うと仕事の足も引っ張りかねない。


「まあ、寺井は強いから、頑張ればなんとかなるだろ? それにナギはVR友達を探しててな。組の皆はVRやっとる、言うたら組員の名簿さがして、勝手に家を飛び出すくらいだから。ワガママ言って帰ろうとせんと思うし、一応、人前では偽名を使うように言い聞かせとるけど裏の仕事を知っている訳ではないから…」


 要するに会長は、この機会に乗じてナギと組員たちとの親睦を強めておきたいらしい。将来、ナギが跡取りとなった場合に備えて今から、ヤクザ者たちに慣れさておきたい。今はまだ麻薬のビジネスのことは教えずに、仲間意識を育ませておく、将来的に違法ビジネスへの罪悪感を植え付けさせたい。

  子供を犯罪に利用するいかにもヤクザな考え方である。所詮はトカゲの尻尾。将来は檻の中かも知れない。

  将来なんて今の寺井にとっては関係ない。ただ、殺人という面倒な仕事はしなくて良くなった代わりに、子供のお守りという面倒な仕事が増えただけである。


 小便臭いガキ。

 寺井には小学生と答えたナギだったが、子供だと思われて舐めらたくないからと、ナギは嘘をついた。本当は園児であり、面倒な年齢だ。


「幼稚園? それってなに??」


 ナギは世間と隔絶させて育てたい。ヤクザ色に洗脳したい教育方針なのだろう。学のない状態に追い込めば、あわよくばヤクザを居場所にさせる事ができる。寺井自身もそれは異常な教育方針だと考えたものの、だからといって寺井に正義を貫けるわけがない。あくまで寺井にはヤクザな組織の歯車の1つ、でしかないのだから…





 2

「てらい! ゲームしよ!」



 小便くさいガキとゲームをすることになった寺井。ゲーム中は睡眠状態になってるから、動き回られる事もない。VRゲームでなら仕事をしながら遊ぶ振りもできるから、できるだけナギのゲーム欲に付き合う事にする。

  しかし、常に相手をしている訳にもいかなくて


「すまんマサシ、事務所(パチンコ店)の皆でこの子の面倒を観れるかな」


 マサシは寺井が来る前は、平井組での実質ナンバーワンな存在であり、平井組を知り尽くしている。どこにどんな危ない物(拳銃)等があるのかも知り尽くしている。


 幼児を麻薬売買の中枢につれてきた寺井。麻薬が置いてあるとはいえ、見た目は小麦粉であり、VRが置いてある部屋は別にある。その部屋だけ使って麻薬な部屋は鍵をかければ大丈夫だと寺井は考えていた。


「会長のお嬢様でしたか! ではこちらにはどうぞ!」

 マサシは子供が手馴れているのか、嫌な顔1つせずナギを仕事を場(VRルーム)に連れてき、ナギをおとなくさせた。


「え? 子供慣れしてる理由ですか?」

 マサシには昔、惚れた女が保育士をしていて、付き合う為にいろいろと子供好きをアピールしたのだそう。幼稚園に押しかけて子供面倒観たりしていた。、いろいろとあって上手くはいかなかったが、彼女に良く思われたかった為に、子供をあやすのは得意になったのだという。


「オジサンは昔、ゲーム内の大会で上位20に入った事あんだよ〜」

 マサシがVRゲームにハマっていたという話は初めて聞いた。


「かしら! 宜しければ対戦しましょうか?」

 対戦とはゲーム内でやる格闘技みたいなものだ。ゲームだから演出は派手で魔法で炎を飛ばしてみたり、テレポートで隕石を相手に頭上で落としてみたり


 寺井は片付けないといけない仕事があった。アフリカの現地スタッフとの打ち合わせ魔法の作用を使って、いかに麻薬の密売交渉を円滑にすすめるか、その方法をスタッフらに教えないといけない。



 ログイン中、

 現地スタッフとオンラインで会話中、一通のメールが届いた。

 メールの内容はゲーム内で布教活動している団体からの警告文である。不特定多数への一斉メール行為は禁止されているから、団体員とは過去に、どこかですれ違ったのかもしれない。

 団体から送られてきたメールはこれが初めてではない。過去にも同じ内容を受信したことが度々あった。



 ーーーーーーーーーーーー

 宛先 gmail@yahoo.co.jp

 メール本文 件名

 《ゲームプレイヤーの参加者様へ》


 本文

 魔法のマントを狙ってのプレイヤーキラーが現れてるので気を付けてください。魔法のマントは数に限りがあるアイテムで1000万円もの価値があります。魔法マントは初期にゲームを開始したプレイヤーに配られたもので、プレイヤーの数%しか魔法マントを所有していません。魔法マント探しにプレイヤーたちは熾烈な争いをしている。。争いの果てにプレイヤーを殺して魔法マントを奪う者も現れた。危険なプレイヤーはマントを奪うと、被害者から報復されるのを恐れて現実世界の本体を口封じに殺したりする。犯人は殺し屋を雇ったり証拠隠滅が得意で、たとえばヤクザな組織がビジネス協力してい可能性があります。心が当たりがあるプレイヤーや是非とも告発運動への協力を願います。



 ーーーーーーーー

 噂だけであり、現実に魔法マントの盗難事件や殺害事件が起きた等話は聞いた事がない。

 もし、事実であれば麻薬に変わる次のビジネスとして平井組で採用されかねない。これ以上面倒な仕事が増えても困る寺井だった。


 面倒といえば、キャバクラ嬢の存在だ。これまで平井組は麻薬密売にてキャバ嬢を利用していた。キャバ嬢というのは、麻薬の売人として、うってつけの職業だ。カネに余裕のある客を相手にしているから、覚醒剤も売りやすい。

 たとえばキャバ嬢がホストクラブにハマって店に借金して返済できなくなったら、その借金を肩代わりする代わり、麻薬の密売を手伝ってもらう。キャバ自身が覚醒剤を依存しているなら、客として、売人として利用できる。寺井はこれまで1人の嬢を売人として教育していた。VR世界に密売の販路を求められるかどうかの実験材料として、その嬢を利用していた。その嬢は寺井と同じで麻薬中毒者で、返済できるカネを麻薬に注ぎ込んでいた。借金返済は、まだまだ先だろう、しばらく縁は切れない。嬢と密売の打ち合わせのスケジュールを入れた。





 《キャバ嬢池内の視点 回想 》

 寺井とVR上での打ち合わせが終わると、池内はいつも思う


「どうしてこんなことになったのか」


 警察が囮捜査してて、お客さんの中にもし警察が紛れ込んでたら、私は捕まるしかないなんて……


「君が捕まって吐いたら、組の命も終わったも同然だ。だから、捕まる前に必ず奪還する」

 寺井は断言したけれど

 私をどう奪還してくれるのかさっぱりわからなかったから、聞いてみたら


「24時間GPSで監視してあるから、もし警察署に君がいたら、マシンガンで助けにいく」


 本当かな? むしろ、捕まりそうになったら、遠方から狙撃して私のこと口封じするんじゃないの?


 どっちにしても、ヤクザの言いなりになるしかない。それに私だって麻薬やり続けたいし……


 私が麻薬に手を出したのはずっと昔、高校生の頃だ。その頃からずっと依存してて、気持ちいいけど、稼いだお金が泡みたいに麻薬で消えてて、それが虚しくて、


 そんな日々に、突如として、VRゲームが発売されて、凄く面白くて、つい覚醒剤の事なんて忘れてしまう日々で、貯金も貯まるようになって、職場での恋愛もうまくいってて、

 でも、家に隠して忘れたままになってた覚醒剤が彼にバレて。彼は私を通報なんてしなかったけど、彼はうっかり家族に私のこと話したみたいで……

 家族の方から通報されて、檻の中に入って



 彼が家族に相談したくなる気持ちも


 分からないでもない


 逆の立場なら、私も同じことしていたかもしれないから、


 問題は教師の仕事を失ってしまったこと。

 教師だから、問題になるんじゃなくて

 失業中の

 間がある

 時間が

 いけなかった。


 職探ししてると、失敗はつきものだし、どうしても、ネガティブになったりする


 間のある時間に、私はVRの世界でストレスを発散していた。ストレスを貯めてないから大丈夫だと思ってた。


 一番のストレスが彼が、私を待つと言ってた彼が、お見合いして結婚したことで

 でも

 それ自体は許せた。だって好きだからこそ、身を引ける愛もあると思うし


 でも、頭ではわかってても、心がついていかない。

 100%受け入れてたと思ってたけど1%くらい受け入れてなくて、

 日々の生活のなかで、ふと虚しさがよぎって


 些細な感情の揺らぎだったけと、それが毎日繰り返し起こってたら


 いつの間にか、間のある時間に必ず虚しさがよぎって


 起きているときも、寝ている時も、

 間がありさえすれば、思考を支配してくるから、


 だんだん

 だんだん

 少しずつ

 そんな自分に

 イライラしてきて


 寝られなくなって、


 そこから


 イライラと不眠がスパイラルするように


 そんなキャラしてる自分が納得できずに、余計イライラして


 ストレスが、爆発的になるから、VRやっても楽しめないし、


 精神安定剤、飲んでみたけど、効き目ないし

 いわゆる鬱なんだとわかって


 生活保護を受けるにしても、


 情けなくて、家のポスト入ってるきらびやかなキャバ嬢のパンフレット見てたら、私もまだ働けるし、顔はイケてるし、前を向いて生ようって思ったの


 そこからは良くある話でホストにハマっていく過程で、お気に入りの彼が覚醒剤してて、

 ああ、彼も自分と一緒なんだっ


 安心してしまって


 泥沼にはまりました。


 ただ、運が良かったのか、彼は覚醒剤で逮捕されて、結果的に、わたしの側から、彼が居なくなるのだけど、そうなってから意外に、たいして彼を必要としてない自分に気づいて


 それを踏ん切りにして、麻薬の魔力からも開放されて、私的には良かったんだけど

 彼の好意で私の飲みの借金をツケにつけてたから、彼が逮捕された瞬間から、店側が返済を待てないから、返してくれと。

 私も彼も覚醒剤に浪費してて、堕落してたから


 そんな時、ヤクザに借金を立て替えてもらって、危ない橋渡りに協力するようになって、


 最初は問題なく、お客さんに宣伝できてたのだけど、お客さんが覚醒剤買って持って来るようになって、プレゼントしてくれて、断れば良かったのだけど、

 無料で高価な覚醒剤が手にはいるものだからつい、


 貧乏性が、原因で今こうしてるのね


 覚醒剤つかったから、ハイになってるだ。だから、こんなくだらないことで、笑える。


 そういえば


 このままVRやったら、どうなるかな?








 うひょーーーー!




 やべぇ


 この感覚は

 初めての麻薬を体験したときの感動にそっくり。


 もう逮捕とか、されても、どうでもいいや


 これが味わえるなら逮捕されようが、口封じに狙撃とかされようが、どうでもいいや








 12時間後〜


「やっべ、ものすげわ、疲れる!」


 薬物副作用で池内は喪失感と

 共に脳も体も疲れきっていた。


 覚醒剤を使ってハイにならないと立つ気力もでない状態。

「こんな日は、仕事をサボって寝ていよう。昨日は働いたんだし、いいよね」

 そんな考え方をしてたら、貯金貯まらないし、返済できないから、ずっとヤクザに縛られる。池内自身、その問題は意識

 しているが、今は疲れてしまっていて、考える力を失っている。

 池内の様な麻薬中毒者はたいてい、体力が回復したあと、またやりたくなる。体力があると、欲求も強くなるから、我慢できない














 《魔法のマントを巡って殺戮について》


 寺井が布教団体から、魔法のマントに関するメールを受けとった頃に、マサシも同じメールを受け取っていた。マサシは以前から、この魔法のマントの殺戮陰謀論を気にしていた。


 マサシが推理するに布教団体に問い合わせる者は、いわば、魔法のマントを所有してる者の筈。マントを持つからこそ、身の安全が心配になって団体に連絡をとろうとする。犯人がこの団体なら、連絡をするとハッキング等されて、リアルの個人情報を取られ、殺され、レアアイテムを奪われるかもしれない。


  マサシは屈強なヤクザたちの中でも臆病者な性格であり、物事を悲観的に考える癖があった。

  とはいえ、マサシもナギの面倒を観るの忙しい。メールへの疑問は忘れ、日々の生活を過ごしていく


 しかし、ある時から、マサシの心は変化した。人が変わった様になり、ナギを寄せ付けず、ナギの面倒は部下たちに放り投げるのだった





 ~事務所にて~


 マサシ

「かしら! VRゲームやらない?」


 コイツ正気なのか? 最近様子がおかしい。ゲームを断るとマサシは寺井を白い目でみた。


「どうしたの? かしら?」

 どうかしていたのはコッチのセリフ


「あの、カシラはどうしてVRにハマったのですか?」


「理由? 面白いから?」


「いえ、そういうこと、ではなく。何がキッカケで、やり始めたのですか?」



 寺井は過去を振り返ってみたが、思い出せなかった。

 寺井は子供のころ恵まれてて、しかし、親が早くに死んで、親戚で肩身の狭い思いして

 不良して


 施設に入って不良して


 VRの体験会をやってるのを街で見かけて、それに惚れて……






 マサシ

「いえ、そういうこと、ではなく。何がキッカケで、やり始めたのですか?」



 気持ちわり。何このゲーム馬鹿、いっそログインしたままネットからログアウトできなくなればいいのに。


 ナギ

「あそぼー」




 突然

 ナギがVRをやりたいと言い出した。

 泳ぎの練習がしたいらしい。

 バーチャルの訓練は現実世界には繁栄しないのだが、まあ、VR中は大人しくなるから、やらせてみた寺井




 ナギはスクール水着スタイルだった。小学生に上がったら着たかった服らしい。しかしキャラクターが大人系なので、わいせつなキャラにしか見えない。


 男性プレイヤーの目を奪ってる。


 ネットナンパ師なら、こういうとき、声かけて来るのだろうか?


 試しにナギから、離れてみる



 が、誰も近寄って来なかった。オンナの人が何人か近寄ってきて、一緒に戯れてるだけで……


 どういうことだ?

 次から付次へとオンナが集まってくるぞ?


 プール一杯に女が入り込み。溢れ出そうだ。プールの水こぼれたぞ?


 何かとてつもない珍事が起きてる。


 水着を来た美女キャラが、その後もどんどん集まってきて、プールサイドに1000人くらい集まってきた。


 ゲームとはいえ

 プールは50mの競技用プールだったから



 1000人も浸かることはできない。水が溢れてしまってナギが泳げなくなった。困った顔して戻ってくるナギ


 水着美女達がナギの後をゾロゾロとついて来る。大名行列みたい


 寺井はビビっていた。ナギがいきなり意味不明な大名行列を作ってるのだから、



 ~ナギの視点~

 なにこの人達、みんなしてカラダじろじろ見てくるけど なんで?


 美女:a「私らスクール水着愛好会なの、水着女子を見ると血が騒いじゃってね。ついつい こうして 親睦を深めにきちゃうの。」


 ナギ「ちがさわぐ? しんぼく? 言葉がむずかいくて、わかんない」


 美女「しんぼく、というのは、こうやって、相手のカラダヲ、そう、例えばこうやって、見つめるの」


 美女aはナギの股間を見つめた



 ナギ「……」


 鼻息がかかるくらいに美女aはナギの股間やら髪の毛、胸、近くで見ている



 ナギ「しんぼく、おもしろくない」


 美女「じゃあ、血が騒ぐのを教えてあげる」


 美女はナギをだっこした。髪の毛を、なでなでしている、

 このゲームはプレイヤー間の触覚機能はないので、実際には触る感覚、触られた感覚はない。


 美女はおもむろにナギに唇重ねた。。ナギは相手の顔で視界半分みえなくなる


「やめてください」

 ナギは抵抗したけど、がっちりホールドされていた



「動けないんですけど、もうログアウトしていいですか?」

 ナギは怒った顔をした。美女はそれを見て、ナギをおろして、

「ナギちゃんは、泳ぎの練習してるんだってね。わたし達のプライペートビーチに来てみない? あそこは広いから、水泳の練習にはいい感じよ?」




「おじさんも連れてっていいかな? かな?」


 美女は微笑み

「いいわよ勿論。みんなでご挨拶に行きましょうか」


 ナギは寺井の元へとかけよる。その後をスクール水着愛好会がついてくる……




「ナギ共々も、宜しくお願いします」

 自衛隊式挨拶で迫力を出す寺井。美女に囲まれて嬉しいのだ。


 美女

「まあ、よく来てくださいました。ではプライペートビーチに飛ぶので……」


 一人の美女がそういうと寺井の体に触れて、テレポートした。



 ~ビーチにて~


 ビーチは一面砂場で、見渡す限りの青い海。吹き抜ける空。照りつける太陽。

 ゲームを進めると誰でも貰えるプライペート空間、そこでは泳いだりビーチにバレーしたり、アトラクションでマリンスポーツ等いろいろあったりする。

 寺井たちが招待されたビーチでは美女1000人が集まっていて、、皆、思い思いに戯れている。


「皆さんどういう集まりなんですか? こんなにも沢山のパーティー組んでる人、初めて見ましたよ」

 寺井の率直疑問であった。

「まあ、しいていうなら、女好きの集まり……かな」

 あどけない表情で答えた美女、言葉を続けて

「さあ、ナギちゃんも一緒に遊びましょう」


 美女はナギの手をとり、滑り台ウォータースライダーに連れていく。

 寺井はその場にポツンと独りぼっちで残された。その後、美女に話しかけてみるが、相手にされない、他の美女たちも、まるで寺井が存在してないかの様に扱った。


 どういうことなんだ。向こうから誘っておいて、どうして自分だけ、のけ者にするのか、何故かナギだけが愛されてるのか、自分だけ皆と何が違うのか。

 そして気付いた寺井。

 なるほど、男なら女好きなものだ。パートナーが男であるより女がいいに決まってる、なら男同士が楽しむ為にならキャラを女に変えないといけない。

 暗黙の友達ルールに気付いた寺井。なぜ今まで気付けなかったのか、寺井は自分の見識の狭さを恥じた。早速IDを変えて女キャラに変更した





 一方、ナギはログアウトしていた。やたら密着する女たちにウザくなったからだ。ただ、それなりに楽しいビーチで、今度はコッソリ遊びに行こうと思った。

 疑問を感じたのは、最初にプールで出会った女に年齢を聞かれて、歳を12だと偽って伝えた直後から、美女軍団が現れたこと。今のナギはその意味に気付かないが、いつか気付くかもしれない。美女軍団の正体が単なるロリコン男の集まりだったことを……




 ~あるロリコンニートの視点~

 ナギはちゃん、見た目はロリじゃなかったけと、中身は、ロリロりなんだよなぁ

 仕草とか子供っぽいから、保護欲をそそられたし

 うへ、うへうへへへ

 もっとナギちゃんに近づきたいから、ナギちゃんの保護者みたいな奴と、パーティー組んだよ。中身はオッサンだからどうでもいいんだけど、オッサンについてけば、もれなくナギちゃんに出会えるだろうから。

 ワクワクするぜww


 まあ、オレはこう見えて紳士だから、リーダーみたいに安易に触ったりはしないから、人畜無害なんだ。だから人として何も問題なし!

 まっててね、ナギちゃん今行くよ。いつかリアルでも、会おうね。もしよかったら、俺の童貞を奪って頂戴!



 ~あるロリコンニートの視点2~

 いやはや、小学生さいこうっす!

 長年童貞だったせいで、妄想するだけで、オカズになるんです。俺もオッサンとパーティー組んだからね。縁があったら会おうね。気持ちが通じあったら結婚式しようネ。

 あ、結婚の前にセックルしないと。うへへへへ、妄想が爆発するでござる。この妄想をえろ小説に書いてネットで発表しちゃいまうあ。題名は「濡れた境内、その裏側になぜか小学生」あらずしは小学生同士のセックルを童貞ニートが見つけて写真とって脅して、みさおを奪い取る。うへへへへ



 ~あるロリコンニートの視点3~

 この前はネトゲで中学生と知り合って、リアルでエッチしたけど、こんどは小学生でチャレンジしてみるかな。リアルでの難破はカネがかかるし、足も疲れるし、やっぱネトゲ最高だわ

 問題は邪魔なオッサンだな。とりあえずパーティー組んだけど、上手く引き離さいとな。それにしてもオッサン何者だろうか? ナギっ子の親じゃないし、親戚でもないらしいし、もしかして既に先こされてるのか?



 ~あるロリコンでない女好きの視点~

 ナギたんの肌最高だったよ。さすが兄貴が開発したチートアイテムだ。ゲーム内での五感が完全に再現されてる。

 上手くやれば、やれるかも。中出しとかも楽しめるかも。でも無理やりやるのだと、ログアウトされかねないし……




「兄貴!、ログアウトできなくさせるような魔法は作れないの?」


 兄貴「いま、ハッキングしてプログラムコードを解析中だ。上手くいけばログアウト縛りできるし、なんなら相手にも触覚与えてリアルなレイプを体験させられ

 るぞ」



「いいね、それいいね、ナギたんの顔が歪んだ姿見たい。中出したときの表情見たい」



 兄貴「おっしゃ、俺って天才だわ。ログアウト縛りできる方法見つけてしまったぞ」


「まじっ! じゃあ、今度ナギたんがログインしてきたら、やっちゃおう。」





 ~ナギ視点~

 美女軍団がウザイからログアウトしたナギ


 へきへきしてた。テレビはつまらないしゲームは一人でプレイてもつまらないし、お腹も減ったし


 ナギは冷蔵庫をあけて、何もないのに気付いた。買い物に行かないといけない。寺井はゲーム中で夢の中、強制ログアウトさせる為にヘルメットデバイスを外した。


 起こされた寺井は周りをキョロキョロする

 強制ログアウトはいきなり意識切り替わる。心が飛んでしまうから、瞬間的に記憶喪失してしまう。現実に引き戻された寺井は一時的に記憶喪失になり、数秒パニックした。




「お腹すいた」


「ああ、そういうことか。じゃあ、なんか食べに行くか。食べたいものある?


「んーと、お子様ランチが食べたい」


「分かった。ちょっとまってろ」


 寺井は事務所に電話して、車を手配した








 寺井とナギは事務所のワゴン車に乗っている。運転してるのは事務所の部下で、ついでにマサシも同乗している、マサシは喫茶店が大好きらしく、一緒に同行した。



 ~車内で~


「ところでナギ」

 寺井が話を始めた

「俺さ、新しいIDアカウント作ってしまってさ、キャラを変えた訳なんだが、レベル1からなんた。レベル上げるの面倒だから、ナギのアカウントIDを交換してくれんか?」


「レベル1はやだ。ウチのはレベル13だからヤダ」


「男キャラで良かったらレベル50のあるけど、それと交換でも駄目か?」


「まじ!」

 ナギは喜んだ。モンスター狩りはプレイヤーのレベルが低いと、戦いが長引いて爽快感がない。レベル50あれば無双ゲームになって楽しめる人の幅か広がる。




 そんなことより、このあと麻薬密売の利益について会長ら報告しないといけない。原の兄貴(原誠司)は今、芸人目指して上京してるから、電話でいいかな


 っと、危ないとこだった。電話なんて盗聴されてるかもしれんからな、やはり、直接出向くしかないだろう。VRだっていつ盗聴技術が、開発されるか分からんし。証拠が残らない様に、今のうちにやり方を変えておこう。メールは盗聴されてるものとして、聴覚会話に関してはいつか、盗聴されると思う。、今この瞬間から、開発されてるのかもしれない。


 策があるとしたら、聴覚以外でコミュニケーション方法を見つける事だな。視覚、触覚、味覚、嗅覚を 使ったコミュニケーション方法の確立が必要だ。

 視覚を使うならジェスチャーかプラカードに文字を書くのが思い付く、しかし、VRの世界では書く行為がない。思った事をメモ化する機能がついてるから言語情報に変換される。盗聴されやすいだろう。


 触覚は点字くらいしか思い付かないし、点字では覚えるのに無理がある。



 土や石、砂場に、文字を書くのはどうだろうか?

 取引の際には、そこを使って意思疎通して貰うのだ。


 砂浜ビーチは書くのにちょうど良さそう。取引のルールをそこに書いとけば、何度も使い回せるし、口頭でやってる今よりも効率的に取引できるかもしれない。今度、実験的にキャバ嬢に、このやり方を試してもらおう。










 携帯の電話が鳴る

 事務所(密売拠点のパチンコ店)からだ。今はマサシが多くの仕事を仕切っている

 電話はいきなり出てはいけない。盗聴されてるかもしれないからだ。

 コールの時間で要件がわかるようにしてある。




 20秒を超えたから、緊急度のレベルが高い。寺井はすぐさま事務所に向かった。





「頭、大変です。キャバ嬢池内のやつが、捕まりそうです」



「状況は!?」


「警察署員と親しい筋のリークなんで、まず間違いないです。今、嬢の自宅に組員向かわせてます」



「もちろん武器は持ったせてるだろうな?」


「はい、ダイナマイトと、マシンガンを」



 ダイナマイトは途上国(アフリカ)で量産されて、匿名で買い付けできるから、使っても問題ないとして、マシンガンは弾痕から身元が特定される可能性があるから、できるだけ使って欲しくない。


「いいか! マシンガンは最悪の事態の時だけ使え。」


 最悪の事態とは、嬢が警察の檻に入った時


 警察署の中に連れていかれた時点では遅すぎる。そうなったら職員、嬢もろとも殺すしかなくなる。


 ダイナマイトで警察を ひるませてる隙に、嬢を回収して逃亡させないといけない。


 失敗は あってはならない。




 寺井とマサシは成否の連絡を待っていた




 悪い結果であろうと、良い結果であろうと、この事務所は放棄しなければいけない。

 寺井もマサシも事務所の荷造りをしていた。





 マサシの携帯が鳴る。出ればその瞬間に答えがわかる。

 嬢が助かったか、それとも殺されたか。











 1年後



 寺井と嬢とナギはVRネトゲをしていた。結論としては嬢は助かったのである。逃亡に成功し、隠れ家でしばらく潜伏した後、嬢は自由になった。嬢はヤクザが用意した船で海外に逃がされ、これまで働いた退職金で、それなりの生活が保証された。VRでの麻薬密売活動も、ほとぼりが冷めたころ新しい土地で再開された。

 現在、寺井と嬢はVRで麻薬を密売しつつ、その合間にナギとゲームをする関係で、距離は離れてる3人は家族ではないけれど、VR内では傍から見れば家族に見えるかもしれない。

 これは寺井が望んだ結末なのだろか、麻薬利益に関しては警察の監視が厳しくなり、収益性は9割落ちた


 嬢は言葉の通じない麻薬の流通してない土地に とばされた。 嬢は麻薬から逃れたほうが身の為だったが、そこでは 、遊べる物が少なく、VRくらいしかない。 。退屈でナギや寺井をゲームに誘うようなる。


 寺井は相変わらず平井組の頭をしていて、麻薬に囲まれた生活をしていて、VRと麻薬の二足の草鞋で依存をする。













 マサシ

「今回は運が良かっだけなんだ。もし、同じ事がもう一度起きるなら、俺は嬢が警察にマークされる前に殺している。皆は鬼畜だと罵るだろう。ガッカリするだろうが、俺が見たいのは、そういう世界だ。だからカシラの寺井は、いつか殺そうと思う。オレの邪魔をするなら嬢だろうがナギだろうがボスだろうが殺す。俺が仕事で失ってしまった手。それに見合う報酬を得るまでは、罪を犯し続けるだろうし、平井組もカシラも俺が利用し続ける。おっと、今、ちょうど連絡があって良さそうな新たなシノギが俺の元に舞い込んで来たぞ。覚醒剤なんて目じゃないくらいの儲け話だ。これ全部俺の儲けにする。頭にも会長にも内緒でやる。その為に今まで平井組で裏の人脈作ってきたのだから。俺だけに従う犬たち、育てた恩をこのシノギで一気に返して貰おうじゃないか。アハハハ!」






 その後

 マサシはゲームでのプレイヤーキラーの仕事、プレイヤーの暗殺ビジネスを実行する様になる。


 マサシは平井組で多くの仕事を任されている。実質ナンバーワンとして、何年も組員達を束ねる存在だった。ヤクザの性格を知り尽くしていたから、マサシは寺井や会長に内緒で平井組から精鋭を集め自分だけの兵隊を作った。


 プレイヤーからレアアイテム、魔法のマントを略奪し、訴えられない様に暗殺する。そんな仕事を組員に与えて、荒稼ぎする様になる。


 しかし、その、裏ビジネスの最中、組員が事故死する事件が多発した。VRゲームで装着するヘルメット型端末が暴走して脳が破壊される事故だ。

  殺人ビジネスをしているから、端末にはその麻薬ビジネスの活動のログが残ってる。マサシは事故をメーカーや警察に報告する訳にもいかず……


 そんなある日、組員の一人が、変わった噂話を聞いた。政府が人口削減政策をしていて、VRゲームを通して巧妙な殺人をしているのだという。

  普段のマサシならSFフィクションとして聞く耳すら持たないが、組員が死んでる事情を考慮すると、その噂の出処が気になって、調べさせた。


 噂の出処を辿る過程で、あるプレイヤーに指摘される。

「被害者がいるから噂を調査してるのだよね? 被害があるとしたら、警察に届けるはず。もしかして、やましいことがあるから、自分で調べてるの? たとえば魔法のマントを奪う闇ビジネスをしているとか?」


 その指摘はまさしく正解で、しかし、相手も確証がないからこそ、問いかけ返しをしてるのだろうから、そのプレイヤーは何も知らない。マサシがそのプレイヤーをスルーしようとしたら、


「オレは知っているぞ」


 何を知っているのか? 人口削減の噂の真実のことか、それともマサシがしている殺人ビジネスの方なのか?

 問い詰めれば疑われかねない。こちらからは何も言えない。マサシはそう判断した。


 マサシが何も言わないことが、余計怪しかったのか、そのプレイヤーは取引を持ち掛けてきた。


「ばらされたくなければ、武器などをよこせ」


 マサシはそいつの正体が分からなかった。得体の分らない何かに全てを見透かされている様な恐怖を覚えた。



 その後、寺井がマサシの殺人ビジネスについて知ってしまった。武器取り引きに応じなかったから報復にて、バラされたのか、それとも寺井のカンが鋭かったのか、いずれにせよ、

  寺井は殺人ビジネスに協力的でなく、本家党首らに報告するかもしれない。平井組を私物化した件を含めれば、マサシにどんな罰があるか。マサシは寺井を殺害するべく、寺井の自宅に組員を派遣した。寺井はゲーム中であり、隙だらけだった。





 〜寺井の視点「少し過去」〜


 寺井は平井組に調査員を派遣して殺人ビジネスの実態を調べた。元々、マサシについて、調べていた訳ではなかった。麻薬の密売行為について、警察に情報を横流しする様な裏切り者を探す為であった。


 マサシが魔法のマント略奪の大量殺人の主犯だということが分かったが、それは組全体を揺るがす問題になる筈、マサシ一人が万が一警察に捕まって解決する問題ではない。カモフラージュなビジネス、イメージアップの為にしている本家山口組が抱える健全な表の家業(引っ越しや林業)についても、世間からの風当たりが強くなる。マサシが警察に捕まれば組全体を含めて存亡の危機になる。寺井はマサシに言った。

「組を辞めて二度とこの街に表れないのなら、今回の件は黙ってやる」



 しかし、マサシは街を去るつもりはなく、寺井を殺そうとしている。寺井はマサシを返り討ちにするべく罠を仕掛けた。

  一見するとゲームに熱中していだけの寺井だか、その部屋の押入れには戦闘員(プロフェッショナル)が隠れている。マサシか、その部下が攻め込んだら返り討ちにする。部下だけなら、拷問をし、マサシの居場所を吐かせるだけだ






 〜マサシの視点〜


 寺井に行動の先を読まれていた事に気付いたマサシは自分しか知らない隠れ家に身を潜めた。

 ほとぼりが収まるまでは、外に出られない。現金は殺人ビジネスで得たカネ5億ある。、しばらくは引きこもりの生活をするマサシ。腹が減ったのでピザを注文した。

 ピザが来るまで待ってる間、マサシはふと、武器の取引を持ち掛けてきたプレイヤーの存在を思い出していた。


 たしかプレイヤーは 「被害者がいるから噂を調査してるのだよね。被害があるとしたら、警察に届けるはず。もしかして、やましいことがあるから、自分で調べてるの? たとえば魔法のマントを奪う闇ビジネスをしているとか?」と言っていた


 そのプレイヤーは鋭い洞察力を持っていたが、よくよく考えてみれば、マサシがそのプレイヤーと「同じ立場」なら、同じような発言をしていたかもしれない。つまり、そのプレイヤーはマサシと同じく殺人ビジネスをしている同業者、どこかのヤクザ者なのかもしれない。そう思ったマサシは、そのプレイヤーがマサシと同じく多額のカネを貯めているのではないか、どうにかして奪う事はできないだろうか。と考えた。


 マサシは思い出した 。そのプレイヤーは「ばらされたくなければ、武器などをよこせ」と、言っていた。 わざわざ武器を欲しかるくらいだから、暴力団としては小物かもしれない。


 マサシは平井組の裏金で武器を買っている。沢山あるから1つや2つ失っても構わない。武器の取引を口実にそのプレイヤーを捕まえて財産を没収しよう。カネには困ってないが、丁度いい退屈しのぎになりそうだ。


 マサシは犯罪の妄想をワクワクしながら頭でイメージしていたが、その計画はマサシ1人では実行不能なものだった。


 マサシが今使う事のできる兵隊はいない。寺井に皆捕まりマサシいま独りぼっちである




 組からくすねた麻薬を使い、堕落した生活をするマサシは

 ふと魔が差してVRにログインした。薬物の影響で正常な思考でなくなっていたマサシは、噂話【政府による人口削減政策】を忘れていた。





 麻薬で思考がまわらず開始直後、モンスターに殺されてしまった。その瞬間、マサシの脳裏に閃光が走った。まるで囚人が電気椅子に座り、処刑されているかのような格好で、マサシは絶命した。


 ヘルメットデバイスは煙をあげながら、信号を飛ばしていた……











 深夜

 信号を受け取ったのは、水道工事の業者、作業着を来た男たちだった。

 男達は武装して貨物トラックに乗り込んで走り出した。程なくして、マサシ潜伏しているアジトにたどり着く。

 周囲に人気のない山の中にある別荘が、マサシのアジトだった。トラックから降りた男達、荷台貨物の中から暗視ゴーグルをつけた男達も降りてくる。男達は警戒していて、見張り役と別荘を取り囲む役に二手に別れる。暗視ゴーグルだから暗闇でも機敏に動いている。別荘内に生存者が居ない事を確認し、ゴーグルを脱ぎ、玄関の鍵をキーピックで解除して入った



 男達はマサシの死体を袋に詰め込み、トラックに載せた。証拠が残らないように徹底的に部屋の掃除をし、キーピックの痕跡が残らないようにドアノブは新品に交換した。













 〜ピザ屋の視点〜


 その日は、いつもの常連さんからピザの宅配の注文を受けていた。人気のない山の中で30分はかかる距離で、バイクを走らせていた道中トラックが山中を登っていった。普段は車の通りのない道であり、珍しい光景にて覚えていました。届け先に行くと、作業着を着た人が6人ほど居て


「いま、水道管が破裂して工事をしているんですよ、中は水浸しで、だから入らないでもらえますか」


 と言われました、いつもごひきいに、して頂いてるお客様のお顔ですし、言葉ですし、忘れはしません。


 なのにこの日以降、この方からの注文が一切なくなりました。残念です。ウチのVIPとして月間売上の客一位でしたのに……


 どこに行ってしまわるたのかは分かりませんが、また戻っていらした際には、是非また当店をご利用くださいませ。従業員皆、貴方様から注文が来る日をいつかいつか、と待ちわびています

















 〜ダイ・ハード〜





 マサシの部下を拷問してマサシの居場所を聞き出そうとする。

 しかし吐かない。


「かしら! こんなものが事務所のデスクから……」


 マサシは逃げる前に動画を撮影していて、デスクの引き出しに入れていた。

 動画にはマサシが万札の海で泳いでいる姿があり、誰にもバレない秘密のアジトの存在を語っていた。


 マサシはどこにいるのか、

 寺井は一月後、VRにログインしてわかった。


 マサシからのメッセージが届いていた。内容はデタラメであり、意味が成立しない文章だった。恐らく薬物でラリった状態で送ったのだと思われた。


 寺井はメッセージのデータを解析するためにメーカー側に交渉した。平井組の総力をあげて脅した。


 2日後、解析が成功し マサシの潜伏先が特定された。メッセージ受信から時間がたち、マサシも、もう逃亡したかもしないが、一応手がかりを探しに寺井は向かった。


 寺井と部下たちは念の為、ピストルを隠し持っていた。車の荷台にはロケットランチャーやマシンガン、手榴弾を積んでいる。

 あくまで念の為である。マサシが組から武器を持ち出してアジトに隠し持ってる可能性もあるから




 別荘内はもぬけの殻であり、マサシがそこにいた痕跡すら無かった。

 次にどこへ向かったのか、少しはその手がかりに期待していた寺井は、溜め息を吐く

 マサシの捜索で疲れていたので、別荘で一晩休むことにした。


 寺井は腹が空いたので、何かを食べようと思ったが、近くに店は無いらく、あるのはピザ屋だけだった。ちょうど部下も腹が減っていた。


 組員は体育系なので、一人で3、4人前は食べてしまうから

 寺井は20人前のピザと酒を注文した。



 配達に来るピザ屋が任侠顔に驚くといけないので、人の良さそうな顔をした寺井が対応を受けた


 ピザ屋は嬉しそうに話をした。


「こんなに一度に注文を受けたのは初めてです。月間MVP売上、お客様が一気に一位になりました。これは記念品です。」


「……」

 寺井は、もしかしてと思い聞いた


「そうです、一昨日くらいまで、ここを借りていたお客様も、毎日御利用なさっていました。」


「この記念品は?」


「ええ、お得意様でしたので、記念品を贈呈たしましたが……」



 寺井は漠然と違和感を感じていた。マサシが気になってくる


 寺井はおもむろにマサシのメッセージを見た。受信した時刻を確認した。記録によると、ピザ屋の配達がくる10分前に受信していた。その時間マサシは薬物でラリっていた筈で、


 寺井

「そのお客さんの様子覚えてますか?」


 ピザ屋

「様子ですか? いつもと変わらず普通でしたよ? 」


 寺井は思った。薬物の影響は顔に出て、逝っちゃってる表情になるはずで


 ピザ屋

「いつもと違うといえば、水道管が破裂して惨事になったそうで、工事の人が来ていましたよ」


 惨事になったという割には水浸しになった形跡がない。床材はワックスが剥げる程老朽化している。水浸しになれば跡が残る筈で



 寺井は考過ぎて疲れた。

 面倒なので部下に考えてもらおう


 部下

「かしら、魔法のマントの殺人ビジネスの件、覚えてますか? 本家から数人、潜り込ませてマサシを監視させたのですが、マサシはどうやら、ゲーム中に死ぬとリアルの自分も死ぬと思ってたらしいです。


 寺井

(ゲーム中に死ぬと死ぬ? 何を訳のわからないことを)


 部下

「で、かしら、それが原因でマサシは何人かの部下を失ったそうで、VRでの仕事の殆どを一般人にやらせていたそうです。」


 寺井

「……」


 部下

「調べてみると、実際に組員の何人かが、行方不明になっていて……」


 寺井

「行方不明なのは、マサシと一緒に逃亡してるからじゃないのか?」


 部下

「実はその可能性はないんです。」


 寺井

「どうして言いきれる? 死体でも見つかったのか?」


 部下

「いえ、マサシは、頭や本家に対して組員を私物化したのをバレるのを恐れていました。マサシは死体を巧妙に隠していたので痕跡は全て消しました。」


 寺井

「言ってる意味が分からないぞ。死体を巧妙に隠して痕跡も消したのなら、死体なんて見つからなかった、ということだろ。なんで死んだなんて断定できるんだ? マサシと一緒に逃亡したか、あるいはバラけて逃亡したんじゃないのか?」


 部下

「実は会長に『組の恥になる!』といわれて

 頭にも黙ってろ、と言われたのですが……」



 部下はUSBメモリをポケットから取り出して、ノートパソコンに接続した。


 部下

「このデータは、マサシの部下が、マサシにも気付かれない様に、こっそりとコピーして隠し持っていたものです」



 寺井はパソコンに表示された映像を見た。

 中身は行方不明になってる組員らの死体が撮影されたもので、

 マサシが死体を弄ぶ姿が撮されていた。


 部下

「気持ちいいものでは有りませんが、ここをよく見てください。」

 寺井は部下の指した部分、死体の頭部を見た、


「死体の頭部に焦げた様な形跡が見えませんか?」


 寺井はそれが焦げなのか、それとも血液が酸化して黒に変色しただけなのか判別できなかった。


「ゲームのヘルメット端末から電気が流れてきて脳が焼かれる。もしも、ですが、あくまで仮定の話なのですが、ゲームで死んだ人間は実際に現実でも死んでしまうのでは、ないかと」


 寺井はVR内で死んだ経験がないから、分からない。

 でもネットにはそういう「死んだら死ぬ」噂も流れていることを寺井は知っていた。

 だからといって、噂を信じきる理由にはならない訳で、

 そういば

 噂の中には、水道工事のドリル音で殺人の悲鳴やらの音をかき消してる。なんとか説とか政府の陰謀で、限りある資源を確保する為に人を減らしている等の噂があった

 寺井はフィクションではありえても、ノンフィクションではありえ無いと思ってて


 しかし噂を完全に信じきってるプレイヤーは結構いる。「ゲームをしたら死ぬ、だから辞めよう」と警告活動する団体もあるくらいだ。


 部下

「噂によると『水道工事があると、死人が出る』というのもありますが、別荘で水道工事があったとピザ屋が証言しています」


 その水道工事はどこがやってるか判るか?


「近くの業者だと思いますけど、電話してみましょうか。」


 寺井

「好きにしろ(笑) 本当に陰謀なら口封じとかで俺らが攻撃を受けるだけだ。楽しそうじゃないか。幸い武器も持ってるし迎え撃とう」


 電話をかけた部下


 部下「もしもし、先日そちらで水道工事を受けた者ですが、トラブルあるので来ていただけないでしょうか、あ、はい、住所は……」



 20分後、寺井たちは、いきなりの展開(ヘリコプターからの銃弾の嵐に巻き込まれ)に命からがら山中に散らばり逃げた。幸い竹林に潜むことで敵のヘリコプターの監視を欺いた。

 逃げ出す途中、寺井たちは敵の猛攻を受けだ。


 組員の何人かが、捉えらえ、拷問にかけられた。口を割るのは時間の問題で、

 いずれ平井組とその本家山口組に所属していることが判ってしまう。そうなったら組も攻撃を受けるのか、あるいは見逃して貰えるのか、

 恐らく見逃すつもりはない。


 陰謀が、真実として人口削減を実行しているなら、人として面倒で邪魔な存在であるヤクザが真っ先に殺しの対象ターゲットに

 されるハズだ。


 もしかしたら、ナギも殺すかもしれない。ナギが将来組を引き継ぐかもしれないとすれば、親族が皆死ねば国を恨んで仇なす存在になるかもしれない。芽が小さいうちに摘んでおくのが国の役目なら…


 …組をあげた国との全面戦争になる。


 国に勝てる筈がない。正面から戦うなんて死ね と いっているようなものだ。

 組に戻らず単独で逃げるのが正解かもしれない


 寺井は命からがら、


 走り過ぎて喉が乾いてる

 民家の外にある、水道から水を飲む


 人に助けを求めたら、どうなるのか、

 巻き込むだろうか


 だとしても、助かるには人を盾にするくらいでないと、逃げられない


 寺井は家屋に侵入し住民を脅して軽トラックの鍵を得た。エンジンをかけようと外にでた瞬間、ヘリコプターからミサイルが飛んできた。


 軽トラックが破壊された


 ヘリコプターは、寺井に狙いを定めている。弾丸雨がふる


 思わず屋根のある家屋に逃げ込む、ヘリは構わず撃ってくる、住民の安否を確認する余裕はない

 寺井はとにかく走った。道なき道を


 崖を下り


 また竹林に入り


 崖を降り


 いつのまにか

 住宅の数が増えてきた。人目を気にしたのか、ヘリコプターは追って来なくなった。


 寺井に電話をが入ってくる

 事務所からだ。






 コールの時間は1分を超えてる。1分を超えたら戦争が起っていて、受話器すら元に戻す余裕がない、という意味だ。


 麻薬の密売事務所がやられるなら、平井組も攻撃を受けてるかもしれない。



 電話が通じない。


 本家にも通じない。


 会長宅は?


 通じない。


 電話が鳴った。

 会長からの電話だ。


「もしもし、会長!大丈夫てすか!」


 返事がない。受話器越しに銃声が聞こえる



「返事をしてください会長!」




「てらい?、一体何がおこってるの!」

 これはナギの声


 ナギの話では会長宅に自衛隊がやってきて、破壊宣告をしたという。3分以内に拘束を受けいれて投降しなければ、破壊するという。


 会長は外で自衛隊と話し合いをしていた

 自分の砦は破壊されたくないからと、抗議の意味を込めて激しく妨害して、殴られて気絶した


 会長宅にいたナギと他組員は投降したけど、自衛隊は本家山口組及び、それに関わる全ての組、全ての組員の投降と拘束を要求していて


 組員全員が会長宅にいるわけもなく

 そのまま家は銃弾の嵐になって



 ナギの携帯を自衛隊が奪い取った

 寺井に話しかける隊員

「君は関係者だね、いますぐ拘束を受け入れないと、君は一生テロリストとして、指名手配されるけどいいかね?」


 寺井を脅してる隊員の話によると、民家でヤクザ同士の抗争になり、罪もない民間人を殺戮に巻き込んだ。ことにされるらしい


 冤罪だ、もし裁かれたら処刑ものだ


 拘束されれば、無かった事に してくれるそうだが、

 人口削減政策してるなら、どのみち殺される気がする


 寺井は

 投降しないし、拘束もされない。


 その場合


 恐らくはナギを ていのいい人質にでもして、脅してくる かもしれない。なら、


 尚更、逃げるが勝ちだ。


 人質を殺して困るのは国だ、街中で目立つ争いをして、野次馬は多くいるハズだ。もし子供の命を奪うなら、必ず国のイメージが悪くなる。


 隊員「ナギという子がどうなってもいいのか?」


 交渉を始めてきた



 寺井に迷いは無かった。逃げる


「ナギが死んでもいいのか?」

 隊員は銃口をナギに向けた









 恐らく

 時間稼をされている、

 会話に気を取られている間に、

 追っ手が寺井との距離を詰めている かもしれない

 これが戦争だとしたら、

 ゲリラ戦を仕掛けられていることになる。


 後ろを振り向いたとたん、追っ手がいるかもしれない。、油断ならない


 携帯の電波で寺井の位置を探っている

 だろうから、携帯も捨てなければいけない


 寺井はとにかく街中に入りんだ。木を隠すなら森、人ごみの中に入り込んだ。



 指名手配されたとしても、全員がテレビを見るわけではない。繁華街は迷路の様に入り組んだ構造だし、身を隠すには、うってつけかもしれない。

 寺井は人混みに消えていった。






 ナギは拘束されている。

 隊員はナギの頭に銃口を向けていた。





 隊員

「よかったね。命が助かって、」


 銃を下ろした隊員は、ナギの拘束を解いた。


「君には色々と説明しないと、いけないだろう」



 隊員はナギに実家がヤクザな家業をしていた話をした





 〜ナギ視点〜


 ナギは複雑な気持ちだった。ヤクザな組員の半分近くは殺されたらしいけど、あまりピンとこない話で、寺井が罪を重ねていたとかも、言われてみて心当たりはあるものの、軽蔑まではできなかった。


 これまで犯罪で得た金で生活していたと知らされても、知らなかったのだから罪の実感がないから、


 ナギは誰も恨まなかった。祖父が殴られたのは可哀想だか、自業自得なんだろうし


 ナギはただ、平凡な日々に懐かしさを感じていた。


 みんなでゲームして、寺井やマサシとその部下たちと、ご飯食べて、


 楽しかったから、


 悪い人たちだとは思いたくない


 罪を償なえるのなら、その方がいいし、逃げて幸せなら、それもいい






 隊員は今回の事件をナギに説明した。


 隊員

「政府は新たな制度を作った。ヤクザ強制撲滅法は、秘密保護法をありきの事後法となった。事後法とは、『法律ができる前に犯した罪も問える』という意味である。第二次世界戦争は、事後法にて戦争犯罪が裁かれた。事後法はその時代の権力者により、なんでもありの独裁世界が作れてしまう。戦後は事後法は違法となり封印されたが、ナギか生まれた年に似た法律が作られた。それは秘密保護法で、秘密をもってして世間が認識してなくても、既に法律があったことになり、事後法と似た効力を持つ

 秘密保護で世間に隠されていた法律は



『ヤクザは問答無用に人権破棄される、人権を放棄させるための、あらゆる手段は違法行為にならない』










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