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短編集

マルチ異世界転移

作者: 枝鳥

 神様と名乗る存在が俺のところにきたのは、仕事を終えて疲れ果てて帰宅して、ネクタイをほどいた時だった。

 あらかじめ言っておくが、俺はそもそも信仰心に篤い人間じゃない。

 正月には初詣でに行くしクリスマスもする。夏には近所の神社の夏祭りも覗いたりするし、爺さんの葬式は仏教だった。

 まあよくある日本人だ。

 何となく神様はいるかもしれないって思ってるくらいの俺だったが、神様と名乗る存在を目にしてすぐにこれは神様だと理解した。

 話が進まないのが面倒だから、信じられるようにしたと言われて納得した。

 で、まあ話を聞くことにした。


 この神様、どうやら地球の様な世界を作ったのはいいけれど、うまく人類が創造できなかったらしい。

 そもそも地球の人類も、とても多くの偶然が重なって誕生したという話らしい。

 そこで、地球から何人か人間を転移させて文明を作ってほしいという話だった。

 そこで無作為に選んだのが俺だったというわけだ。

「俺一人が転移しても、人類がいないんなら一人で文明を作るって絶対に無理ですよ。

 そもそも俺が死んだら文明も滅びるじゃないですか」

 俺がそう言うと、神様は条件を示してきた。

 三人まで異世界転移に誘っていい。

「いやあ、三人までってその三人にも離れたくない人がいたら断られますよきっと」

 異世界に転移する人には同じ条件を出すらしい。

「それに俺は直接会ったからすぐに信じられたけど、たいがいの人は信じられないんじゃないですか」

 この話を聞いた人が、真実だとわかるようにもしたらしい。

「うーん、さすがに異世界にすぐ行くって即答できないですよ。環境の変化もこわいですし」

 ある程度の住環境ごと転移させてくれるらしい。

 そして期限として今から一週間をもらえることになった。

「じゃあ、一週間後に転移してもいいって人とある程度の環境ごと転移ですね。

 わかりました」



「これが多分、転移の発端だったんだと思います」

 リポーターのインタビューに研究家が答えた。

 生中継のためか、研究家はやや緊張している様子だ。

 テレビ画面の半分は、シミュレーターが表示されている。

 地球の一箇所に落とされた赤い点が、すさまじい勢いで拡散されていく様子が。



 2017年、人々は転移した。

 地球のほとんどの人間と住環境ごと。



 残された人たちのことを俺は時々考える。

 友達のいない人は今も一人で残っているのだろうか。

 土地にこだわり争いあっていた人たちは、今も争いあっているのだろうか。

 他国からの干渉を嫌がり、情報を遮断していたあの国はどうしているのだろうか。


 地球によく似た星は、人類がいなかった分資源も豊富で環境も豊かだ。

 地球で犯した環境破壊をここでは犯さないように、慎重に開発が進められている。

 新しい資源の発見の報せも日夜飛び込んでくる。

 俺は朝のニュースに「その再現VTRは正解だ」とつぶやいてから出勤した。


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― 新着の感想 ―
[一言] ただの移住やないかΣ(゜Д゜)!!! 面白かったです。
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