その夜は辺り一面の稲穂が銀色に輝く綺麗な夜。
何もない田舎の畑道には、冷たい秋の風が吹いていた
ボクは今彼女に何から話そうか考えていた、いや迷っていた。
ボクは……
吸血鬼だから………
ボクが彼女に出会ったのは3ヵ月前、彼女は突然表れた。
ボクはその時、今は使われていないボロボロの農具小屋に住んでいた。
ボクは朝は小屋で寝て、夜になると農家の家畜を襲いに出掛けるのが日課だった。
なぜ吸血鬼が田舎にいて農家の家畜なんかを襲っているかって?
それは今の時代、吸血鬼なんかより人のほうが数倍恐ろしく、そして残酷だからだよ。
夜な夜な都市の裏路地なんか歩いてたら。
吸血鬼や人なんて関係なく、通り魔や異常者に襲われる。
ボクの知り合いの口裂け女は、マスクを取る前に異常者にギザギサに切り裂かれた。
これじゃ、だだの裂け女だ。
ボクも昔、同じよいな経験があるんだ。ボクが夜路地を歩いていたら、通り魔にいきなり後から背中に銀のナイフを刺されたんだ。あと5センチ深く刺さっていたら、ボクはこの世にはいなかたっよ。こんなことが今の時代当たり前になってしまったんだよ。だからボクは、この安全な田舎に引っ越してきたんだ。
ボクはこの田舎にきて毎日、朝は小屋で寝て、夜は農家の家畜を襲う。小屋と農家を往復する
そんなある日彼女はやってきた。
その日の夜は激しい雨と強い風がふく嵐の夜だった。ボクはこの日の食事をあきらめ、小屋でじっとしていることにしたんだ。
そのときだった。ずぶ濡れの彼女が小屋の中にドアをあけて飛び込んできた。
ボクは驚きのあまり大きくしりもちをついてしまったんだ。
その音に気が付いて彼女は周りを見渡した。ボクはあわてて身を隠した。
ボクは人が恐いんだ
彼女は言った
「誰かいるの?」
その声は少し怯えていた。
ボクはテンパってしまった。そして言ってしまった
「いないよ」
最初、彼女は驚いた顔をしていたが、次第に笑いだした。
ボクも最初は、冷や汗かいてしまったが、自分のバカさ加減に笑った。
それが彼女との最初の出会いだった。
彼女の名前はユリ、家はこの小屋から5分くらい歩いた所にあるそうだ。年は17で都会の高校に通っていて、いつも帰りが遅くなるそうだ。
ボクは同じ高校生だと嘘をついた。年も同じで学校も都会の遠い所だ、と嘘をついた。名前も太郎と適当な名前にした。
その夜は彼女といろんな話をした。話すといっても全て彼女の話だった。
ボクは幸せだった。
この嵐がずっと止まないことを願っていた。
しかし願いはむなしく、次第にに嵐は弱くなっていった。
「雨大分弱くなったね」
「そうかな?」
「私そろそろ帰るね。太郎君はどうするの?」
「ボクはまだここにいるよ」
「そっか残念だな、いっしょに帰ろうと思ったのに。」
「…………」
「それじゃ、バイバイ」
彼女はゆっくりと座っていた木箱から腰をあげ、ドアの方に歩いていった
「あ、明日も夜ここであ、会えないかな?」
ボクは自分が言ったことばに自分自身驚いた。
彼女は振り返り笑顔で言った。
「いいよ!また明日」
そう言うと、彼女は駆け足で小屋から出ていった。
ボクは幸せだった。しかし少し後悔していた。
彼女とは週に2回のペースで会っていた。
いつもの小屋でいつものように話をして、いつものように彼女が帰るのを見届けた。
とても幸せだった。いつのまにか彼女が大切な人となった。だがその分だけ、ボクは嘘をついた。そしてその嘘はボクの心に重くのしかかって、つぶれそうだった。
そして決心したボクは、彼女をいつもの小屋ではなくこの畑道に呼び出して、この今にいたる訳だ。
彼女を呼び出したといってもいつもの小屋のドアに貼り紙をはっただけだった。
正直な所きてくれるか不安だ。
なんたってこの畑道は、あの小屋から15分も離れた所だからだ、なぜここを選んだかって?答えは簡単、
この場所は一番月の明かりが届くんだ。そうお互いの姿がよく見えるようにここを選んだのさ
ボクの赤い目や鋭い牙がよく見えるように
そして彼女がきた
小屋の中、暗やみで見えなかったのがよかった。ボクは彼女を見た瞬間、ボクの中の吸血鬼の血が騒ぎだした。
早く話をすまさないと
「どうしたの?こんな所に呼び出して?」
「それは大事な話があって……」
「大事な話って?」
「ボ、ボクは………」
「吸血鬼なんでしょ、それともバンパイヤかな?」
ボクは混乱した。なぜ知っているんだ。なぜ彼女がボクが吸血鬼だと知っているんだ?もしかしてハンターなのか?イヤ!そんなはずない。ハンターだとしたらとっくの昔にボクを殺している。じゃなぜ?なぜだ?なぜ知っているんだ?
彼女はドキマギしているボクをクスクスと笑い、最初から話てくれた。
「最初にあなたを見たのは部屋の窓からなの、あなた農家の家畜を襲っていたでしょ?隠さなくていいよ、その農家は私の家なの、最初にあなたを見た時、私カラスだと思ってたの、でも違った。人のカタチをしていたから。赤い目が光っていて、鋭い牙も見えた。
最初は私少し恐かったわ。」
彼女は見てボクを可笑しそうに笑った
「でもなんかいかあなたを見ているうちにあなたのコトもっと知りたいと思ったの。
そんなある日、あの嵐の夜、あの小屋であなたと出会った、最初は恐かったわ。でもあなたはとてもいい人だった。私の愚痴も聞いてくれたし、いつも私の味方になってくれた。
実はあなたに呼び出されてから大体わかってたんだ、あなたは自分の嘘に耐えられなかったんでしょ?
だから今日、こんな所に呼び出されて、自分が吸血鬼だということを私に話そうと思ったんでしょ。」
そして彼女はボクの目を見ていった
「私はあなたが吸血鬼だろうと何だろうと関係ない、あなたは私の大切な友達だよ。だからお願い………どこかにいなくなるなんて………言わないで……」
彼女の目から涙がおちた
ボクはそんな彼女に何もしてやれずただ彼女を見ていった。
いつのまにかボクの吸血鬼の血も騒がなくなった。
ボクは言った。
「もうすぐ夜が明けるね。いっしょに日の出を見よう」
彼女は驚いた顔をした。
「そんなことしたら……」
「ボク一度でいいから太陽を見たかったんだ。いいだろ?」
ボクは何度もイヤだ!と泣きじゃくる彼女を抱いて日の出を待った。
その時間はとても幸せでとても悲しい時間だった。
いつのまにか彼女は泣き止み。ボクの腕の中で眠っていた。
しばらくして太陽が顔をだした。
ボクは生まれて初めて太陽の光を浴びた。
なんて暖かいんだろう。
ボクは寝ている彼女の耳元で言った。
「バイバイ」 |