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掌編小説集3 (101話~150話)

心霊現象

作者: 蹴沢缶九郎

草木も眠る丑三つ時、心霊スポットとして有名な廃病院に数名の男女がやってきた。ある話では、手術のミスで亡くなった女の霊が出るだとか、血にまみれたナースがメスを振りかざして襲ってくるだとか、そんないかにもな噂が後を絶たない場所だった。


この男女もそんな噂話を面白がり、肝試しにやってきたのだった。


男女グループの中の一人の男が、怯えた様子で言った。


「やっぱヤバいよ。入るの止めようぜ。」


「今更何言ってんだよ。ビビってんのか?」


「ビビってるっていうか、なんか入っちゃダメな気がするんだ。」


「じゃあお前はここで待ってろよ。俺らだけで行ってくるから。」


そう言うと、男を一人残し、皆は立ち入り禁止の札が下げられたロープを跨いで敷地内に入り、正面玄関から廃病院へと入っていった。男女は院内をくまなく探索していく。病室、食堂、診察室、売店、そして手術室…。一時間ほどかけて全ての部屋を回りきり、廃病院を出て、男の待つ場所へ戻ってきた。


グループの内の一人が拍子が抜けたように言った。


「なんだ…。結局何もなかったな。」


「つまんないのー。」


「お前の方はどうだった? 一人で待ってて何かあったか?」


と一人待っていた男に尋ねる。


「いや、こっちも何もなかったよ。」


男はあっけらかんと答えた。


霊現象的な現象も特に起こらず、いつまでいても仕方ないので、車で帰路に着く。その車中、一人の女性が自分の財布の中身を見て驚きの声をあげた。


「ちょっとー、お金が減ってる!!」


「え、勘違いじゃないの?」


「勘違いなんかじゃないわ。確かに一万円札入れてたのに八千円しかないもの。」


「うわ、俺も減ってる。一万七千円入ってたはずなのに二千円減ってる。」


「あれ? 私も。」


「俺もだ。」


勿論どこかに落とした訳でもなく、その場にいた皆が平等に、何故か財布から二千円ずつ無くなっていた。ただ一人を除いて…。


誰かがふと、唯一廃病院に立ち入らなかった男に聞いた。


「今日、お前所持金いくら持ってる?」


「俺? 百円。」


「そうか、お前は入場料が足りなかったんだな。」

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― 新着の感想 ―
[良い点] シュールな落ちですねf^_^;) 予想の斜め上を行かれました。
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