Drop─5─
「成る程…。レイを思うように動かすために、あの子を捕まえたんだね。そして、装置が起動すれば新しい星を手に入れられるから、ここと契約を結んでいる必要はないわけだ…」
ターラは怒りに身を震わせた。
「自分の野心のために世界をこんなにしたのか…! 挙句、他の惑星を支配するだって…? 冗談じゃない!」
スラムの人々は、事実を知って怒りを露にした。
「許せないね…。自分の言う通りにならない人間は全部切り捨てるつもりなんだ。自分だけ、いい思いをしようだなんて…」
「ふざけてる!」
「許せない!」
激しい怒号が響いた。
人々は皆、同じ想いを抱き始める。
「ヒオウ…。一緒にドームへ行こう!」
皆の視線がヒオウに集まる。
「あたし達はね…。家族を失って、仲間を失って、自分の体さえ不自由にして生きてきた…。辛かったさ……悲しかったさ……。そんな想いを、もう誰にも味わって欲しくないんだよ。見ず知らずの星の住人でも、それは同じさ……」
「ターラ…」
「いいね? 皆」
ターラの声に、人々は腕を掲げて応えた。
「打倒! ヒューイ!!」
「オオオオ!」
地が揺れるほどの喚声が起こる。
「でも……それじゃ、アンタ達、死んじゃうわよ…」
ヒオウは呟く。ヒューイはそれ程甘い男ではない。歯向かったところで押さえ込まれるのがオチだ。
しかし、そんなことは皆承知しているようだった。覚悟を決めた、力強い瞳をしている…。
それからすぐに、スラムの人々の進軍は始まった。
そして、ヒューイ軍の反撃も開始される…。
「…終わった…」
レイは椅子を後ろに倒す勢いで立ち上がる。
「プログラムは完成した。ノアを解放しろ!」
「まだ装置は動いていないようですが」
「ノアが先だ!」
「ヒューイ様に伺います」
その言葉に、レイは舌打ちする。
ヒューイの命令がなければ自ら動く事も出来ない人形たち。
「早くしてくれ…」
苛立ちながら言う。
しばらくして、ヒューイ本人が現れた。
「プログラムが完成したそうだな。何故動かさない?」
「ノアの無事を確認してからだ」
「困った奴だな…。早くした方がいいと言ったはずだが?」
「ノアを解放するまで動かさないからな。これを動かせるのは俺だけだ。言う通りにした方がいいぞ」
「ほう? 言うようになったな」
ヒューイはしばらくレイを見つめていた。
そして、“飴”をくれてやらないと絶対に動きそうにない、と判断した。
「シオをここへ」
「はっ」
すぐにノアは連れてこられた。
しかしここで安心してはいけない。最後まで、気を抜いてはいけない。
「ノアを放せ」
「起動させるのが先だ」
「ノアが先だ」
「……」
ヒューイは軽く溜息すると、顎を杓った。ノアが離される。
『NOAH』全起動を目の前にして焦ったのか…。これが彼の初めての誤算、だった。
よろけながらレイに倒れこんでくるノアを、しっかりと抱きしめる。
「レイ…」
「ノア…」
きつく抱きしめた後、レイはそっと彼女を離す。
「満足か? 早くしろ」
ヒューイが少し苛立ちながら言う。
「分かったよ…。動かしてやるよ」
レイは、パスワードをゆっくりと打ち込んだ。
ヴン、と音がして、窓の外が明るくなる。ヒューイはゆっくりと部屋を出て、転移盤のある下層に目を落とした。
「ヒューイ様! 転移装置、作動しています!」
部下からの報告の声を聞いたヒューイは、ニヤリと笑った。
そして部屋に戻り、レイ、ノアと対峙する。
「ご苦労…。今まで辛い思いをさせたな。ゆっくりと休むがいい…」
スッと銃を構える。
「愛する者と一緒だ。きっと良い夢が見れるだろう。ディージェに逢ったらよろしく伝えてくれよ」
「貴様…!」
ノアが叫ぼうとする。しかし、レイはそれを制し、ノアの手をギュッと握った。
「そうくると思ったぜ…」
余裕の表情でそう言うレイに、ヒューイは眉を吊り上げる。
「あんたは約束を守る様な奴じゃない…。だから、俺はこうする」
「何…?」
ヒューイが怪訝な顔をしていると。
部屋の外からバン、と激しい音がした。次いでけたたましい警告音が鳴り響く。
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野いちご版「NOAH」
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