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  NOAH 作者:緑川海月
新しい世界─3─
「…一体、どこにつながっているんだ?」

「言っただろう? 外だよ。……ドームの外さ」

「えっ!?」
 
レイとヒオウは声を上げる。

「ちょ、ちょっと待って…。外って……放射能で汚染されていて出られないはずよ!? そんなところに行ったら……」
 
青い顔で訴えるヒオウに、シオはニヤリと笑う。

「そう教えられて来たんだろう、お前たちは」

「どういうことだ?」
 
レイは怪訝な顔で訊く。

「そんな怖い顔すんなって。こう言えば少しは安心するか? …あたしは、ドームの外から来たんだ」

「…え?」
 
シオが何を言っているのか理解する前に、ゴゴゴと扉が開き出し、今度は眩しい光が見えてきた。

「お前たちに真実の国の姿を見せてやるよ」
 
眩しい光に手を翳す。
ほどなく扉は開ききり、目が明るさに慣れてくると、さほど光は強くないことに気付いた。
同じようなコンクリートの壁に囲まれた通路の少し先に、柔らかく光の注いでいる場所がある。

「ついてきな」
 
シオはまた先頭をきって歩き出す。ヒオウはかなり青い顔をしていて、シオについて行く気にはなれないようだ。

レイは二、三度シオとヒオウを見比べていたが、やがて意を決したかのように小走りに歩き出した。

「レイ、行くのっ!?」
 
ヒオウが小声で言う。

「ああ…」
 
レイは短く返事をすると、更に足を速めた。
その後姿を見て、ヒオウも恐々歩を進めた。


光の漏れていたところは広い階段だった。所々壊れたコンクリートの階段を、慎重に上っていく。
四階分ほど上がってきただろうか…。空気が更に清々しくなり、明かりが強まってきた。……出口のようだ。
 
 

建物の外に出ると、強い太陽の光が三人に降り注いだ。

「だ……大丈夫なの?」
 
ヒオウは深くフードを被り、弱々しく訊いてくる。

「平気さ。まあ、確かに紫外線は強いからな。フードは被っとけよ」

「放射能は…?」

「この辺りは心配ない。人体に影響が出る程残ってないよ。外に出られないっていうのは嘘の情報だからな」
 
シオは後ろを振り返る。

「ここが、爆心地からどれだけ離れてたと思う?」

シオの問いに、レイは一瞬間を置いた後、答えた。

「……二十キロ」

そう、教育を受けた。その答えに、シオはニイッと笑う。

「七十、だ」

「七十……!?」

レイもヒオウも驚きの声を上げる。

「お前らは騙されているんだ。国に……親父に、な」

「……」
 
俄かには信じがたい話であった。頭の中の整理がつかない。
そんなレイとヒオウの心中を察したのか、シオは笑顔を見せ、また歩き出した。

「まずは見て歩くことだ。それから考えてみな」
 
歩き出したシオに、レイはゆっくりついていく。
何があるのかは分からない。ただ、自分が知らないことがここにある。それをこの目で確かめなければならない……そう、思った。


半壊したり、窓ガラスが飛び散ってしまったビル郡を見上げながら、砂の積もったアスファルトの上を歩いていくと、一際大きな建物があり、そこに入っていった。
 
中に入ってすぐ、銃を持った男が数人立っていた。

「おっす」
 
シオがストールを取り、手を挙げる。

「ノア! 久しぶりだ、元気だったか? 痛い目に遭っていないだろうな?」
 
皆、シオの周りに集まってくる。

(…ノア?)
 
シオが違う名で呼ばれていることに疑問を持ちながらも、黙ってその様子を窺う。

「平気さ。いい暮らしをさせてもらってるよ。皆も元気かい?」
 
シオは満面の笑みで人々に語りかけている。



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野いちご版「NOAH」
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