序章
空には暗雲が広がり、辺りは暗闇に覆われていた。
風が吹き荒び、それに乗って大粒の雨が勢いよく地面に叩きつけられている。道路には川のように水が流れ、そこを通る影などまったく見受けられなかった。
そんな嵐の中、少年がひとり、立っていた。
激しく体をなぶる風も雨もまったく気にすることなく──いや、気付いていないのか──虚ろな瞳で佇んでいた。
(ここはどこだろう…)
ぼんやりと考える。
ひどく頭が重かった。痛かった。顔も、首も、腕も、胸も、腹も、足も、どこもかしこも痛い。何故こんなにも痛いのだろう? …考えても分からない。
少年は空を見上げた。
雨粒が容赦なく頬を叩いた。──痛い。顔も痛いけれど、それ以上に……胸が。
目頭が熱い。
雨に打たれて冷たくなった頬に、暖かいものが流れていく。
何故…?
喉の奥が痛くて、嗚咽する。でも、その理由が分からなくて…。
『レイ…』
声が聞こえた。
『レイ』
誰かの名前……自分の、名前?
少年──レイはゆっくりと振り返った。すると、そこにはひとりの少女の姿があった。自分と同じように雨に濡れて……少女は立っていた。
黒髪の、髪の短い少女は、大きな瞳を見開いてレイを見つめている。
その少女に……レイは銀色の髪の女性を見た。長い銀色の髪を揺らして、女性は笑う。
「ああ……ノア……」
レイは女性に向かって微笑む。その女性に近づきたくて、一歩前へと踏み出そうとした。
しかし、そこで崩れるように倒れてしまうのであった…。
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野いちご版「NOAH」
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