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箱入り息子

作者: 山羊ノ宮

「ったく、生ものだから気をつけてって書いてあるのに扱いが雑なんだから。もう、体のあちこちが痛いよ」

宅急便で届いた大きな段ボール箱を開けると中に人が入っていた。

宛先人の住所には『未来』とある。

「あの、どちら様で?」

「よくぞ聞いてくれました。はじめまして。僕は未来から来ました貴方の息子です」

すかさず携帯を取り出し、警察を呼ぼうとする。

「待ってください!信じられないのはごもっともです。ええ、分かりますとも。けれど、少しだけ僕の話を聞いてください。貴方の未来にとって大事な事なんです!」

ああ、頭の痛い人だ。

とんだ厄介事に巻き込まれたと思いながらも、自分の未来にとって大切な事だと言われれば気にならない訳ではない。

俺は不審な目を自称俺の息子に向けながらも、話を少し聞くことにした。

「実はその大事な事とは僕にとっても大事な事なのです」

ん?

という事は・・・

「つまり大事な事とは僕のお母さん。貴方の妻となる女性についての事なのです」

自慢ではないが、俺は女縁がない。

まして結婚など、俺の人生で最も縁遠い言葉であった。

「原因は分かりませんが、因果律に歪みが発生し、本来出会うべき女性に貴方は出会えていないのです。そこで、特例として今回過去に介入を許していただき、このように貴方を訪れたのです」

「・・・いいたい事は分かった。けれど、そんな荒唐無稽な話を信じろと?」

「もちろん信じていただかなくとも結構です。ただ貴方にはこれから隣の住人にあっていただければ良いのですから」

「隣の住人?」

確か数日前に引っ越してきたはずである。

まだ会ってもいないが。

もしやその住人が俺の将来の妻だと言うのだろうか。

「それではこれで僕の役割を果たしましたので、これにてお暇させていただきます」

そう言って、自称俺の息子は入っていた段ボールを持って、出ていくのだった。

恐らくこれから未来に向けて郵送されるのだろう。

またその段ボールに入るのかと思うと少し不憫である。

珍妙な客人が去った後、俺は一人考える。

ただの悪戯にしては手が込んでいる。

とは言え、言う通りにすると言うのもしゃくではあるのだが。

そして、もちろん不安もあった。

俺の嫁ってどんな人なのだろう。

ものすごい人物を想像しながら、気がつくと隣人の部屋のインターホンを押している俺の姿があった。

「はーい」

若い女の声だ。

少し安堵しながら、それでも気を抜くなと俺自身が警告する。

ガチャリと扉が開けられ、俺は愕然とする。

美人だ。

しかもスタイル抜群だ。

しかも風呂上がりなのだろうか、バスタオル一枚で現れたことに俺は度胆を抜かれた。

「あ、あ、あ、あ、あの、引っ越されてから、その、挨拶がまだだったなぁとか思って、その、あああああ、挨拶に」

「ああ、それはわざわざすみません。こちらこそ挨拶に行けなくてすみません」

彼女は深々とお辞儀する。

バスタオルが払いと落ちるのではないか。

胸の谷間がー!

と一人舞い上がった。

これが俺の嫁か!

俺は神様に感謝した。


そして、二年後。

俺は俺の息子の予言通り彼女と付き合い。

そして、結婚するまでに至った。

新婚生活を満喫していた夏の暑いある日。

俺はまた未来からの息子と出会う。

「また大事な事件が起きたのです。今度は僕と貴方、そしてお母さんにとっての大事な事件が」

何事かと聞こうとするも「大事な事ですので、三人そろってお話を」という事であった。

それから息子を家に連れ帰った。

「あなた、外は暑かったでしょ?麦茶です。どうぞ。お客様もどうぞ。ご遠慮なく」

俺は麦茶をごくりとのどに流し、席を外そうとする妻を引きとめる。

「で、その大事な事件とは?」

ある意味で一家団らんと言えるのに、空気は重かった。

「まず初めに僕は貴方に言っておかなければならない事があるのです」

「言っておかなければいけない事?」

「ええ」

深い、それこそ永遠とも取れる様な間があった。

「実は僕は本当は貴方の息子ではないのです」

「え?!」

あまりの驚愕に俺は机を叩き、立ち上がる。

めまいがした。

立ちくらみ、そう思ったが、目の前の男の笑みを見てそうではないと分かった。

「少し前、生命保険の契約をされた事、覚えておいでですか?」

「まさか・・・」

ふらふらとする体。

俺の体はもはや立つこともままならず、崩れ落ちる。

「何故?こんな事を?」

「たまたま貴方が僕の彼女の隣人だった。それだけですよ。運が悪かったですね。いえ、少しの間とは言え、こんな美人の僕の彼女とすごせたのです。運が良かった・・・というべきでしょうか?」

何か言おうとするも意識がもうろうとして来て、ついには・・・

「これで僕達は素晴らしい未来を迎えます。それでは、さようなら。お父さん」


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