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エピローグ
 エピローグ
 
 ある日の休日、俺は安徳寺ミツルがいると思われる寺を訪問してみた。
 俺の運命は戻ったが、ここの坊主の運命は一体どうなっているのか気になったからだ。
 俺は正面の門から大きな敷地内に入って辺りを見渡した。俺たち家族が住んでいたハナレなどは見当たらない。
「あのー、どちら様でしょうか?何か御用で?」
外側の渡り廊下からひとりの若そうな坊主に話しかけられた。
「いえ、用事ってことはないんですが…ここは安徳寺さんのお宅ですよね?」
「はい、そうです。お寺と自宅と兼用ですが。」
「あの…ミツルさんというお坊さんがいるのでは?」
「は?そのような僧はここにはいませんけど?坊主は私ひとりですので。」

 ( ̄□ ̄;)!!ええっ?

 俺は仰天しながらも再び問いかける。
「どちらか別なお寺に修行に行かれたとか?」
「いいえ。最初からいませんよ?」
「安徳寺ミツルっていう人ですよ?」
「…おかしなことを言う人ですね。私がここの住職の安徳寺ワタルです。私には兄も弟もいませんよ」

 ガ━━ΣΣ(゜Д゜;)━━ン!!なんじゃそりゃあああ!?

「何か事情がおありですね。とりあえずどうぞ、中へお入りになりませんか?」
「は、はぁ…では遠慮なく」
 俺は正面の大きな本堂へ通された。
 何気に見渡すと、壁にでっかい掛け軸があるのに気づいた。俺がことみの体にいたときはこんなものはなかった。かなり古いものらしく色あせてはいるが、どこかの書道家が書いた凄まじく豪快な作品だ。

 “満願”(まんがん) 

 そう、ただこの二文字の掛け軸。でもおかしなことに“満”の字の方がはるかにデカ文字だった。
「その“書”が気になりますか?」
「え?はぁ…なんで片方だけ文字がでかいのかなぁと^_^;」
「なるほど。それは書いた本人の思いが込められていたのでしょうね」
「へぇ。。」
「実は見ておわかりのように、それには筆者の名前が書いてないんですよ。誰が書いたかいつからここにあるのかわからんのです」
「へ?どういうことですか?」
「私の父にも、祖父にも聞いたことはあるんですが、ずっと昔からあったって言うんです」
「ひえー!(◎0◎)そんな前から?で、どんな意味が?」
「言葉通りの解釈でいいと思いますよ。私が父から教わったのは、日々精進して修行に勤しみ、けがれなき心であらば、些細な願いも天に通じ、思いが満るであろう」

 (゜〇゜;)ハッ!思いが…み、満る(ミツル)?

「でもまぁ筆者はわかりませんが、これもひとつの謎として、調べる必要もないと思いましてね」
「全然調べてないんですか?」
「祖父が住職の時代に鑑定士に見てもらったことがあるそうです。200年以上も前のだとかなんとか…」
「すげぇ〜、それなのによく風化しないでここまで保存できてますね」
「それが不思議でならんのです。昔からこのまんまなんです。…いや。。」
「??何か?」
「その…別な意味で不思議なのは、逆にだんだんこの掛け軸が新しくなっていくように見えるんです」
「Σ('◇'*エェッ!?」
「あ、こんな話しても信じられないでしょうから軽く受け流して下さい。今お茶でもお持ちしますので少々お待ちを」
そう言って住職の安徳寺ワタルは奥に消えて行った。

 それなのに俺はお茶も待たずに勝手に寺を出て来てしまった。それどころではない心境なのだ。
 確たる証拠があるわけではないが、俺に突然のひらめきが起こった。
 何かに開眼したというか、不思議なことだが瞬時でその意味を悟ることができたのだ。
 まるで誰かにテレパシーを送られたかのように…
 
 以前から不思議に思っていたこと。ことみが簡単に俺の元に転生してきたこと。
 彼女が事故か病気で死んだのでもなく、寿命をまっとうしたわけでもなく、いとも簡単に。。
 それに俺の転生についてもそうだ。そして美香の再婚にいたるまで。。

 ”全てに安徳寺ミツルの存在”が関係していたんだ!!”

 俺が思うに、この坊主は最初から実在しない人間なんだ。あるいは数百年前には生きていた人間かもしれない。
 とにかく奴は俺を転生させようとしていたんだ。なら奴がそこまでするのはなぜか?つまり安徳寺ミツルは俺の守護霊かもしれないってことだ。
 ということは、美香が奴と再婚したのも偶然ではなく必然ということになる。
 俺がかつて死んで生まれ変わったのに対して、ことみが眠っているうちに簡単に転生してしまったのも、全ては俺を救うための役割、俺を事故で死なせないための役割を奴は担っていたからだ。

 俺は公園のベンチにひとり座っている。じわっと涙が浮かんできた。
 感謝しなきゃな。。もう”クソ坊主”とか“奴”とか言ったら申し訳ない。

『その通りっ!!』

「え?( ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄;)」

 俺の脳内に突然話しかけてきた声。誰にも聞こえない、俺だけにしか聴こえない声。
 それはまさに安徳寺ミツルの声そのものだった。
 そしてその声はそれ以来、二度と聞こえてくることはなかった。
 ひょっとしたら、このことを俺に悟らせたのも彼だったのかもしれない。。

「パパーっ!」
 振り返ると美香がことみの手を引いてこっちに歩いて来るところだった。どうやらスーパーの買い物から帰宅途中らしい。
「ママにおやつ買ってもらったかい?」
「うんっ♪ことみが選んだの。ママが一個だけって」
「そっか。ことみは何を選んだのかな?」
「んとね、さきいか」

 (ノ _ _)ノコケッ!! なんで俺の好物を…(^□^;A

 とにかくこの先もどうなるかわからない。
 俺もことみもなぜ以前の記憶が消えないのかもわからない。
 一抹の不安は確かに残る。でも俺たちは与えられた運命をまっとうするしかない。
 何度生まれ変わっても、あるいは途中で人生が途絶えても。。

 そしてこのことは、俺とことみだけの永遠の秘密なのだ。

                   (完)
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