再び弄っちゃいました
「にしても、オーリキャルクとはね」
ウルが自力で立ち上がれるようになったところで、私はとりあえず彼女を椅子に座らせた。
「……オーリキャルクを知っているの?」
オーリキャルクというのはさっきウルが空間から取り出した純白の液体のことだ。
あれは天界の金属で、それで作られた武具は強靭で、ありとあらゆる穢れを浄化すると言われている。
その特徴としては、加工前は液体状であるということが挙げられるだろう。
オーリキャルクは精製に膨大な魔力と神獣の血を必要とすることと、加工にもとある秘術を用いなければならないことから非常に希少なものとされている。
ウルは空間からオーリキャルクを取り出しただけでなく、それを武器に一瞬で加工した。恐らくは鍛冶神の眷属なのだろう。
「知っているも何も、作れるし、加工もできるわ」
言って、収納空間への穴をあける。
その穴の向こうに、海のように果てしなく純白の液体が揺らめいていた。
「な――っ!?」
以前に武器作りっていうのを経験してみたくて色々やってたら出来てしまったのだ。これ神様に自慢しに行ったら天界に全く同じものがあるって言われて若干驚いた。
ちなみに、前駆者がいたことが悔しくて、その後私はさらに研究を重ねて新しい金属も生みだした。
「そうだ。ウルにこれ、プレゼントするわ」
私は収納空間の中から、それを取り出す。
握りこぶし大の鉱物だ。
その輝きは、極光のように、この世のありとあらゆる色を孕んでいる。
「な……なに、これ」
それをウルに手渡した。
彼女はそれを見て、愕然とする。
鍛冶神の眷属としての本能でそれの価値を悟ったのだろう。
「所有者の精神力に応じて形状を変えることのできる金属よ。私の場合、それを剣に変化させて限界まで伸ばしてみたら、月まで届いたわね」
夜空に向けて極光の剣が伸びて言って、少ししたら手ごたえがあったのだ。
私ですら、その時は一瞬何が起きたのか理解できなかったわね。
なんで空に手ごたえが? なんて首を傾げてしまったわ。
よくよく調べてみたら月に突き刺さっていたのだから、私もちょっとびっくりした。普通にこの星――人間界の天体情報はどこもほぼ同一なので、この星も地球と同じ大きさ――を一刀両断できる長さだ。
「それでいて重さは所有者の思うがまま。強度はオーリキャルクの九三倍。魂への干渉はもちろん可能ね」
余談だが、我が愛剣のソウルイーターは魂が食べられない時はよくこの鉱石をおやつ代わりに食べている。そのせいか、日に日に強度や切れ味が増しているように思える。
最近ではオーリキャルクの盾を紙か粘土のように切断できるようになった。
「ど、どうやってこんなものを……」
「別に生成方法くらい教えてあげてもいいけれど……鍛冶神の眷属としてのプライドは問題ないのかしら?」
「……っ!」
ウルがはっとする。
職人であれば、矜持の一つや二つ持っていて不思議じゃない。
むしろ矜持がなければ職人などとは呼べないだろう。
なんとなく、ウルは職人気質に見える。その辺りを刺激してみた。
「べ、別に貴方に教えてもらわなくても私ならこれくらいすぐに作れるようになるわよ!」
案の定だ。
ウルは強気に断言してみせた。
「そう? なら楽しみにしているわ」
「見てなさいよ! すぐなんだから、こんなの!」
こんなの、とは……言ってくれるわね。
私もこれ作るのは結構苦労したんだけれど。
「すぐ作れるなら、別にプレゼントしなくてもいいかしら?」
少し意地悪なことを言う。
どうにも、ウルを見ているとちょっとだけ嗜虐心がくすぐられてしまう。
「い、一度貰ったものは返さない主義なのよ!」
「そう」
そのまま鉱石を自分の収納空間にしまいこんでしまう。
もともと取り返すつもりなんてなかったから、潔く諦める。
そういえば……収納空間を作り出せるなんて、ウルって結構高位の天使なのかしら。
強い女の子も、いいものよね。
「それで、あの石、名前なんていうの?」
「名前……?」
そう言えば、考えたこともなかった。
「そうね……」
少し考えて、決める。
「なら――エリスカルコス、なんてどうかしら」
「エリスカルコス。エリスの銅……嫌な名前ね。っていうか、普通自分の名前をつける?」
私も自分の名前を入れるのはどうかと思ったけれど、しかしこれ以上に相応しい名前が思い浮かばなかったのだから仕方がない。
――と。
「ん……」
ベッドで眠っていたティナが小さな声をあげた。
目を覚ましたらしい。
「……ふぁ」
身体を興して、ティナが可愛らしい欠伸を一つ。
「目が覚めた、ティナ」
「はい……あれ、私いつのまに寝て……」
そして、ティナの視線とウルの視線があった。
「……どなたですか?」
「さっきから気になってたんだけど、この子、攫って来たの?」
「この子はウル。昨日少し話したと思うけれど、今日から一緒に行動することになるわ。先に教えておくけれど天使ね。そしてウル。彼女の名前はティナ。別に攫ってなんていないわ」
「天使様……ですか?」
「え、攫ったんじゃないの?」
ウルの中で私は危険人物どころか変態の扱いなのだろうか?
……ウルになにかお仕置きをしたくなった。
「ねえ、ティナ。今日は汗をかいてしまったでしょう? 新しい仲間との交流もかねて、温泉に入りましょうか?」
どんなお仕置きか?
決まってる。
†
「やっ、やめなさい、よ! こんっ、なの……セクハラよっ!? ふぁっ!?」
暴れるウルの身体をお湯の中でしっかりと抱きしめて、その身体のいたるところを指で撫でたりつついたりする。
「セクハラだなんて……これはただの交流よ。女の子同士の、ね」
「っ、このぉっ!」
空間から白い液体が溢れ出し、それは無数の槍となって私に殺到する。
それを空間から現れた虹色の鉱石で出来た盾が受け止めた。
「オーリキャルクじゃエリスカルコスは壊せないわよ?」
私の収納空間にはまだまだエリスカルコスが貯蔵されているのだ。
空間から魔獣形態のソウルイーターが首を出し、オーリスキャルクの槍を噛み砕いた。
「え……な、なに今のっ!?」
「私のペット」
オールスキャルクはそんなに美味しくないらしい。
不満げな唸り声を残してソウルイーターは収納空間の中に戻っていった。
多分口直しにエリスカルコスを食べているのでしょうね。
「しかし、私に槍を向けるなんて酷いわね。そんなウルには、念入りな交流が必要ね」
「ひゃぁっ!?」
ぺろりと、耳の裏を舐めた。
ああ……どうやらウルの弱点は耳らしい。
そうと分かれば……。
「もっと可愛い声、聞かせて?」
舌をもう一度耳の裏に這わせ、さらにそのまま耳翼を舐め上げた。
「きゃふっ……んっ、や、やめっ……やめなさい、よぉ……っ!」
「だーめ」
そのまま舌を耳の内側に差し込む。
「ひぁ――――っ!?」
一際強くウルが跳ね上がった。
その顔は真っ赤だ。
ふふ……。
「あ、あの……エリスさん。もうそろそろ、止めてあげたらどうでしょう……?」
ウルが弄られるのを見かねたのか、ティナが控えめにそう言って来た。
「あら、ティナも混ざりたい?」
湯を操って水流でティナの臍を撫でる。
「え、あ、ち、違います……ぁん!」
「そうよね。ティナだけ仲間はずれは駄目よね?」
ティナの身体も抱き寄せる。
こんな可愛い女の子を二人も抱きしめられるなんて、幸せだわ。
「さて、と。じゃあ二人とも……たっぷり、楽しみましょうか?」
「ぁっ、ん……や、もう……無理、無理よっ……これ以上、はっ……あん!」
「や、やめてくださ、いっ……エリ、スさ……ふっ、ぁ……んくっ……だ、駄目っ!」
†
ティナとウルはベッドの上で寝息を立てている。
どうやら、温泉で少し調子にのりすぎたらしい。夕食を食べた後、すぐに二人は眠ってしまった。
ティナはさっき少し寝ていたし、天使も人間にくらべてずっと体力があるはずなのだけれど……弄り過ぎたわね。明日、きちんとそこは謝ろう。
しかし……これでは、次また温泉に誘う時に警戒されそうね。
一緒に温泉に入ってくれなくなったらどうしよう。ウルなんて今日一緒に入るだけでも凄く拒絶反応見せてたのに。
まあそれについてはその時考えましょうか。
二〇〇メートルくらい先からこの宿に儀式魔術を放とうとしていた十人の魔術師を石化させる。そして、それぞれ両腕を砕いた。
その儀式魔術は明らかにこの宿ごと私達を葬ろうと思っているとしか思えないものだった。
魔術師もそれなりに優秀らしく、普通に撃たれていたら、天使とはいえウルですら無事ではなかったろう。人間のティナなんて言うまでもない。
私はともかく、ティナやウルを傷つけようというなら、それなりの代償は払ってもらわなくてはならないわ。
両腕で済ませるなんて、すこし温いだろうか?
いっそ完璧に全身砕いてしまおうかとも思ったが、これ以上そんな連中に構うのも馬鹿らしくて、意識を石化した魔術師達から外す。
さて、と。
ラノベの続きでも読みましょうか。
この後、暗殺者や野党を始めとした襲撃者が六度にわたってやってきたが、全員石化させて両腕を砕いた。
一夜でこれだけ襲撃者を送ってくるなんて……多分、今夜決着をつけるつもりだったんでしょうね。
けれど全員撃退されてしまった。
そろそろ新しいアクションがあるだろう。
……私としても、二人の女の子との百合色の生活を邪魔されるのは非常に不愉快なので、この辺りで害虫は駆除しておきたい。
もうエリスはなんなの。出来ないこととかないの!?
ちなみにオーリキャルクって、オリハルコンのことだったりします。
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