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下着の準備は整いました
「ほら、ティナ。この服なんて似合うんじゃない?」


 そういってティナの身体に薄黄色のワンピースを合わせてみる。


「そ、そうですか?」
「ええ。こっちのケープも合わせれば、すごくいいと思う」
「えっと……じゃあ、それでお願いします」
「分かったわ」


 私達は、ティナの服を買いにきていた。

 盗賊に襲われてからずっと着の身着のままなのだから当然のことだが、ティナは自分の服を今着ている一着しか持っていない。

 そしてティナの今着ている服は貴族の娘らしい高級そうなものなので、これからは普通の町娘のような服も必要になる。

 だから夜が明けて朝一番に、私はティナを町の服屋へと連れて行った。

 ……買い物は、女の子の気晴らしの代名詞みたいなものだしね。

 こう言う時は何も考えないで欲しいものを手にすればいいのよ。


「ああ、それと防寒の為にこのマントも買っておきましょう」


 ワンピースとケープ、それと厚い毛皮が裏打ちされた白いマントを手に持つ。


「他になにか欲しい服とかある? 服じゃなくても、装飾品とか、本とか、食べ物とか、なんでもいいわよ」
「いえ、大丈夫です。それよりも、お金が……」
「そんな心配はいらないわよ。これでもお金持ちなのよ、私」


 少なくともこの服屋にある服全部買いとってもまだ余裕があるくらいの貯えはある。


「遠慮しないで、我が儘を言いなさい。女の子なんだから着飾るの、嫌いじゃないでしょ?」
「それは……はい」
「なら、ほら。どれがいい? 構わないから、好きに選んで」


 どれだけ服を買っても私の収納空間に収めておけば問題はないし。


「……でも、」


 ティナはそれでもやっぱり遠慮しているようだ。


「ほら、」


 その頭を撫でる。


「私には甘えてもいいって、言ったでしょ?」


 笑いかける。


「……はい」
「よし。さ、女の子同士、お買い物しましょう?」


 小さくティナが頷く。


「私の服もティナに選んで欲しいわね。ねえ、どんな服がいいと思う?」
「え……で、でもそんな、もし似合わないの選んじゃったら」
「大丈夫よ」


 そんな心配、無用である。


「ティナみたいな可愛い子が選んだ服がださいわけないもの。例え野暮ったいものを選んでしまったとしても、安心して。きちんと私はそれを着こなして見せるから」
「……えっと、なら……エリスさんは綺麗な銀髪だから、黒い服を着たら映えると思うんです」


 綺麗、か。

 美少女に褒められると嬉しいわね。

 私としても自慢の髪の毛だから。

 ちなみに紅い紐でくくってポニーテールにしている。普通に垂らすと足元まで届いてしまうくらいに伸ばしているから。

 伸ばしている理由はとくにない。あえて言うなら、髪が長い方が落ち着く性分なのだ。

 私の髪は転生特典で常に最高の状態に保たれるから、手間もかからなくていいし。


「例えば?」
「――これ、なんてどうでしょう」


 言ってティナが手に取ったのは、黒いシャツ。元の世界で言うところのワイシャツによく似ている。


「へえ……私の好みにピッタリよ?」
「そうですか? なら、よかったです」


 ふにゃ、と。ティナの表情が緩む。

 ……その表情に、理性にひびが入った。

 まずいわね。

 今のは攻撃力高すぎるわ。神様? 悪魔? そんなの話にならない。

 私のこれまでの人生の中でティナはある意味最強の存在ね。


「……? どうかしましたか、エリスさん」
「――いえ、なんでもないわ」


 とりあえずティナに選んでもらった服は勝負服にしよう。いつかティナを口説くときに着ると決める。

 ……そういえば勝負といえば、もう一つあるわね。

 勝負下着。



 しまった。



 迂闊だったわ。

 私は自分の間抜けさ加減に嫌気が差した。

 そうよ。そうじゃない。

 どうしてもっと早く気付かなかったのだろう。

 服がないってことは……下着もないってこと。

 なら下着を買わなくちゃいけない。

 ……ティナに私好みの下着を着せるのも、夢じゃないということだ。

 ロマン。そこにロマンがあるのね。

 もう勝負下着とかどうでもいいわ。

 むしろ今が勝負の時かもしれない。


「ティナ」
「え……あの、エリスさん、そんな肩を掴んで、どうかしましたか?」
「下着も見ましょうね」
「……え、あ、それは、私が自分で見ます」


 そんなに顔を赤くしてどうしたのかしら。


「恥ずかしがることはないじゃない。私達、女同士だもの」
「そ、それはそうなんですけど」


 昨日の温泉でのことが尾を引いているらしい。

 やっぱり自重すべきだったろうか。

 急ぎ過ぎて好感度が減少したんじゃ本末転倒だ。


「さ、あっちに女性下着が置いてあるみたいだから、見に行きましょう」
「ま、待って下さい。やっぱり私一人で」
「そんなつれないことは言わないで」


 ティナの意見はやんわりと却下して、下着が置かれた一角に移動する。

 そして早速、ティナに是非ともはいてもらいたい――もとい、似合いそうな下着が目に留まる。


「ほらティナ。これ、どう?」
「えっと……なんですかその面積の小さいの……」


 私の選んだのは、ちょっと大胆な黒い下着。


「貴方の純情さにこの大人っぽい下着……まったく、罪な女の子ね、ティナは」
「は、はきませんよっ?」


 顔を真っ赤にしてティナが拒絶を示す。


「……はかないの?」


 もったいない。すごくいいと思うのに。

 例えば雨にでも濡れてワンピースが透けたときとか、あるいは強い風が吹いて舞い上がったスカートから、こんな下着が覗いた日には……ふふ。


「あれ、なにか寒気が……」
「どこからか、隙間風でも吹いてきてるのかしらね」


 とりあえずこの下着は秘密で買っておこう。

 いつかティナにはかせるために。


「それじゃあ、こんな下着は?」
「だ、だからどうしてそんな恥ずかしいものばかり選ぶんですかっ?」
「大丈夫大丈夫」
「な、何が大丈夫なんですか!?」
「あら、あっちで試着出来るみたいよ? 試着しましょう。さあ早速」
「いや、え……押さないでください、エリスさんっ」


 手早く適当に下着をいくつか見繕って、ティナを試着室に押し込む。

 もちろん私も一緒に入った。


「なんでエリスさんまで入ってくるんですか!?」
「私も試着しようかと思って」
「隣の試着室が空いてましたよ?」
「気のせいでしょう」


 にっこり微笑んで、私はティナににじり寄った。彼女はそれに合わせて後ろに下がろうとして……背中か壁に触れた。この狭い試着室に逃げ場などはない。


「エ、エリスさん……お、落ち着きましょう?」
「私は十分に落ち着いているわよ? さあ、試着の為に今着てる服は脱がないとね」
「き、きゃ、ちょっ、あの……エリスさん!? じ、自分で脱げますから!」
「手伝ってあげるわよ。ほーら」


 言って、手早くティナの服を脱がしてしまう。女の子の服を脱がすことで私の右に出る者はいないという自負があり。

 彼女の白い肌が露わになった。

 昨日、温泉に入る時にも思ったけれど、ティナの肌って綺麗よね。


「なんだか、エリスさん目がいやらしいです」


 ティナは両腕で身体を隠そうとするけれど、全然隠せていない。

 恥じらいは美少女の最高のスパイスだと思う。


「そんなことはないわ。それより、下着の試着をするのだし、今つけている下着はとらないと」


 今のティナの下着はシンプルな白いやつだ。


「い、いえっ! 自分で、今度こそ自分でやります!」


 これ以上私に身に纏うものを脱がされるのが恥ずかしいのか、ティナが私に背中をむけた。


「遠慮しなくていいわよ」
「遠慮とかじゃなくて、そのっ……!」


 後ろからティナの身体をしっかりと抱きしめてしまう。


「これで逃げられない」
「や、やめてください。エリスさん! あ、そこは……ん、きゃ……!」


 彼女が私の手の中からどうにか抜け出そうと身体をよじらせる。

 甘いわね、ティナ。そんなひ弱な抵抗じゃ私の手からは逃げられないわよ?

 抱きしめたまま、器用にティナの下着を剥がしていく。

 そして……、



「酷いです、エリスさん」
「ごめんなさい。謝るからそんな顔をしないで?」


 まだ赤い顔でこちらを睨むティナの頭を撫でる。


「もう私、お嫁にいけません」
「そうしたら私がもらってあげるから安心して」
「そんなこと言ったって誤魔化されませんよ。それに私達、女の子同士です」
「あら、恋に性別なんて関係ないわよ」
「……からかわないでくださいっ」


 あら。ふられちゃった。


「からかってなんていないのだけれどね」
「そういうことばっかりエリスさんは言って……」


 むくれたティナも可愛いわ。


「ふふ、ごめんなさい。お詫びに、朝食はティナの好きなものを食べましょう?」


 私達は町の通りを歩いていた。

 ティナはさっそく新しく買った服を着ている。うん、やっぱり似合うわね。

 店で買った数着の服と下着は私の収納空間にしまってある。

 ちなみに、試着室では普通に着せ替えっこをしただけだ。流石にあんなところでいきなり悪戯したりはしない。

 ただ着せ替えっこに時間をかけすぎたせいで、時間は既に朝食というよりブランチの時間になってしまっている。


「食べ物でつられるほど子供じゃありません……」
「つろうだなんて思ってないわ。ただのお詫びよ。それに、純粋にティナが美味しいものを食べる顔が見たいしね。人って、美味しいものを食べると、幸せな表情を浮かべるものでしょ?」


 言うと、ぽつりとティナが小さく口を開いた。


「……エリスさんは、なんだかズルいです」
「ズルい?」


 私はつねに正々堂々しているつもりだけれど。

 それに私がズルかったら、今頃ティナは私の手籠めにされてるし。


「たまにひどいことするけど、優しいから……嫌いになれません」
「……」


 思わず、立ち止まってしまう。

 ――ああ、もう。


「ティナは可愛いわねえ」


 道の往来であることなど気にせずに、ティナを思いきり抱きしめた。


「あう!? エリスさん、いきなり何をするんですかっ!」
「もうティナが悪いのよ。そんなに可愛いことを言うから」
「は、離して下さい。人が、人が見てます!」


 そうやって少しの間、私はティナを抱きしめ続けた。

 本当にどうして、こうも私の理性を狙い撃ちにしてくれるのかしらね、この子は。



 ……それにしても。

 昨夜のうちに町中に放っておいた使い魔が、私に、私達を監視する数人の人間の存在を教えてくれていた。

 なんのつもりかは知らないけれど、邪魔ね。

 ティナと私の愛の育みを覗き見るなんて、許せることじゃない。

 とりあえず遠隔で石化の魔術をかける。

 私のかけた石化だ。一流の魔術師にかかったとしても、この石化は一週間は解けることがないだろう。

 ついでに、その連中の記憶を盗み見る。

 ……どうやら、誰かに私達の監視を依頼されていたようだ。

 誰か、というのが誰かは分からない。

 恐らく依頼人と連中の間に何人もの連絡係がいるのだろう。末端からでは大本の顔は割り出せない。

 やろうと思えば別の手段で調べられなくもないけれど……少し面倒ね。

 まあ……いいわ。

 こうやって監視を潰せば、いずれ何かしらの反応を見せるでしょう。

 その時に始末すれば、万事解決だ。

 それに……。

 ティナの両親の言葉を思い出す。

 系譜の者に降りかかる不幸。

 それに、これが無関係とは思えない。

 少し慎重に動く必要があるだろう。
 
女の子の買い物って正直よくわからない。
だから変な所とかあるかもしれません。
その辺りは勘弁してください。

……ちょっと疑問なんだけど、R15ってドコまでやっていいのかな?


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