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その路を往きました
 ――目が覚めた。


「……ん」


 ゆっくりと……彼女達を起こさないように身体を起こす。

 左右に目を向ければ、大きなベッドの上、右側にティナとウルが、左側にナンナとアリーゼ、それにヨモツが穏やかな寝息を立てている。

 私を含め全員、シーツ以外に身に纏っているものはない。

 ……素敵な目覚めだ。

 微笑む。

 しかし……昨晩は少し、頑張りすぎてしまった。

 月葉が私の内側に戻り、負傷者を全員治療し、いろいろな後始末を神様や魔王達に押し付けて……そのまま、ベッドに直行。

 そして、たくさん甘えられて、甘えた。

 愛し合った。

 胸の奥が、温かい。

 ああ……よかった。

 この幸せを失わずに済んで、本当によかった。

 愛する彼女達の寝顔を見つめながら、自然と笑みが浮かんでくる。

 私は、彼女達となら、歩んで往ける。

 その確信があった。


「ん……」


 ふと、ティナの口から可愛らしい声が漏れた。

 それに合わせるように、皆から覚醒の気配を感じた。


「……おはようございます、エリスさん」


 一番最初に目を覚ましたティナが、私の手に指を絡めながら挨拶をしてくる。


「おはよう、ティナ。それに、皆も」
「ん、おはよ」
「おはよーございます……」
「……むぅ、朝か」
「ああ……」


 ティナに少し遅れて、他の皆も身体を起こした。


「ウル。寝癖、すごいことになってる」
「んー?」


 どうやらウルは、寝ざめがあまりよろしくないらしい。

 開いているのか閉じているのか分からないくらいに細くなっている彼女の目が、可愛らしい。

 寝癖のついた彼女の髪を、手櫛でそっと整える。


「んふふー」


 その感触が心地いいのか、ウルが猫撫で声を出す。

 また……なんとも襲いたくなるような……。


「ずるいですー」


 すると、ナンナが私の膝の上に頭をのっけてきた。

 どうやら、ナンナもすこし寝ぼけているらしい。


「私も頭撫でてくださいー」
「……ええ、いいわよ」


 もう片方の手で、ナンナの頭を撫でる。


「気持ちいい?」
「はい」


 嬉しそうに、ナンナが笑う。

 ……困った。

 ウルに続いて、ナンナまでこんな顔して……。


「まったく……寝起きからくっつきすぎじゃないのか?」


 アリーゼが呆れたように言う。


「……エリスもエリスだ。少しはしゃきっとしろ」
「可愛いのだもの。仕方がないじゃない」
「む……ならば、なんだ。二人は可愛いからそういうことをしているのか。それで、私にはなにもしないのか。それはどういう了見だ」


 ちょっと剥れるように、アリーゼが言う。

 これはまた……アリーゼ、嫉妬してるのかしら?

 だとしたら、さて両手は塞がってしまっているしどうしたものか……。


「もちろん、アリーゼだって可愛らしいわよ?」


 両手が塞がっているので、私は……唇をアリーゼと重ねることで、その気持ちを伝えることにした。


「……っ」


 アリーゼが顔を真っ赤にして、唇を離す。


「い、いきなりなにを――!」
「我も、頼む」


 すると、ヨモツが身を乗り出してきて、私とキスを交わした。

 あら……。

 なんだかちょっと、ヨモツが積極的だ。

 もちろん、それは嬉しいことなのだけれど。


「ヨ、ヨモツ……貴様!」


 アリーゼがヨモツを軽く睨みつける。


「これは、いけないことだったか?」
「そんなことはないわ」


 アリーゼはもちろん、ヨモツだって可愛いのだから。

 いくらでもキスしてあげるし、して欲しい。

 これから先、何度でもキスしたい。


「ヨモツってば、意外と大胆よね」
「そうなのだろうか?」


 本人に自覚はないらしい。


「エリスさん」


 ティナの声に呼ばれ、振り返る。

 と同時、唇を奪われた。

 そのまま、彼女の唇から舌が入りこんでくる。

 ……これは、また……随分とすごい。


「ん、ちゅ……」
「ふ……ん……ぁ」


 十数秒にも及ぶキスを終えて、そっと唇を離す。


「……負けてられませんから」


 にこりと、ティナが微笑む。

 対し、アリーゼがぱくぱくと驚いた様子で顔を赤くさせながら口を開閉させ、ヨモツはちょっとだけ眉を寄せていたりする。


「ずるい!」
「私もキスしますー」


 そこで、すっかり目を覚ましたウルとナンナが勢いよく身を寄せて来た。


「ちょっと待て! お前達は頭を撫でてもらったろう!」
「キスのがいいに決まってるでしょうが!」
「そうだそうだ!」


 アリーゼの指摘に二人が異議する。


「なら、あれだ! 私の頭も撫でろ、エリス!」


 え、そうなるの?

 ……いや、私はもちろん、構わないのだけれど。

 アリーゼの髪を、そっと撫でる。

 そうしながら、私にウルとナンナが続けざまにキスをしてきた。


「エリスさん。仲間はずれは嫌ですよ」
「ならば、我も……」
「ええ」


 ちょっと忙しい。

 アリーゼはまだまだ満足していなさそうな顔だが、一旦彼女から手を引いて、ティナとヨモツの頭を撫でる。


「私の頭を撫でている時間が短くないか?」
「そうかしら?」
「そうだ!」
「なら……ちゃんと今度埋め合わせをするから」
「む」


 アリーゼが少し黙る。


「……本当か?」
「ええ。デートにでも行きましょう?」
「……なら、いい」


 ふふっ。


「……それ、私達はどうなるの? 私達だってデート、したいんだけど?」


 ウルが尋ねて来た。

 他の皆も同意するように頷いている。


「じゃあ、アリーゼの次に、順番に、ね?」
「…………まあ、それで我慢するわ」


 その一瞬、アリーゼ以外の皆が互いに視線を鋭く交わす。

 アリーゼの次に順番に、と言ったから、アリーゼの次に誰が行くのか、今から水面下の争いが始まっているのだろう。

 難しいわね。

 何人もの子と付き合うって、難しい。

 誰が一番とかではない。

 優劣はない。

 私は、そういう順位付けとかは絶対しないし、皆をそれぞれ全力で愛する。

 でも……やっぱり、ほんの僅かでも、そういうぶつかりはある。

 例えは、キスをする長さ。

 例えば、デートの順番。

 そういうところで、ちょっとしたぶつかりが起きてしまう。

 ……ここは、私が頑張らなきゃいけないところね。

 近々、なにか解決手段を見つけなくては。

 難しいなあ。

 でも……幸せな難しさだ。

 この悩みの一つまでもが、愛おしいと思えてしまうのだから私もすっかり彼女達の虜だ。


「ねえ……皆」


 彼女達の視線が、私に向く。

 私はゆっくりと口を開いて、告げる。





「これからも……こんな私だけれど、よろしくね?」



一応完結!

色々な感慨がありますねえ。
うん。
でもまあ、まずは一つ。
今までお付き合いいただいた読者の皆様。
ありがとうございましたっ!

ちなみに番外編などを「新殿ファンディスク」という小説で公開していく予定です。
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