いろいろと屈服させてみました
こんにちは、皆!
私、とある私立高校に通う十七歳!
自分でも言うのもなんだけれど、成績は学年で一位だし、スポーツテストでも学校で一番なの。
学園祭で開かれたミスコンでは一位だったし、英検一級、漢検一級、数検一級なんかの、合わせて三十八の資格をとってるのだけれど、まあこのくらいは自慢するまでもないわね。
話せる言語も十三あるけれど、そのくらい現代に生きる人間なら普通普通!
……あ、もうブリっこ疲れたんで止めていい?
とりあえず、うん。私のことはいいや。
それよりもあれね、現状について語ろう。
ちょっとおふざけで古本屋で見つけた『悪魔を呼び出す六六六の方法』って本の通りに儀式やってみたら、変な黒い巨人が出てきた。
てへっ。流石私ね。こんな小汚い本一冊で世の悪魔崇拝者の羨む立場に君臨しちゃった。
で、話しを戻すけれど、なんか悪魔が偉そうに「貴様の魂と引き換えに願い事を三つ叶えてやろう」とか言い出したので、とりあえず陰陽神道仏教教会などなど、様々な国や文化や時代や民族の悪魔に効きそうな呪文を唱えてやったら、もだえ苦しみだした。
ざまあ。
まあ、これ以上苦しめるのはどうかと思い、聖人君子な私は呪文をくちずさむのを止めてあげた。
地面に横たわってひぃひぃ言って気持ち悪い悪魔の顔面を踏みつける。
踏み心地は、岩を踏みつけるみたい。
これなら街角でつっかかってきた不良の方がまだマシな踏み心地だったわね。
「ぐ……に、人間如きが……」
「悪魔が私みたいな美少女様に逆らうとか一京年早いのよね」
「八つ裂きにしてくれる……!」
悪魔が私の許可なく立ちあがろうとしたので、呪文再開。
「ぐぉおおおおおおおおおおおお!」
エクソシストもびっくりな私の悪魔退治の才能に、私自身戦慄しそうだわ。
ある程度苦しめたところで、呪文停止。
「とりあえず私の言葉に対する返事以外の行動をとったら、呪文再開するわよ」
「だ、誰が貴様の命令など」
「あー、はいはい」
呪文再開。
「ぐぉおおおおおおおおおおおお!」
さっきより長めに唱えておりまーす。
なんか悪魔の身体から煙があがりだしたので、そろそろマズいっぽい。
呪文を止める。
「さーて。次私に刃向かったら消滅するまで呪文続けるから。オーケー?」
こくこく、と悪魔が頷いた。
巨人が身体を震わせながら頷く、なんて光景はなかなかにレアだ。
「よしよし。じゃあとりあえず、あと六六五個の悪魔召喚の方法試すから待ってなさい?」
そうして私は、再び古本を開いた。
†
ふーむ。
私は先程、六六六個目の儀式を終えた。
夜中の人気のない山の中腹にある原っぱで儀式は行っていたのだが……現状とんでもないことになっている。
六六六体の悪魔が原っぱ一面にいて、私に平伏してます(はぁと)。
やばい、私もう世界を滅ぼせる。確実に。
中には全長二〇メートルはありそうなやつもいて、それを喚んだ時は、流石の私もほんの少し驚いたわ。
興味本位で始めた悪魔召喚の儀式がこんなことになろうとは……。
探究心とは恐ろしいものね。
「あ、あのう」
悪魔の中の一体――私が最初に喚んだやつが恐る恐る声をかけてきた。
「……ああ、勝手な行動したから、消すわね?」
「す、すみません! で、ですが何故我々はここに呼ばれたのでしょうか?」
……ふむ。
何故、ね。
「とりあえず今の命令違反には目を瞑ってあげる。感謝なさい」
「あ、ありがとうございます」
ああ、いいなあ。
悪魔がまるで餌を媚びる野良犬みたいな顔してる。
ペットにしようかしら。
……いや、やっぱり駄目だ。
ペットにするにはどれもこれも暑苦しいし、まず美しくない。
「とりあえずあんた達、私に絶対服従ね?」
『な――!?』
悪魔達の驚愕の声。
「ば、馬鹿な! そんなこと!」
「我々を何だと思っている!」
「悪魔が人間などに!」
「今すぐに魂まで焼き尽くしてくれる!」
あー。
うん、よーく分かった。
「あんたらさ――、」
にっこり。
「本気で消すよ?」
悪魔達が急におとなしくなった。
うん、どうしたのかな。そんなに皆して身体を震わせて。
ほら、そこの全長二〇メートル。あんたが震えると地震起きるから止めて。
「は、発言、よろしいでしょうか?」
例によって、最初の悪魔が片手を小さく挙げて窺いを立ててきた。
「うん、許す」
「あの……貴方様は、何者なのでしょうか?」
「ただの花も恥じらう十七歳よ?」
場が静寂につつまれた。
「……文句があるって顔してるわね?」
「っ、い、いえまさか! 見惚れていただけにございます!」
いい感じに調教されてるわあ。
「ですが、ならば何の特殊な力もなく、我々を?」
「悪い?」
「とんでもございません。感服いたしました!」
「あなたは物わかりのいい子だね。うん、この先も生かしておいてあげるよ」
「……あ、ありがとう、ございます」
ああ、いいね、いいよ。
その「元々生かすつもりなかったんだ」って恐怖の滲んだ顔。
周りの悪魔達の「なら俺達はいつか殺されるのか……?」って恐怖に染まった顔。
ぞくぞくする。
「それで、あの……悪魔は魂と引き換えに三つの願いごとを叶える力があるのですが……」
「うん? それってつまり、私から魂を取ろうってことかな?」
「ままままま、まさか! そんなことはしません!」
「そうよね」
危うく、前言を撤回しなきゃならないところだったよ。
一度約束したからには、ちゃんと生かさせてあげたいものね。じゃないと後味が悪い。
「それで、まあ皆には無償で私のお願いを――訂正するわ。自分自身の命の無事と引き換えに私のお願いを聞いてほしいの」
悪魔達が一斉に首を上下させた。
「皆、賢いのね。そういうの、嫌いじゃないわ」
それじゃあ、どうしようかしらね……。
言ってはみたものの、正直願うことなんて特には無い。
幸いにも、私には神が与えた超絶万能な能力の数々があるから……あ。
神?
……そうよ。何故すぐに思いつかなかったのかしら。
悪魔を喚んだら、次は神よね!
思い立ったが吉日。
「とりあえず神様、ここに喚んでみて?」
『ははっ!』
言うや、一斉に悪魔達の身体が発光し始めた。
どうやら神を召喚する権利を我先にと争っているらしい。私の好感度を少しでも稼ぎたいのだろう。
……いい光景だわ。
しばらく、その悪魔達の召喚競争を眺めていると……私の前に光の球体が現れた。
その中から、一人の白ひげを伸ばした老人が浮かび上がり、
「ワシを呼んだのは――」
「はい捕獲!」
『ははぁっ!』
「ぐぉぉぉおおおおお!?」
その老人を悪魔達が一斉に圧し潰す勢いで捕まえた。
「な、なんじゃ貴様ら!? って、なんじゃこれは。上級悪魔がなんでこんな大量に!?」
神らしき老人が悪魔達を見て悲鳴をあげた。
上級って……へえ、こいつら上級な悪魔なんだ。弱っちいのに。
あ、私が強すぎるだけか。えへっ。
「はろー、神様」
「な、なんなんじゃ貴様は! 一体これはなんのつもりじゃ!」
「うーん、流石に私も神様に通用しそうな呪文は知らないので、実力行使で行こうと思います」
私は近くに立っていた黒い鎧をまとった悪魔に手を伸ばした。目的は、その腰にさげられた黒塗りの剣だ。
「それ、貸して?」
「あ、いや。これは人間にはとても扱えるものでは――」
「いいから」
「はっ!」
少し語気を強めると、慌てて悪魔が剣を渡す。
その剣を握ると、なにか不思議な感覚が身体を包んだ。
なにこれ?
まるで私を拒絶するような……ううん、違う。私を喰おうとしてるの?
――ふうん。剣の分際で私に逆らうつもりなんだ?
「一度鋳潰して、鋳造し直した方がいい剣になるかしらね?」
ぽつりと私が呟くと、剣の抵抗が失せた。
「な……ソウルイーターが屈服した!?」
悪魔が何か言っているが、無視。
よし。
とりあえず私は剣――ソウルイーターというらしい――を神様の鼻先に突き立てた。
「ひぃっ!?」
恐れたところを見ると、どうやらこの剣は神様にも通用する一品のようだ。
なら話は早い。
「こんばんは、神様。ちょっと悪魔を屈服させたついでに神様を喚んでみちゃった女子高生です」
まずは自己紹介
「な……」
私の言葉に神様が周囲の悪魔達の顔を見る。
悪魔達はそろって視線を逸らした。
「……な、何者じゃ、娘」
「神様なら分かるんじゃないの?」
「万人のことを理解できるほど神は全能ではない。人の運命を変えたり世界のバランスを操作するのが神の仕事じゃし……」
案外神様も大したことないのね。
……でも、運命、世界、か。
その時、脳裏に閃くものがあった。
「神様、私、神様に一つお願いしたいなあ?」
「だ、誰が貴様のような――」
周りの悪魔達が「あ、このじじい馬鹿、何言ってんだ!」という顔をした。
が、時既に遅し。
とりあえず神様の伸ばされたひげをソウルイーターで切った。
「ぉ、ぉおおおおおおお! ワシの自慢のひげが!?」
「ひげで済んでよかったね、神様。でも次は、鼻、いくから」
「な――!」
神様の顔が一気に青ざめた。
「ね、願いとはなんじゃ!?」
うーん。話が早くて助かっちゃうな。
「私はね、まあもう分かってるだろうけど、何でも出来ちゃうのよ。こうやって神様を見下してる時点で、よくそれは分かってるでしょう?」
そう。私は何でも出来てしまう。
ハーレムを作ることも、街の不良を全員手下にするのも、株で世界有数の金持ちになるのも、今までどんなことでも成功を収めてきた。
ちなみにハーレムは可愛い女の子限定のね。
男とかありえないから。普通に愛でるなら可愛らしい女の子に決ってるじゃない。
で、そういうわけで、ともかく私は何でも出来てしまうのだ。
だからこそ……飽きも早い。
言わば、私にとっての人生なんてイージーモードのゲーム百周目くらいに簡単なものなのだ。
それでハマりこむことなんで出来るわけがない。
だからこその、お願いだ。
「だからねー、そろそろ新しい人生とか、初めてみたいわけよ」
「新しい、人生じゃと?」
「そう」
それも、テレビとかでよくやっているような、第二の人生を歩み出す、とかじゃない。
文字通り、新しい人生。
つまりは……転生だ。
「でもね、ただ転生するだけなんてつまらないじゃない?」
だから、いくつか条件のつけた転生をしてみたいのだ。
「とりあえず、私が今から言うこと全て、叶えて欲しいのよ」
「と、とりあえず言ってみよ」
「うん、それじゃあ――、」
まず、私の現在の能力より低い能力を得るのは有り得ない。
自分が自分以下になるなんて、私の美学に反する。
記憶を失うのも駄目だ。それは私じゃなくなる。
その辺り、いろいろと踏まえた上で……、
「転生する世界だけど、異世界、剣と魔法のファンタジーな世界。で、転生先では親とかがいたら面倒だから、それなりに生活の楽そうな孤児院に捨てられた設定にしといて。自分の名前とかは特に指定しないけれど、特別変な名前は嫌。容姿はもちろん絶世の美しさを備えてないと駄目よ。記憶は残しておいてね。能力に関しては、十歳になるころにはどんな能力においても現在の私以上になる程度じゃないと許さないわ。あと、魔法があるんだから、魔法の才能は……とりあえず世界一くらいが私に相応よね。あとは――、」
そんな感じで、百個くらいの条件をつらつらと神様に告げる。
「うん、まあそういうことで……いいかしら?」
「ば、馬鹿をいうな! そんな大量の願い――」
「いいかしら?」
ソウルイーターの刃を鼻にあてながらもう一度尋ねる。
「わ、わかった! 叶える!」
「ありがとう神様」
笑みながら、ソウルイーターを手放す。
神様が安堵と溜息をついた。
その耳元に口を近づけて、ささやく。
「でももし、今の願い事、一つでも叶えてくれなかったら……絶対に殺しにいくから。例え無能で不細工な救いようのないクズに転生させられたとしても、神様のこと、絶対に殺しに行くから……分かった?」
「わ、わか、分かった」
よし。
それじゃあ、早速行ってみようか!
「よろしくね、神様!」
「あ、ああ……とりあえずこの悪魔達をどけてはくれんか?」
「あ、そっか。よし、じゃあ皆、もう帰ってもらっていいわよー」
言うと、悪魔達が一斉に姿を消した。
……早いわね。
まあいいけど。
「くそう……こんな無茶苦茶な人間、初めてじゃわい」
「ご愁傷様。私みたいな神以上の存在を生み出した貴方が悪いのよ?」
「人間管理職についてる天使は全員クビにしてやる」
天使にそういう役職、あるんだ。
「それはいいから、早くしてもらっていいかしら?」
「う、うむ。では、始めるぞい……の前に、別れの挨拶をする相手とかはおらんのか?」
別れの挨拶?
思わず噴き出しそうになった。
「いるわけないでしょ。自分で言うのもなんだけれどね、私はこの世界では独走しすぎたわ。私には誰もついてこれない。だから、私に親しい人間なんて一人もいないわ」
私のことを世界一愛していると言った女の子も何人かいたが、すぐに姿を見せなくなった。
両親も一月ほど前に蒸発したばかりだ。私の才能が我が子ながら恐ろしかったのだろう。
「ま、次の人生はその辺り反省して、少しは周りに合わせて生きるようにするわ。あ、そうだ。私が転生したら、この世界から私のいた痕跡全て消しておいてもらっていいかしら? そっちの方がいろいろ、幸せになる人間も増えるでしょ」
「……そうか」
なにか複雑そうな表情で、神様がどこからか取り出した杖をかかげた。
「では……いくぞ」
「いつでもどーぞ」
そして。
私の一度目の人生は、終わった。
やべえ、始めちゃった(テヘッ)
ごめん、マジすみません、申し訳ありません、調子のりました。
若い衝動が止められなかったんだもの……。
とりあえず不定期更新。
生暖かい目で見守ってください。
とりあえず優先するのはSWと神喰らい
+注意+
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