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第2話
このー木なんの木、不思議な木〜。
目の前にはそんな歌が似合う、不思議な木が生えていた。
大きさも然ることながら、よく見てみると淡く光っているようにも見える。
歌子は周りを見渡し、人がいないことを確かめてから、よっこいしょと陸に上がった。

立派な木だ。一体樹齢何百年だろう?
いや、何千年?
歌子は呆けた顔をしながら木に触れる。

「温かい…」

指先から伝わる温かさ。冷えた体に心地いい。
それに気分が落ち着く気がした。
両腕を伸ばし、木を抱きしめるように体を寄せた。
安著のため息が漏れる。

ため息をこぼした瞬間、かさりと草が踏みしめられる音がした。
歌子は驚き、びくりと肩を揺らす。
かさり、かさり。足音がこちらに近づいてくる。
歌子はパニックになった。
裸だ、私は裸なんだ。どうする?どうする私!
自分の体を隠せるものとしたら、両腕しかない。
その二本の腕で、どこをどう隠す?
泉に飛び込むか?いや、その泉まで行く一瞬が命取りになるかもしれない。

歌子はしゃがみ込み自分の体を抱きかかえた。
誰でも何でもドンと来いやー!と自分に言い聞かせるように、…思いきり目を瞑った。
明るかった瞼の向こう側が暗くなる。誰かが目の前にいるのだ。
まじまじと自分は見られている。
もしも羞恥で死ねるなら、間違いなく自分は死んでいる。
そして歌子は自分の頬に息が吹きかかるのを感じた。

「ぎゃぁぁぁぁああ!!」

あ、もっと可愛らしく叫べば良かった!
心のどこかが冷静なことを自分で感じながら、歌子は叫んだ。
いや、でも変質者かもしれない。
下手に可愛くして襲われでもしたら…。
歌子は全身に鳥肌を立たせ、「嫌ぁ!」と手を振り上げた。
しかしその手はふわりと何かに触れる。

「…はい?」

目の前にはドアップの王子様…、ではなく巨大な。

「い、いぬ…」

大きな黒い犬は、尻尾を振りながら「わふっ」と鳴いた。


【恋愛遊牧民】


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