艦魂年代史 恋する乙女は大艦巨砲主義エピローグ 僕達の艦魂物語は終わらない(13/16)PDFで表示縦書き表示RDF


艦魂年代史 恋する乙女は大艦巨砲主義エピローグ 僕達の艦魂物語は終わらない
作:黒鉄大和



第十三章 ライバル再会


 大和達はそれぞれ目的のある駆逐艦達と別れ、残存十四名で翔輝の行方を捜そうとしたが、翔鶴に急遽止められた。
「街に出ちゃダメってどういう事ですかッ!?」
 すさまじい剣幕で激昂する大和に皆たじたじであった。
 それもそうだろう。ここまで来て翔輝と会える可能性が一パーセントでも低くなるのは絶対に嫌だ。
 頭に血を上らせて激怒する大和に、翔鶴は静かに理由を述べた。
「日本は敗戦国だ。とっくの昔に軍隊は解体され、帝国陸軍も、帝国海軍ももはや存在しない」
「それがどうしたって言うんですかッ!」
 翔鶴は静かに答えた。
「これらの状況を総合的に考えると――私達の格好はまずいだろう」
 翔鶴の言葉に皆「あ・・・」と声を漏らした。
 大和達は神の御前という事で正装として旧日本海軍の軍服を着ていたのだ。もちろんそれは今もである。
 翔鶴はため息を吐くと困ったように頬を掻いた。
「アメリカの目もある事も考えると、この格好で出歩けば逮捕されるぞ?」
 翔鶴の言葉に皆何も言い返せなくなってしまった。
「じゃ、じゃあ、とりあえず着替えようよぉ」
 隼鷹はそう言っている合間にも手荷物から着物を引っ張り出して着替えていた。翔輝に会いたくて仕方ない隼鷹の行動力は一線を凌駕していた。
 大和もようやく冷静になって着替え事になった。
「そうですね。武蔵――ってッ!? 早ッ!」
 振り返った時にはすでに武蔵は着替え終えていた。しかもちゃっかりと少し化粧も完了していた。
 白い肌の上からほんのりと化粧し、唇には薄い桜色の口紅が塗られている。
 武蔵の幼げな顔にはピッタリの最高の化粧であった。
 皆が呆然と見詰める中、すさまじい即応能力を発揮した武蔵は一言。
「・・・戦いは、すでに始まっている」
「かっこ良過ぎでありますぅ」
 感動する大鳳はまったく着替える気はないらしく、いまだ旧陸軍の軍服を着ていた。
「ちょっと大鳳ッ! 早く着替えなさいよッ!」
 飛鷹が慌てて着替えするよう言うが、大鳳は軍服を脱ぐのを嫌がってまったく着替えない。
「私はこの軍服以外着たくないでありますッ!」
 駄々を捏ねる大鳳を飛鷹と飛龍が説得するが、根っからの帝国陸軍崇拝主義者である大鳳は軍服を脱ごうとはしない。だが、
「なら、大鳳はここに残れ」
「え? そ、それは・・・」
 山城の言葉に急に勢いを失う大鳳。そんな大鳳に先輩からのとどめが、
「大鳳。その軍服を脱がないなら一人で留守番だ」
 翔鶴の最後通牒に大鳳は苦渋の決断を下した。
「わ、わかったでありますぅ・・・」
 大鳳は今までにないくらい悲しそうな顔で軍服を脱ぎ始めた。どれだけ陸軍思想で武装しているのだろうか。
 結局着替えるのにそれなりに手間取ってしまい、全員が着替え終わるのに十五分も掛かってしまった。
 ようやく街に繰り出せる事になった大和達は早速街に出た。
 初めて間近で見る日本の街並みに大和達は感動していた。
 活気に溢れた商店街に大和達は圧倒された。
 右も左も人と店。
 これが商店街なのかと大和達は嬉しそうに見回す。
「うわぁ・・・」
 キョロキョロとまわりを見回す大和達を見て、翔鶴はため息した。
「やめないか。田舎者にしか見えないぞ」
「まあ、いいじゃない。みんなが楽しめれば」
「・・・そういうお前もずいぶん楽しんでるようだが?」
 翔鶴は早速露店に夢中になっている飛龍を見詰めて再びため息した。
「この調子だと、長谷川に出会えるのはもう少し掛かりそうだな」
 翔鶴が苦笑いするが、笑顔で楽しむ大和達を見詰める。
 私服に着物を選んだのは間違いだった。
 まわりを見れば皆結構ラフな格好をしているのに、自分達はしっかりと着物を着ている。それも十四人も。その上田舎者っぽい行動をしているせいで目だってしょうがない。まわりが好奇の眼差しでじっと見詰めているのを肌で感じる。
 さすがに恥ずかしくなってきたので、翔鶴が号令を掛けようとした時、
「あああああぁぁぁぁぁッ!」
 すさまじい声に皆一斉に振り返ると、そこには自分達の着ている着物よりも高そうな着物を優雅に着こなした女性が美しい顔いっぱいで驚いていた。
 一見街娘に見えるが、よく見ると高貴な雰囲気をかもし出した女性に、大和は何か懐かしさを覚えた。
「あの人、どこで見たような・・・」
 大和が首を傾げている隣では、武蔵が目を見開いていた。
「・・・ま、まさか・・・」
「え? 武蔵知ってるの?」
 大和が疑問符を頭に浮かべていると、女性が勢い良く駆け寄って来た。
「な、何でですのッ!? 何でこんな所にあなた方がいるのですのッ!? あなたの本体は海の底でですのにッ! そもそも何で丘の上にいるんですのッ!? 何で年取ってないんですのッ!?」
 女性はもう大混乱のようにパニック状態で大和の肩を激しく揺らした。
「ちょ、ちょっと、何がどうなって・・・ッ!」
 驚く大和の横で、武蔵が唇を吊り上げた。
「・・・久しぶり。ずいぶん年を取ったわね――瑠璃」
『え?』
 武蔵の言葉に一同は呆然とする。
 一方、女性は武蔵を見詰めると不敵な笑みを浮かべた。
「お久しぶりですわ。武蔵様でしたっけ? 相変わらず埼玉県のような真っ平らな貧相なお胸をさらしておりますわね」
 女性――瑠璃は敵対心むき出しの笑みで武蔵に牽制した。
 しばしの沈黙の後、驚きが爆発した。
『えええええぇぇぇぇぇッ!?』
 全員が一斉に声を上げて驚いた。
 瑠璃は大和達を見詰めて大きくため息を吐いた。
「なぜあなた方がここにいるのですの? 死んだんじゃないんですの? そもそも何で陸の上にいるんですの?」
 瑠璃の質問も聞かず、大和達は唖然と瑠璃を見詰めた。
 最後に見た時とは見違えるほど大人らしく美しくなった瑠璃は大和達を呆れたように見詰めると、大きくため息を吐いた。
「武蔵様。この中で一番まともに答えられそうなあなたに説明をお願いしたいですわ」
「・・・御意」
 その後武蔵はまるで数学の証明のようにスラスラと説明した。瑠璃の質問にも的確に答え、答えづらい質問は見事に誘導して回避した。
 武蔵のコメンテーターのような見事な説明に瑠璃は疲れたようにため息を吐いて納得した。
「そうですの・・・厄介な事になったですわ」
 一人ぶつぶつと何事かをつぶやく瑠璃に、大和は満面の笑みを向けた。
「瑠璃さん、お久しぶりです。いつの間にか美しくなられてたんですね」
 大和の邪心のない笑みに、瑠璃は不機嫌そうに、
「そんな笑顔されても、翔輝様は誰にも渡しませんわ」
 翔輝という言葉に、大和は目を見開くと、慌てて瑠璃に詰め寄った。
「翔輝さんッ!? 翔輝さんは今どうされてるんですかッ!?」
「・・・そうだ。翔輝は?」
 大和と武蔵が詰め寄ると、瑠璃は悲しげに顔をゆがめた。
「瑠璃さん?」
「翔輝様は、航海中に不慮の事故で――」
「え・・・」
 戦慄が走った。
「戦国時代にタイムスリップしてしまったらしくて・・・帰って来れないのですわ」
 見事にずっコケる大和を見詰め、武蔵はため息した。
「・・・そんなバカらしい事」
「しかし、その後武勲を挙げて五六万石の大名に」
「・・・さすが、翔輝。すごい――って、本当の事を言いなさい」
 一瞬瑠璃のノリに乗ってしまった武蔵は慌てて瑠璃に真実を問うが、瑠璃はそんな武蔵を睨む。
「先ほど言ったはずですわ。翔輝様は誰にも渡さないって。だから何も教えませんわ」
 瑠璃はじっと一同を睨み、再びため息を吐いた。
「なんか、また数が増えてますわ」
 頭を抱えて瑠璃は立ち去る。
「あ、ちょっと待ってくださいッ!」
 大和達は慌てて瑠璃を追い掛ける。
 せっかく見つけた翔輝への手がかりを失う訳にはいかなかった。
 ぞろぞろとついて来る大和達を背中に感じ、瑠璃はイライラした。
「何でついて来るんですのッ!?」
 振り向きざまに激怒する瑠璃に、大和は一瞬驚くが、なんとか食い下がる。
「いいじゃないですか。瑠璃さんについて行かないと私達、翔輝さんに会えませんし」
「あなた方には絶対に翔輝様に会わせませんわッ!」
 瑠璃はそう叫ぶと脱兎の如く駆け出した。動きづらいはずの着物を着ているのに何という速度だろうか。
 小さくなっていく瑠璃に呆然としている一同に、翔鶴が叫ぶ。
「バカ者ッ! 瑠璃を見失うなッ!」
 翔鶴の怒号に我を取り戻した大和達は慌てて追尾した。
 先頭に立って大地を翔ける翔鶴を見詰め、山城は小さな笑みを浮かべた。


第十三章まで投稿しましたが、申し訳ありません。どうも今日中には終わりそうもありません(現在時間12月25日午後11時52分)。
という事で、申し訳ありませんが、続きは明日投稿します。
ですが、明日完結を目指したいんですが、この物語をどう終わらせればいいか迷っているので、明日中に終わらないという可能性もありますが、がんばって書き上げたいと思いますので・・・見捨てないでくださいね?











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