12月25日
今日はクリスマス。
街はカップルで埋め尽くされている。
そんな人々を私は正面から見ることはできなかった。
自分は一人だって認めたくなかったら。
「ら―ん!!」
「あ、園子」
「聞いて!!真さんが帰って来てくれるの」
「え!?良かったじゃない!!」
「だからね、今日のショッピングは」
「私は良いから、真さんとお幸せに」
作り笑顔。
園子が憎い訳じゃない。
むしろとっても嬉しい。
園子のこんなに嬉しそうな顔、久しぶりだったから。
けど、悲しい。
やっぱ自分は一人だって思い知らされた気がして。
「じゃあね、蘭」
「うん、バイバイ」
今年も一人でデパートに行く。
渡す相手なんかいないのに、プレゼントを買うつもり。
一番あげたい奴が、一番遠くにいるんだよね。
ねぇ、新一。
今、どこにいるの??
「蘭ねぇちゃん??」
「あ、コナン君」
コナン君は、博士と哀ちゃんと一緒にいた。
「どうしたの??」
「え??」
「泣いてるよ」
「え!?」
気がついたら、目から涙が零れていた。
涙が止まらないや。
どうしていつも私を一人にするの??
たまに帰ってきたら、じゃあなってどこかに行っちゃうし
私を置いていかないでよ。
「新一兄ちゃんのこと??」
「え、そ、そんなことないよ!!」
また作り笑い。
ダメ、涙が溢れる。
私はその場に座り込んだ。
人目なんか気にせず泣いていた。
コナン君は私の頭を何度も撫でてくれた。
ゴメンね、ありがとう。
ゴメンね、私が弱くて。
もっと強くないといけないのにね。
待つって決めたのにね。
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―阿笠邸
「灰原、やっぱりあの薬が欲しい」
コナンは頭を下げた。
さっきの蘭を見ていたら元に戻りたいと思ったのだろう。
「言ったでしょ、確かに今回のは一度元の姿になれば子供の姿に戻ることは無い」
「ああ、聞いた」
「けど、その確率は20%」
「分かってる」
「分かってない!!あなたは80%の確率で死ぬのよ!?それでも飲むの??」
「俺は、20%にかけたいんだ」
哀は返す言葉が無くなった。
薬は完成することができた。
だが、決して完璧なモノでは無かったのだ。
実験用のマウス10匹で実験したところ
2匹は生きていて、8匹は死んだ。
つまり、80%の確率で死んでしまうということ。
だから、哀はコナンに薬を渡すことを拒んでいた。
決して、コナンを元の姿に戻したくないという訳では無い。
コナンの存在を失いたくないのだ。
「分かって、工藤君」
「灰原??」
「あなたを、殺したくないの・・・これ以上もう人を殺したくないの」
「灰原は悪くない、俺が自分で決めたんだから」
「私が、あなたのことを失いたくないと言っても??」
「それは」
哀はコナンを見つめた。
「お願いだから、もう無茶をしないで。黒の組織が無くなったから、あなたや周りの人に危害を与えることは無いけど」
「だからこそ戻りたい」
「蘭さんはどうなるの??」
「・・・」
哀はコナンに薬が入ったビンを差し出した。
涙が零れそうだったから、そっぽを向きながら。
「分かったわ、もし・・・あなたが助からなかったら彼女への伝言は??」
「言いたいこと多すぎて分からねぇや」
「工藤君・・・」
「じゃあ、こう伝えて欲しい」
哀はその言葉を聞いて、涙を流した。
今まで我慢していた涙が、零れてしまった。
馬鹿ね。
どうしてあなたはそんなに恥ずかしいことを簡単に言えるの。
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ピンポーン
誰もいるはずのない家のインターホンを押してみる。
馬鹿だな、私。
毎年毎年こうやって、誰も出ない。
分かってるつもりだけど、分かりたくないんだもん。
『はい??』
「え・・・??」
『誰ですか??』
間違い無い・・・この声。
「新一!?」
『蘭か??ちょっと待ってて、今開けるから』
確かに新一だよね??
私は、持っていた紙袋をギュッと抱きしめた。
新一が帰ってきた。
「蘭」
「新一!!」
私は新一に抱きついた。
「お、おい!!」
「馬鹿!!なんで何にも教えてくれなかったの!?ずっとずっと待ってたんだから!!!」
「わ、悪ぃ」
「いっつもそう!!新一は何にも言わずに帰ってきて、何にも言わずにどっか行っちゃうの」
新一は蘭をギュッと抱き寄せた。
そして、頭を何度も撫でる。
「ゴメンな、蘭」
「っくしゅん」
蘭は寒さに肩を震わせる。
新一はそんな蘭を家に招きいれた。
蘭は真っ赤な顔してずっと泣いている。
しかも、顔を伏せて。
(どうしよう・・・蘭は泣き止まないし)
新一はもう一度自分の姿を鏡で確認する。
良かった、元の自分だ。
新一は胸を撫で下ろした。
これで・・・言える。
「ずっと、好きだった奴がいるんだ」
「え!?」
蘭は突然俺がそんなことを言うからびっくりして顔をあげた。
俺は、そんな蘭に微笑みかけた。
「そいつは、小さい頃からすっげぇ仲良くてさ・・・すっげぇ可愛くて、優しかったな」
「そうなんだ」
「でさ、俺が小学生の時にそいつ体育館の椅子をしまうとこに隠れて出れなくなっちゃって」
「え・・・」
「俺が見つけ出したって訳」
「新一・・・それって」
俺は蘭の言葉を無視して話を続けた。
恥ずかしくて蘭を見ることができない。
「でさ、高校2年生の時・・・トロピカルランドに一緒に行ったんだ」
「・・・」
「で、殺人事件に巻き込まれちゃって大変だったなあ」
「へぇ」
「しかもその後、黒ずくめの組織に薬飲まされちゃってさ」
「黒ずくめの組織って・・・この前捕まった」
「で、俺は幼児化しちゃった訳」
「幼児化??」
蘭は首をかしげる。
「で、その幼児化した俺の名前が」
「まさか・・・」
「江戸川コナン」
俺はニッコリ笑って見せた。
蘭はポロポロ涙を零しながら、スッと立ち上がった。
「新一・・・」
「俺は江戸川コナンだったんだ、ず―っとお前の傍にいた訳」
「何で・・・言ってくれなかったの??」
「悪ぃ、黒ずくめの組織にお前を巻き込みたくなかったんだ」
蘭は顔を真っ赤にして、新一に問いかける。
「で、誰が好きなの??」
「え!?」
「教えてよ」
蘭はニコニコ笑いながら新一の顔を覗き込んだ。
新一は、蘭を抱き寄せて耳元でささやく。
「・・・私も」
新一は蘭をギュッと抱きしめた。
そして、二人はそっとキスをする。
「あ、これ・・・クリスマスプレゼントだよ!!」
「マフラー??」
「うん、今年は寒いから」
新一はポケットから箱を取り出した。
蘭はその箱をまじまじと見つめる。
「・・・新一」
「なんだか分かったみてぇだな」
新一はそっと箱を開けてみせる。
蘭はその瞬間また泣き出した。
そして、窓に目をやる。
「見て、雪が降ってる!!」
「俺達のこと祝ってくれてるんだな」
「そうだね」
新一は、蘭の涙をそっと服で拭いてあげた。
そして、左手の薬指にそっとキスをする。
蘭は恥ずかしそうにうつむきながら、ボソっと呟いた。
「もう一回言って欲しいな」
「えっ!?」
新一は顔を真っ赤にして、アタフタする。
そんな新一を見て、蘭はクスクス笑う。
蘭は、窓を開けて月光に手のひらをかざした。
薬指の輝きがなんとも美しい。
愛してる
これからもずっと・・・
END
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