挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマークする場合はログインしてください。

目が覚めたら、食べ物が幼女になっていた。

 目が覚めたら、食べ物が幼女になっていた。
 それはもう世界中の食べ物が幼女になっていた。
 何を言っているか分からないと思うが、俺も未だに分かっていない。

「涼しいー!」
「ひえひえー!」
「賞味期限伸びちゃうぜヒャッハー!」
「あ、私切れかけてる」

 こんな声が冷蔵庫の中からするのだ。
 そして、冷蔵庫を開けると中に幼女がわんさかいる。
 通常サイズの幼女だ。どうやって入ってるのか分からないが。

「あ、やべ。こんな時間だ。そろそろバイト行かないと……」

 いつもは家を出る前に軽く食事をしていく。
 しかし、今は食べ物が幼女だ。
 どうやって食べたらいいのか皆目見当もつかない。
 そういえば、昨日夕食食べそびれたんだったっけ。
 うわぁ、お腹がグーグー鳴っている。
 とりあえず飲み物だけは元のままだったので、麦茶を飲んで空腹に耐えながら家を出る。

 電車の中もこれまたクレイジーだった。
 そこかしこから幼女の声が聞こえる。

「わーい、電車だー」
「ゆらゆらー」

 そんな彼女たちの声は、通勤客の鞄の中から聞こえる。
 愛妻弁当とか、パンとかおにぎりなんかが幼女になっているのだろう。
 鞄からツインテールの片方だけが飛び出してたりして、ホラー極まりない。
 見ないフリをしつつ職場に到着する。

「うわぁ……予想はしてたけどこれは……」

 俺の職場はコンビニだ。
 つまり、それだけ食材に囲まれている。
 コンビニの中は、まるでぎゅう詰めの保育園だった。

「って遅刻ギリギリだ。危ない危ない」

 急いで裏に回って勤怠を登録し、制服に着替えてレジに出る。

「いらっしゃいませー」

 お客さんが来た。
 サラリーマンの中年の男性だ。
 2人の幼女を連れている。
 通報しようか悩んでしまったが、これは食べ物なのだ。
 えーっと……バーコードどこだ?

「早くしてくれよ」
「す、すみません」
「はやくしてくれよー」
「くれよー」

 食べ物に急かされる日が来るとは思わなかった。
 あ、あった。おでこだ。
 おでこをスキャンする。
 120円ぐらいのおにぎりがレジに表示された。
 こいつおにぎりだったのか。
 もう1人は赤毛の洋風な子だから……あ、ナポリタンのスパゲティだったのね。

「あ、温めて」
「温め!?」

 ど、どうやるんだ。
 サイズは完全に普通の幼女だぞ。
 どうやって電子レンジに入れろと。

「どうした」
「か、かしこまりました」
「ほらー、チンしてチン!」
「ちんちんー!」
「きゃー! シャケちゃんのえっちー!」

 ええいやかましい。
 もうどうにでもなれ。
 そう思いながら、俺は幼女の手を持って電子レンジの方へ持って行った。




「あったかーい!」
「ほかほかー」
「ありがとうございました!」

 はぁ……大変だった。
 あのあと袋に詰め、フォークを入れてお渡しするだけで凄い精神が削れた。
 これを今日一日やらないといけないのか……。




「だーめー!」
「いーいーでーしょー!」

 うわ、何か食品幼女同士が揉めてる。
 仲裁に向かう。

「なんだよどうしたんだよ」
「この子がねー、えっちな本を読んでたのー」
「えーいーじゃんいーじゃん」

 あぁ、18禁のコーナーの本を立ち読みしてたのか。
 それはいけないな。

「だーめっ! なのっ!」
「そ、そうだな」
「えーでもでもじゃあ何であの子はいいの?」

 ごねる幼女。
 見ると、他にも18禁コーナーで立ち読みしている幼女がいる。

「あの子はいいのよ」
「なーんーでー」

 え、いいのかあの子は。
 どういう基準なんだ。

「あなた、若鶏の竜田揚げでしょ!」
「それがなによー」
「あの子は大人の豚さんから作られた肉まんなの! だからいいの!」

 ど、どういう基準なんだ。
 全く訳が分からんぞ。
 ……まぁいいや、この律儀な子に任せておくか。
 ちなみにこの子はカレーちゃんらしい。
 日本食なのにインドが元になってるからか、ちょっとハーフっぽい子だった。
 あっちにいるのは中国の子っぽいから、シュウマイちゃんかな?
 あ、麻婆豆腐ちゃんだったか。
 ……うん、頭が痛くなってきた。



「休憩入っていいぞー」
「じゃあ、先に失礼します」

 ようやく待ちにまった休憩だ。
 しかし、空腹を収める方法が分からない。
 とりあえずサンドイッチをチンして来たが。
 ……別に洋ロリが好きって訳じゃないぞ。

 うーん、どうやって食べればいいんだ。
 朝食を抜いたから腹減って仕方ない。

「やっほー!」
「や、やっほー」
「おにーさん元気ですかー!」
「元気、あんまりないかな」
「ノーノー! ご飯いっぱい食べて元気付けるー!」

 ご飯が食べられないから元気が出ないというのに。
 ええい、何でもいい。食べてやる!



 ……だめだ、俺には出来ない。
 これは悪い夢だ。
 きっと夢に違いない。

 それにしても、こうやって見ると幼女っていいなぁと思う。
 いや、ロリコンとかそういうのではなくてだな。
 何というか、愛したいというより愛でたいというか。

 ……あぁ、そうか。 
 俺は、この子を精一杯愛でていいんだ。
 そうすれば、ほら。
 何だか、お腹いっぱいの気分に……。




「おい、どうしたんだ」
「あ、先輩」
「何か朝から様子が変だな。大丈夫か?」
「すみません」

 少しの間、意識が飛んでいたらしい。
 目の前には、1つのサンドイッチが置かれていた。
 何か、悪い夢でも見ていたのだろうか。
 いや、アレはいい夢だったのかもしれない。
 そうだ。これが正常な世界なんだ。
 俺はサンドイッチを食べてペットボトルの水を飲み干すと、店内に再び出陣を……。

「だーかーらー、若鶏ちゃんは読んじゃだめなのー!」
「けちー!」

 俺はそっとレジからスタッフルームに引き返したのだった。

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ