学園騒動記ノイザーズヘヴン!(21/27)縦書き表示RDF


更新日は守りましたが、時間的に遅れました^^;

さて、今回はなんとか更新日どおりに更新できました、これも読者様の存在のおかげです。

さて、とうとう戦闘へと向かうミネハくんたちですが、戦闘に向かうためには何を……

では、お楽しみください^^
学園騒動記ノイザーズヘヴン!
作:天澄暢月



File.2 状況開始! 四季之夏の陣 中編1


 会場を飛び出し、隊長について走る。満腹ではないとはいえ、少々物の入った腹には若干の辛さがつきまとう。

 エレベーターも使わずに二階まで走る。ロビーを抜け階段を駆け上がり、廊下を疾駆しっくすることしばし。廊下の突き当たりに出ると、そこには重厚な二枚扉。両開き式のものだ。

 隊長はカードリーダーに自分のIDカードを通すと、ピーという機械音と共に扉が壁の中に差し込まれるように開く。

 もどかしそうに隊長はその扉の中に滑り込む。それに副長、浅井あさいさん、江神えがみさんも続き、最後に僕が入る。

 扉の中に入ると、まず火薬のような臭いが鼻につく。否、実際に火薬、もしくは硝煙しょうえんの臭いだ。

 その中は、武器庫だった。

 壁にはずらりといくつもの自動小銃が並び、武器庫の中央の棚には弾薬やマガジンがぎっしりと。部屋の最奥には、ハンドガンやリボルバーの類が掛けられていた。

 アサルトライフル、スナイパーライフル、ショットガンにグレネードランチャー、ロケットランチャーまでもが揃っている。一体どうなってるんだ、四季之学園。

 僕がそれに驚き停止していると、それに構わず隊長は壁のコンソールを操作。すると、今度は天井の一部が開き、そこからロッカーのようなものが下りてくる。そのロッカーらしきものにはプレートがついており、そこには第一班メンバーの名前が各々刻まれていた。

 ロッカーが床につくと、第一班メンバーは手早くロッカーを開け、そしてそこから黒の戦闘服やタクティカルベスト(マガジンを入れるポケットなどのついた、軍用のベスト)などを取り出しては着用していく。なんと慣れた手付きだろうか。

 それに対して、僕は何もできず、ただ立ち尽くす。無論僕にはそういうものを着た経験も無いし、そもそもここの勝手がまるで分からない。この場で覚えろといわれても無理な話だ。

 こんなとき、みんながいれば。

 たしか侍志たいしがこういうことには詳しかったはず。もし彼がいれば、真っ先に頼ったのに。

 でもここには、誰もいない。僕と、新しい仲間だけ。

 僕がそんな事を思ううちに皆が装備を整え、隊長が手招きしてくる。僕は思わぬ助け舟に暗い考えを捨てて隊長の元へ行く。すると彼は一つのロッカーを指差す。

 そのロッカーのプレートには、僕の名前が刻まれていた。

「事前に用意しておいた、お前専用のロッカーだ。既にベストとかの装備は入れてある。ここは俺ら第一班専用の武器庫だからな、こういう融通も利くんだ」

 にっと僕に笑いかける隊長。僕はといえば、ただただ呆気に取られるのみ。

「まあ話してる場合でもないな。手伝ってやる、そん中に入ってるもんを全部着な」

 言われ、ロッカーを開けてまずは真っ黒な戦闘服を取り出す。気にしている場合でもないので、ためらわずに制服を脱いでそれを着る。そういえば副長さんもためらわずに着替えていたな、といらぬことを思い出す。まるで庄野しょうのみたいだな、なんて自嘲が浮かんだ。

 いや、むしろ。

 庄野がいたらな、なんてことを思ってしまった。

 そんな思いも振り切り、次に出すのはタクティカルベスト。銃弾を入れるマガジンを収納させるポケットのたくさんついた、戦闘用のベストである。

 それを羽織り、とりあえずこれで服は完了。次は武器なのだが。

「さて、葛城かつらぎの武器はどうするか、だが、悩んでるような時間はないんだよな」

 そう言って隊長は壁に歩むと、そこから無造作に一丁のアサルトライフルを取る。

 それは木と鉄でできているもので、なんだろう、ニュースなどで見た覚えがある。

「AK-47。ロシアのミハイル・カラシニコフが開発した傑作銃だ。パーツの数が少なく、ひどく頑丈で動作不良もほとんどないんでな、世界中の紛争地帯で使われてるもんだ。ニュースで見たことはないか? アフガニスタンでなんとかラディンってのが色々やってたときなんかとかな」

 あぁ、確かにそうだ。中東のニュースがやっていると、決まって出てきた銃じゃないか。意外にもロシア製なんだ。

「まあ、構造と使用する銃弾の関係ですっげー反動が強いんだが、乱暴に扱ってもこいつなら壊れない。だからまあ、葛城には丁度いいだろ」

 ほれ、と放って渡される。それを受け取ると、鉄と木の重みがずっしりとくる。しかし何よりも、武器というものの重さが一番ずっしりときた。

「弾は7.62mm×39だ。弾の棚に書いてあるから、そこから取りな」

 棚に歩み寄ると、確かにそこにはそれらしきもの。弾は既にマガジン(弾倉・弾を込めておくもの)に込められている。まるでバナナみたいな形をしたマガジンだ。

「おう、それだな。ベストのポケットに入れとけ。もちろん、銃にも差しておくんだぞ」

 六つを予備としてポケットに押し込み、一つを銃に差し込む。これで撃てるのかな?

「あぁそうだ、そうだな、銃の本体からレバーみたいなのが飛び出してるだろ? それを手前に引くんだ。そうすると薬室に初弾が込められる。その状態なら撃てる」

 言われるままにレバーを引く。ガシャンと、薬室に弾の込められる音。

「よし、あと……そこのベレッタM92FS ブリガーディアってあるだろ。それ使え。女でも扱える代物だ。弾は9mmパラベラムってのを使うんだ」

 指示通りに棚から銃と弾を取る。

「おーし、準備完了だ。いくぞ」

 そう言って、隊長はジャラジャラと弾をぶら下げた機関銃を掲げる。重そうだ。

「これか? FN社製、M249 MINIMIだ。分隊支援火器とか軽機関銃っていう括りになるんだが、いい銃だぞ〜」

 嬉しそうに語る彼の腰には、なんだかゴツいリボルバー、いわゆるマグナムが提げられている。

 強そうだなぁ、と漠然ばくぜんと思った。


     ◇


 がちゃがちゃと銃器を鳴らせて再び廊下を走る。さすがにこの装備は重い。もう息が切れてきた。

「安心しなって。そのうち、これも楽に感じるようになるさ」

 そう軽く声を掛けてくる副長。彼女はライフルのような長い銃は持っておらず、なんだか身軽そうだ。ずるい。

 あれ、でも彼女は、狙撃員ではなかったか。

「ふ、副長、あの、スナイパーライフルってやつはないんですか?」

 そう僕が聞くと、彼女はあごに指をやって答える。

「あー、今回は狙撃してるような暇なさそうだからね。あたいは狙撃だけじゃないのよ」

 そう言って彼女は腰のハンドガン二丁を指し、そして身体のあちこちにあるナイフを示す。

「あたしはね、こいつも得意なのよ」

 つまりは、遠近両方こなしてくれるわけだ。心強い事この上ない。

 江神さんはといえば、息一つ切らさず、また汗もかかず、黙々と走り続けている。彼が持つのは僕のとはまた違うアサルトライフル。黒くて細いもので、どこか現代っぽいような印象。

 と、気付く。そういえば、浅井さんがいない。

「隊長! 浅井さんはどこに?!」

「あいつか? あいつはいつも使う武器を修理に出しててな、もうできてる頃だからって取りにいったぞ。それに、あいつは使う武器が武器だから、俺らとは少し違う場所から敵を叩く」

 僕よりも重い装備にもかかわらず、隊長は全く息の切れていない声で答えた。

 それにしても、浅井さんはどんな武器を使うんだ? 僕らと離れた位置で使うようなものということは、そんなにも大掛かりなんだろうか。武器庫では何やらロケットランチャーみたいなものを持っていたが、もしやそれ以上なのか。

「まあ、話は後だ。あれに乗るぞ」

 走りに走ってノイザーズヘヴンの外に出ると、入り口のすぐ前には一台のカバートラック。屋根つきの荷台のような場所には、既に多くの風紀課の人間が乗り込んでいた。

「悪い、遅れた! 第一班だ!」

 隊長はそう叫ぶと同時にトラックへ飛び乗り、それに副長と江神さんが続く。僕は一歩遅れてなんとか飛び乗る。

「出してくれ!」

 隊長の声と同時、カバートラックは低くエンジンをうならせ、戦いへと赴くべく走り出した。


     ◇


 トラックは順調に研究開発棟へと走る続け、その途中、隊長に会長からの連絡があった。

「ええ、はい、了解しました。では、また後ほど」

 隊長は通信を終えると、憂鬱ゆううつそうにため息をついた。

「隊長、会長はなんと」

 問い掛けたのは江神さん。彼はカバーに寄りかかるようにして腰掛け、その腕にはライフルを抱いている。

 隊長は江神さんの方を向くと、肩をすくめて言った。

「研究開発棟の、警備員がもう六割はやられたってよ。侵入者もそろそろ外に出るし、防衛線を突破されるのも時間の問題ときた。こりゃあ、俺らが何とかするほかなくなったな」

「そうですか……敵の勢力はどうなっていますか」

「全て歩兵だが、なにしろ数が多い。戦車がなかった分マシだが、それでも苦戦は強いられるだろうよ」

「火器はどのようなものが」

「ほとんどがアサルトライフルだ。突出したもんはねえ。機関銃があるにはあるらしいが、弾幕以上の効果はねえだろうな。だが問題は、異能者の存在だ」

「やはり、異能者ですか……どんな能力でしょうか」

「困った事に、物理障壁ぶつりしょうへきだ。ほとんどの火器が通じねえ。一部は抜けるらしいんだが、大口径じゃないと無理だろうな。貫通力よりも、衝撃力の方に弱いらしい」

「つまり豆鉄砲では歯が立たない、と。これは隊長のマグナムか、浅井お得意のアレしかなさそうですね」

「まあ、な。しかしだ、敵勢力の全てが結界の内側ってわけじゃねえ。突破口はいくらでもある」

「そうですね。やれるだけやって、さっさと終わらせましょう」

 二人の会話はそれで終わりのようだった。何やら不穏な単語がいくつも出てきたが、とにかく僕は全力で戦うほかない。

 そのまま無言が続き、次第に研究開発棟が近づいてきたようだ。豆のはじけるような銃声に、断続的な爆発音が徐々に大きくなってゆく。

 それに合わせて、トラック内の緊張も高まってきていた。腰掛ける風紀課の人間は皆硬直したように動かず、ぎゅっと手にした銃を握り締めている者もいる。その中には、首にかけた十字架にすがり、何かを祈る者までいた。

 研究開発棟は更に近づく。もはや人の叫び声や怒号までもが耳に入る距離だ。

 そこで、隊長が立ち上がる。

「よーし、みんな、よく聞け。俺たちは今から、俺たちの仲間が必死こいて研究した成果を持ち出し、あまつさえ俺らを倒すべく利用しようとしていやがる。もしそれが実現すれば、俺らは一気に窮地に立たされるだろう」

 手にした機関銃を振りかざし、隊長はそう言う。

「そしてただでさえ向こうには異能者が多い、技術で立ち向かう俺らにはもはや打つ手はなくなるだろう。だが、ここで俺らが奴等を叩きのめし、二度とここに近寄れないくらいに恐怖を味あわせてやれば、そんな心配もなくなり、必ず俺らは奴等に勝利できるだろう。わかるか? この先の戦況は、俺たちにかかっている」

 うすうす気づいていたのだが、生徒議会には異能者が多く、生徒会には異能者が少ない。きっと、だから僕ら八人は生徒会に入ることができたのだろう。なんとしても、異能者の力がほしいのだ。

 だからこそ、ここで生徒議会に研究成果を奪われるわけにはいかない。

「分かった奴は、ここで生徒議会の奴らを完全に叩くべく全力で突撃しろ。奴らも研究開発棟の侵入者を回収に向かうはずだ、それだけは絶対に阻止する。いいな?」

 ウオオオオオと、巨大な応答。その叫びは、響きに響く戦場の爆音よりもなお大きい。

 そして、僕らはとうとう、戦場の只中へとやってきていた。

「いい返事だ! よし、野郎共、準備はいいな!?」

 ウオオオオオ!

「現刻より、状況を開始する!」

 隊長のその叫びと同時、風紀課の勢力はトラックより飛び出し、弾丸飛び交う戦場へと駆け出した。





──学園騒動記ノイザーズヘヴン!

────File.2 状況開始! 四季之夏の陣 中編2 へ続く


─次回予告─

学園騒動記ノイザーズヘヴン!
File.2 状況開始! 四季之夏の陣 中編2
11月3日公開予定

※執筆状況により、数日前後する場合があります。











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