悲劇は悲劇らしく終わりを迎えて
家に帰ると、私宛に郵便物が2件来ていた。
最近はそう珍しくもない。大学のオープンキャンバスの案内とか、資料とか、そんなのをいっぱい頼んだからだ。
その中に1つだけ、黒い大きな封筒で宛名しか描かれていないものが届いていた。
部屋に持ち帰って、カッターで口を開く。
そのとたんに、中から真っ黒い羽がいくつも出てきて気味が悪いと思いつつも、私は中に入っていたぶ厚い何かをとりだした。
「せ・・・説明書?何の?」
ゲームなんてここ3年は触ってない。
今更?いや、母さんが頼んだのかも知れない。でも、それにしても可笑しい。何で私宛にこんなものが届くんだろう。
会社の名前も記載されていない。ただ、紅い表紙が異常に印象的だった。
時刻は夕方5時を回った頃だった。
外は異様な程に不気味だった。いつもなら公園で遊んでいるはずの子供が、今日はいない。
それはおろか、鴉も雀も飛んでない。飛行機も、車も、全く。
物音もしない。私が動く音だけが、妙に響く。
それがこの前まで読んでいた本にやたらとシンクロして、気味が悪い。
私はとりあえずそれを開いて見た。
「うわっ!」
そこには3人の写真が載っていた。
男が2人、女が1人。どれも、顔の歪んだ写真で、原型がほとんど分からない。
次をめくる。そこにはなにやらルールが記されていた。
「・・・・・・何、これ。」
嫌な予感がした。
誰から送られた?何のために?中身自体可笑しい。ゲームの取説なんかじゃない。
その時だった。
ドンドン!と大きなノック音がして、私は振り返った。
母さんが立っていた。
「ど、どうしたの?」
「う・・・・・・・・・・・・・・・・・うっ・・・・・・・・・・・・・う゛ぅぅぅ!!」
「・・!!?」
口から唾液が零れ出た。
私はそれをみて悲鳴を上げようとしたが、それよりも先に目の前に居た母さんが悲鳴にも似た雄叫びを上げた。
『ウァァァッ・・・・・・ヒヒヒィィ・・・・・!!』
頭の中は、まだ錯乱状態だった。
何が起こったか理解できないうちに、母さんが可笑しくなった。
『アアアアアアアァッ!!』
苦しいのか、悲しいのか、ただ単に叫んでいるのか。
その表情はゆがみ、目だけが笑っている。
私は立ち上がった。
母さんの目は尋常じゃない程、真っ黒だった。
白目がない。私は窓を開けようと、必死になって机に上がる。
『うがぁぁあああああああああああああああああああああああっ!!』
窓からためらいなく飛び降りると、私は茂みのあたりに落ちた。
幸い怪我はない。だが、上から母さん・・・いや、化け物がそのまま飛び降りてきた。
「うわっ!」
『グアァッ!!ヒィィァァァッ!!』
「よっ寄るなっ!」
とりあえず駈け出す。
玄関に入って鍵を閉めて、リビングからいすを持ってきて置いた。
そのまま部屋に戻って、手頃なものを持ってスニーカーを履く。
「・・・あきらかにこれが可笑しいんだよ。」
一応、その説明書とやらも、一緒に。
下の方でものすごい破壊音が聞こえた。
「えぇぇっ!?」
ガラスをたたき割って、化け物が入ってきた。
私は急いで勝手口から出ると、玄関とは反対方向に逃げた。
後ろで化け物が『ヒヒヒィィッ!!』と奇怪な雄叫びを上げて、走ってきている。
「何あれ、何?ホントに・・・。」
家と家の間の垣根をくぐって、何とか路地に出た。
その時だった。
『グェェ・・・・・・ウエェァァッ!!』
「うわぁぁっ!」
垣根の間から手が数え切れないぐらい飛び出してきた。
私はそのまま右に曲がってとりあえず自分の安全だけを確保するコトに重点を置いた。
「どっか・・・っ・・・逃げる場所!!!」
説明書を開いてみた。
すると地図らしきものの真ん中あたりに小学校の地図があって「休憩所」と記されていた。
「あやしっ!めっちゃ怪しい!」
ここから走って3分だろうか。
私はとりあえず足を進めた。
「陸上部でよかった・・・・!!」
『ヒャァァァッ!!』
「うわぁぁっ!!」
前につんのめって、肘をすりむいた。
振り返るのが怖くて、私はそのまま走った。
『アヒャヒャッ・・・・・・・ウヒャァァッ!!』
「追いかけて来ないでよ!!・・・て、えぇっ!?」
目の前の曲がり角からナイフが飛んできた。
「死ぬぅぅっ!!」
頭を抱えて、走り抜ける。
怒ったように雄叫びを上げて、化け物がすごいスピードで走ってきた。
「大丈夫、大丈夫・・・絶対追いつかれない!!」
そのまま走っていると、だんだん楽になってきた。
状況はまだいまいち把握できていないが、とりあえずヘンなことに巻き込まれたのは確かだった。
振り返るとたまに、人の気配がする。
足を止めたら死ぬ。
そう思ったら足を止めることは許されなかった。
続く |