犠牲者
もう遅かったりするかも知れないが、取りあえず走った。
地図の仲間の点はだんだんと早く点滅し始め、危険を知らせていた。
海沿いの港まであと2キロ。僕らはそれでも走り続けていた。
「急がないと・・・・死んじまうぞ!!」
「解ってるよ!!あと少しだから・・・・頑張ろっ!!」
足がおかしくなってもつれそうになった。急がないと!と思っていても、足はそんなに距離を縮めてくれない。隣の斗夜はなんの苦もなく走っていた。ただ焦りで不安そうなようなじれったいような顔をしながらただ黙々と走り続けた。
「斗夜・・・持久力あるね。」
「あぁ、何せ陸上部の長距離エースだからな。」
そういうと、彼は少しだけ笑った。
ゾロゾロと集まってくる変な人たちを前に、私は泣きそうだった。
知らない説明書を持って、少しコンビニに行こうと思ってただけなのに、何でこんな目に遭わなきゃならないんだろう。
私は説明書を海に投げ捨てた。だから、もう狙われないはずなのに・・・・。
そう考えていると、どこからか声がした。
「捨テテモ無駄ダ。」「捨テル事ナド出来ナイ。」「オ前ハ使用者ダ。」「我等ノ敵ダ。」
コロス。
私は右のポケットに手を突っ込んだ。
すると、その手に触れたのはさっきまで白い表紙で海に投げ捨てたはずの説明書だった。おまけに真っ赤に染まった表紙がその怨念を表している。
「いやぁぁぁぁぁっ!!!」
私は力の限り叫んだ。仲間は着々と近付いてきているけれど・・・間に合いそうにもない。背伸びして周りを見ても、逃げ切れる道などなかった。
「コロス・・・・・・・・・・コロスッ!!!!!」
みんなが一斉に飛び掛かってきた。
私はうめき声を上げる暇もなく押し倒された。
「たっ・・・・・・・すけ・・・・・・て・・・・・・・・・・っぐぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「あそこだ!!」
僕達は近寄れないため、近くの高い場所からその光景をみた。
助けるためにそこから飛び降りようとしたが、甲高い叫び声が聞こえて、目を見張った。
「うっ・・・・・・虚が人を食ってやがる・・・・・・。」
ビシャビシャッ!!と血の飛ぶ音がした。そして骨がバキッと折れる音。
虚の嬉しそうな笑い声・・・・・・・。
「うっ・・・・・・ゲホッ!!」
僕は堪えられなくなって、少し離れた場所に吐いた。涙も一緒に出た。でも何が悲しくて、何が気持ち悪いのか解らない。この説明書のせいで、もう一人の命が失われてしまった。
斗夜は顔を真っ青にしてその光景を見ていた。
「オレ達も捕まるとああなるんだな・・・・。」
そういって自分の説明書を取り出すと、新たな追加ページを見つけ、僕に見せた。
「更に走ることになりそうだ。」
この場所から少し離れた林の中に、オレンジ色に光る点があった。「最終地点」とだけ表示されていた。
下にいた虚達はいなくなっていた。ただ彼女の無惨な血の後だけが残っていた。
「走ろう。効果が切れるまであと15分しかないんだ。」
「そうだな。・・・・・いつまでもここにいて落ち込んでるわけにもいかねぇ。」
そういって、階段を駆け下りた。
「ヒヒヒヒヒヒッ・・・・・・・・ミツケタゾ・・・・・人間っ!!!!」
知らない間に、虚が追いかけて来ているだなんて知らずに。
そう、彼女の遺体から奪い取った説明書に僕達の位置が現れているから・・・・また一人、また一人と集まって、僕達を付けていた。
続く |