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警察だって頑張ってるんだから税金泥棒とか言ってやるな
作:圃劉成布


「へぇなになに 警察庁の同心、汚職を働き逮捕……先月も同心によるストーカー殺人事件が起きたばかりのため、警察庁はこのことを重く受け止め再発防止に努めるつもりである……」


今日も万事屋でいつものように、この3人の時は流れる。極めてゆっくりの時間。


神楽はソファーに腰掛けてどこぞの批評家みたいなしかめっ面して新聞を音読している。


「最近多いですねー同心による犯罪 この先もこういうの多いと思いますよ」新八もテレビのワイドショーを観ながら流すように言う。


「あァ新八、お前が言うと妙に説得力あるわな テメェの家族が真選組(けいさつ)にストーカーされ続けてんだから」銀時も、デスクに足を置いて爪を切りながら、流すように言う。


「ホント……幕府も警察庁も…腐ってますよね このままだと汚職同心とかどんどん増えていきますよ」


「あっちは痛くも痒くもねェんだろうよ補充はいくらでもあるし」


「汚職同心も汚職同心でギャングとして過ごすセカンドライフが待ってるヨ 死んだとしても殉職した先輩と和解できるし一石二鳥アル」


「神楽ちゃんそれちょっと意味違う…ってか汚職同心はギャングにならないからね?カリメロとかにもならないからね?」



ピンポーン



と、そこにかなり絶妙なタイミングで玄関の呼び鈴が鳴る。



「ハーイ いま出まーす」そう言って新八は玄関へと向かう。銀時や神楽は「習性化した」とか「パシリの鑑」とか言ってるが新八は無視だ。どうせ今日もツッコミまくらなきゃいけないだろうから体力温存ってとこだろうか。いや、ツッコミ力温存?


ガララと開いた扉の先にいたのは……先ほど話題に上がった「同心」




〜◆警察だって頑張ってるんだから税金泥棒とか言ってやるな◆〜




男の名は剃石(それいし)宮得(みやのり)。腰に二本の十手を刺し、バッジを胸に着けている正真正銘同心。噂をすれば何とやらと言うことだろう。見た目は20代前半と言ったところだが、着物は若者のようにルーズじゃないし、髪色は金髪だが、髪型はいかにもポマードでガチガチに固めてそうなオールバック。極めつけに切れ目に三白眼。おおよそ若者らしくない。


「金さえ積めばなんでもしてくれる…万事屋と聞いて来た……さっそくだがキミらに頼みたいことがある。」剃石はそう言っておもむろに、懐から何かを取り出そうとする。


何を取り出すか、各々妄想をめぐらせているようで…まず新八のケース。「犯人捜査の依頼かな? 写真に写ってる人を張り込めとか…」


銀時のケース。「やっぱまず金だろうな……前払いして依頼内容は口で話すんだろう…って言うか早く金よこせよ税金泥棒!」


神楽のケース。「やっぱまず酢昆布ファミリーパックと海苔の佃煮二瓶アルナ……前払いして依頼内容は口で話すつもりアルきっと…って言うかさっさとよこせよ税金泥棒!」


「どっちもありえねぇよォォ!! それ完璧お前らの願望だろうが!!」新八は妄想内でツッコむ。


そして…剃石が取り出したのは……!





櫛。




そして、剃石は無言で髪を結う。



「「「依頼を言えェェェェ!!」」」



三人が三人共机に身を乗り出して吼えた。



「おっと…すまない……依頼と言うのはだな………私が今回追っている犯人を捕まえるまで…………この男の妨害をして欲しい」そして剃石は再び懐からなんか取り出す。


今度取り出したのは写真だ。そこに写っているのは剃石とは真逆の男。髪型はダラしないオレンジ色のパーマ。着物も着崩してるし瞳は橙色。コレ明らかにカラコンだ。



「コイツは私と同じ同心「琴針(ことはり)柑橘郎(かんきつろう)」…私と同じく先月強盗殺人事件を起こし逃亡中の犯人を追っている……コイツの邪魔をして、コイツの信用を落としてくれればそれでいい………その間に私は犯人を捕まえ、奴は信用がガタ落ちて私は昇進だ…………」剃石は、言い終えた所でクククと気味悪い笑い声を浮かべる。



「奴は今日この辺りをパトロールする…奴のパトカーをパンクさせるとかバッジ奪うとか何やってくれてもいいからとにかく奴に汚名を着せろ 犯人を捕まえて俺に引き渡すだけでもいい!」



「……堕ちたねェ同心も…まぁ依頼だからやりますけど?俺らには火の粉が降りかからんようにしてくださいよ」剃石の言葉に、銀時は皮肉を漏らす。


「…黙れ とにかく金は置いてゆく では頼むぞ」剃石はそう言って机の上に札束を幾束か置いて、万事屋をここに来た時よりも速い速度で風を切って出て行った。




「いいんですか銀さん あんな依頼受けて」剃石が去ってまず第一声を発したのは新八。


蔑むような目で銀時を見ながら言う。



「この金汚い金かもしれないネ」神楽もまた、金を見ながら司会者みたいな口調で言う。


「バカヤロー 同心に限ってそんな滅多なことァねぇよ 考えすぎ考えすぎ」


「でも銀さん 最近汚職同心とかも多いですし これも案外経費から落ちて来た金かもしれませんよ」



「あんな絵に書いたような真面目ちゃんにできるわけねぇだろうがンなこと それに……」


「頼もォォォォ!!」


と、そこに飛び込むは甲高い。そしてドタバタと掛ける足音。こちらに向かってきている。



そして、やたらとハイなテンションを維持しながら、男は来た。



無言のまま、無意味にポーズを取る男に対し、万事屋メンバーは、ただただ白けるだけだったが、その男。どこかで見たことがある。



有名人って面じゃあないし、指名手配犯ってわけでもない。でも最近顔を見たような感じなのだ。だからと言って知人でもないが。



「髪型はオレンジ色のパーマだな」


「着物も着崩してますね」


「瞳は橙色のにカラコンネ」


剃石の写真のイメージと、男は一致した。


「琴針柑橘郎っていうモンだ!! すまんが依頼したいことがある!」



「「「写真の男だァァァァ!!!!」」」



三人の間に、今まさにサイクロンが渦巻く。どれくらい渦巻いてるかっていうと、飛行機の屋根が飛ぶくらい。


「どうすんですか銀さん!! この人の依頼って多分!」


「今、逃亡中の犯人を追ってるんで時間がないんだ! お前らは何も言わずにこの男「剃石宮得」を妨害してくれ 奴は今日この辺りをパトロールする…奴のパトカーをパンクさせるとかバッジ奪うとか何やってくれてもいいからとにかく奴に汚名を着せろ 犯人を捕まえて俺に引き渡すだけでもいい! じゃあコレ金な!もういくぜ!!」


琴針もまた、そう言って机の上に札束を幾束か置いて、万事屋をここに来た時よりも速い速度で風を切って出て行った。


「オイィィィ待て!! お前…」


銀時の叫びは琴針には届かなかった。その数秒後、すぐ下の方でパトカーが走り去ってゆく音だけが虚しく、耳に焼き付くだけであった。



「……」






「チキショォォォォォォォォォォ!!!」


数分後、全速力で原チャリを走らせる銀時の姿が。後部座席には例によって新八と神楽の姿もあった。


「もう知るかァァァ!!犯人捕まえりゃあいいんだろォォォ!捕まえて先にあった奴に引き渡しな!! もう早い者勝ちィィィ!」もう皆ヤケクソだ。ただヤケクソに原チャリを走らせる。


「そこの原チャリ!止まりなさーい」


と、そこに突然停車中のパトカーが銀時たちにメガホンで静止を呼びかける。見たところその同心は女のようだ。紫色のやや長めのポニーテールに、美人でスタイルはいいが、表情は固い。銀時は舌打ちしながらもとりあえずは原チャリを止める。


「今のスピード 明らかにスピード違反ですよ 減点としますので……」


その同心が切符を切ろうとした次の瞬間。



ドガァアン


突如響き渡る爆発音。そしてその煙幕に紛れて逃げようとする人影が一人。


「アレは指名手配中の爆弾魔!!」



「こんな白昼堂々と……!」


女同心は即座に車内から無線を取り出すが、その合間を縫って銀時たちは原チャリを再び走らせる。



「犯人ンンンンン!! 観念しろォォォォォ オ!?」と、道が左右に分かれた角に差し掛かった瞬間、その左右からほぼ同時に、二人の同心が現れた。


「「犯人ンンン!! 往生(観念)しろォォォォォォォ!! よくも俺のパトカーをォォォォ!!」」


言葉は微妙に違うにせよ、ほぼ同じことを言ってる。


その二人、先ほど万事屋に来た「剃石」と「琴針」だ。



右から剃石、左から琴針、後ろから万事屋ファミリー。剃石、琴針、共に何故か徒歩。そして万事屋ファミリーの原チャリは全速力。



「銀さんンンン!!ぶつかりますよォォォォ」


新八がそう言ったときには遅かった。3勢力は衝突。ガシャアンと耳を劈く音と共に、5人と1機の原チャリは宙を舞った。



例によって一番最初に原チャリが落下。ベゴッと言う凄まじくいやな音と共に、地面に叩きつけられた。


最初に落ちたのは銀時、次いで新八が銀時の上に落ちてきて、次に神楽が、新八の背骨に着地した。


苦しむ銀時と血反吐を吐いた新八をよそに、神楽は「ほぅあちゃぁぁぁぁ!!」と大きな掛け声と共に、落ちてくる剃石と琴針を傘でホームランだッ!


二人はそのまま、犯人の方に突っ込んでいく。



「そうか!!あの同心たちを犯人にぶつけて捕まえる気か!! ……ん?」新八の解説は正しいようにも見えた。だが、それは間違い。



「テメ…落ちろ!琴針!!」


「テメーが落ちろ!!犯人は俺が捕まえる!!」


二人は飛ばされている中で、取っ組み合いながら落とし合っている。



「オイィィィィ!!コイツら協力しようって気サラサラねぇよ!!もう何か醜いよコイツらホントに同心か!?」


「新八ィ 同心らしからぬ同心なら前にも見たろ?」



と、ココで後ろに気付いた犯人が振り向く。この状況に驚いた犯人は、とっさに剃石たちに向けて小さな何かを投げつける。




ドガァァァン



それは例によって再び爆弾。


「へへっ馬鹿じゃねぇの!? そんなんだからお前ら税金泥棒なんて言われるんだよ!!」


黒焦げになって倒れた二人を嘲笑うかのように犯人は言う。汚い罵声だが、それが間違っているとも言いがたい。こいつらは間違いなく同心失格。正真正銘の税金泥棒だ。


「待て……!」体はまだ動くのに気力が湧かない。「税金泥棒」と言う言葉が重く、彼らの圧し掛かる。



「もう分かったろアンタら」上を見上げると、そこには銀時の姿が。


「「万事屋…」」



「アンタら社会人だろ?それに公務員だ 給料は俺達の税金から支払われてるのは分かってんだろ だったら互いに蹴落としあうのでもなく、出世のことだけ考えるのでもなく、社会に貢献することを考えなさいよ 今のアンタらは子供だよ……嫌いな奴とは組まないなんてな…」



「大人になれよ!! アンタら」



その一言が二人の心を揺さぶった。二人はおもむろに立ち上がり、走り出す。十手を構えて犯人を追う。


まず剃石が、犯人に追いつき、犯人の背中に跳び蹴りを食らわせて転ばせ、押さえつける。


そして追いついた琴針が犯人の喉下に十手を突きつける。


「「神妙にお縄につけェェ!!」」



こうして、二人の活躍によって爆弾魔は逮捕された。



「今回は二人の手柄ね」パトカーを破壊された剃石と琴針は、先ほどの女同心に犯人を引き渡す。後ろで万事屋ファミリーもその様子も見ている。



「そうだ 二人に渡したいものがあるのよ」


「「何ですか?怒町(ぬまち)さん!」」



「逮捕状」




「「ハイ?」」わけの分からない二人に、女同心こと怒町は手錠を掛ける。そして、二人をパトカーに押し込むと、急ぎ足で万事屋ファミリーの元へ。


二人の表情は次第に固いものとなり、頬をだんだんと冷や汗が伝うようにもなっていた。


「ご協力ありがとうございます アナタ方のおかげで経費を盗んだ職権乱用犯を逮捕することができました」



「あーハイハイ コレさっきアイツらが置いていった金な」銀時は、怒町にさっきの金を渡した。とっさに数を数えて納得した怒町は銀時に報酬が入っているであろう封筒を渡す。



ほとんどの人はこの状況が分からないだろうから説明をしよう。



それは剃石が繰る40分ほど前のこと。さきほどの怒町が万事屋に依頼をしたのだ。



「税金泥棒の逮捕協力?」


「そうです 殺人課の経費が40万円ほど消えています それでこの二人が一番怪しいと言うコトになって、どうも二人はその金を使って誰かを雇い、互いを陥れることを考えてるみたいなんですよ 私がここを紹介しましたのでしばらくして彼らが来ます 二人の依頼を受けて金を受け取ってください」



「受け取ったら金額を数えて報告してください 報告を受け次第行きますので (これ、電話番号です)」


そう言って番号の書かれた紙切れを渡して、怒町は行った。



そう言う経緯が二人の同心が来る前にあったのだ。



そして、パトカーは走り、去ってゆく。



「やっぱ女は強いですね」


「そうだよ新八 だから強い女とはなるべく関わるなよ 神楽は…できるだけ金持ちな弱い男を引っ掛ける努力をしろよ」


「分かったアル」


万事屋ファミリーもまた、半壊した原チャリを押しながら家に帰る。


二人がこの後クビになり、牢屋に放り込まれたのは言うまでもない。次の日に珍事件としてお目覚めテレビやTHE EDOで放送された。



そして、銀時も気付く。協力したのに減点は取り消されてないと言うコトを。














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