羊水
ユウ宅に到着
投げっ放しの服が散乱しよく見ると汚い
さらにベッドに投げる私服
コタツの上には皿などが残ったまま
「ったく汚いっすよ
本当予想通りっす」
「忙しいんだ、しょーがねーよ
まー座れ、酔い覚ましに烏龍茶な」
コップに注いだ烏龍茶を半分ほど飲んだコウタ
さっそく質問してみた
「なんでスロットなんすか?」
「なんでって…金になるからだろう?」
「それでも普通に仕事したほうが…」
喋りきる前にユウは手帳を差し出した
収支表 と書かれた表紙は少し使い古されて擦れていた
パラパラ捲るコウタはただただ驚いた
「こんなに勝ってたんすか…」
「ついでだから今日の書いといて
36万の給料6万だから+30万だな」
…もう今月60万以上
コウタは自分の目を疑った
しかしバイトした結果も記されているのだ
真実なのは誰よりもわかる
「近くでみてもわかんないもんすね…」
ユウは少し笑っただけで返した
「スロプロなんて都市伝説だと思ってた」
「そうだなぁ
負けてる人には現実味ねーな(笑)」
コウタはうなだれる
深い溜息と共に話し出す
「金は何に使うんすか?」
「仕送りと食費と…色々かな」
「仕送り!?隠し子!?」
バンッ
軽く頭を叩かれイデーと頭を抱える
「親にだよ、うちは貧乏だからな
払う義務はねーけどガキの頃かけた金
それだけは返したいんだよ」
「小学校とかの金まで?
それはいいんじゃないすか?」
「んー俺は良くねーし
家には弟いるしなー」
弟は五個下の高校生らしい
私立に行ってるから金が無いはずだと
立派に見えた
貧乏な家のために働く若者なのだ、と
「そうじゃねーのよ
家出したんだ俺は金渡したくなくて
一時期連絡を取り合ってた時にな
毎月10万を要求された、5万払ってるのに」
「多すぎますね…」
「だから今は連絡とらねーで5万にしてる
ガキの頃の金は払わなくて良い
確かにそうかもな、でもウチは違う
親子でも払った金は返してもらう
これが我が家の常識なんだよ」
「歪んでますよ…そんなの」
「はっきり言うねぇ(笑)
わかってんだよ、誰だってさ
こんな家に生まれたのは不幸だ
だから俺は親が嫌い
姉ちゃんとは違う理由だけどな」
酔っていたせいかユウはよく喋った
家出したのは17の頃で漫画喫茶が帰る場所だったこと
貧乏すぎて家にはテレビすら無かったこと
だから今もテレビで何を見るかよくわからないこと
「正直理解は出来ないっす
ただ俺はユウさんが好きっすね
おもしれーし良い人だし!」
「お前もなかなか良い奴だ
だから話したぜ、これからもよろしく」
なぜか握手した
男達は酔って話すとたまにこういう展開になる
よくわからん友情がふと芽生えるのだ
男は照れ臭い生き物
男らしくありたいと願うゆえに本音を隠す
地元を離れたユウが自分の事を話したのは久しぶりだった
「じゃあ俺は帰りますね
明日は行きますか?」
「明日はいかねーな
スカウトの方で用事ある」
玄関まで見送ると時間は朝の6時
湯船に湯を張り浸かりながら寝てしまった
久しぶりの寝付きの良い日
酔ったせいか
それとも疲れたせいか
多くの人と話せた安心感か…
湯船で窮屈そうに寝るユウの顔は
ベッドよりもむしろ安堵しているようだった