93ページ目!人間か。神か。
(((白き大翼を羽ばたかせろ、八十の天使の騎士軍、その聖なる剣で道を切り開け――ホーリーナイト!)))
暗雲に覆われた空に白い閃光が打ち上げられた。
天に向かって走る、白い閃光のアーチ。
到達したその閃光は弾け、八十もの光となり、白き両翼を持った騎士と成った。
銀色と甲冑と白き翼。顔の隠れた甲には、等間隔で空けられた縦線の穴がある。
青のロングスカートが揺らめく。
剣に祈りを捧げ、そして、八十もの騎士達は剣の切っ先を神に向けた。
(((澱めく悪の色に染められし、光無き野獣達よ。我々は汝に服従の契約を執行する。さあ、力を貸し給え、――諸刃の鬼畜!!)))
次いで、黒紫色の閃光が打ち上げられた。
打ち上げられた閃光は一つの塊となり、竜巻のように渦巻きながら頂点に向かって走り、到達した瞬間、花火のように一斉に弾けた。
そこに、綺麗さはない。
空と似た色をした、漆黒の野獣だ。
無駄に逞しい筋肉をもった野獣。人の型をしてはいるが、人とは言い難い生き物だ。
褐色肌が更に焼け焦げたような体には幾戦を勝ち抜いた勲章とも取れる無数の傷が。
服装は白銀の腰あてのみ。武器など必要なし。拳こそが己の武器だ。
色鮮やかな光が次々と空に打ち上げられていき――
綾は、その空を見上げながら、
「絶景だねー」
と感想をもらした。
千以上の召喚獣で埋まった、その空を見上げながら。
全方に配置された魔術師達。各部隊、半分を召喚獣の詠唱に、残り半分を魔術の詠唱にあてていた。
空で待機する、召喚獣達。
隙間なく円で囲む。中心には神がいる。
地には魔術師達が待機している。その手には最上級の魔術が練られていた。
全員が、神から目を離さずにいる。
そして、合図が、カリオストロから通信が入った。
「これより、カウントを開始する。0のカウントを皮切りに一斉に攻撃を開始するぞ」
了解、と一同。
カウントが開始された。
5、4、3、2、1……
「0」
瞬間、目を瞑りたくなるくらいの眩い閃光が魔術界に走った。
鼓膜を突き破る爆発音が幾重にも重なり、連続して鳴り轟く。
爆発の連鎖により上空には白煙が立ち込めていた。
地の雪を払う突風。魔術師達は足腰に力を入れ、持ち堪える。
外套の裾が暴れ、頭巾の部分が剥がれ、素顔が露となった。
容赦なく迫り来る雪の猛襲に目はまともに開けていられない。顔が自然と歪んでいた。
――と、その時だ。
「キィャァァッ!!」
貫高い一声の直後、空に青い炎が無数に飛び散った。まるで花火のように。
肉眼で捉えることはまず無理であろう速度で、神が召喚獣に縄を巻くように飛んでいたのだ。
そして、そのまま上昇する。
直後、白煙が一気に爆発した。
ボフン、と音を立て、白煙は静かに晴れていく……。
地にいる魔術師達が固唾を呑んで、晴れていくその姿を追っていた。
追っていた先に見えたもの。
一同は驚愕した。
いない。千以上の召喚獣が一匹もいなかった。
いたのは、青い炎に身を包んだ怪鳥、一匹のみ。
「……おいおい、こりゃとんだ化物を相手しちまったようだな」
と綾が自嘲気味に口にする。
神は、全く傷がついていなかった。
つまり、最上級の魔術も召喚獣も、神には通用しない。
信じ難くもなるが、神は間違いなく、無敵だ。
「不死鳥がいる、アルよ……」
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