91ページ目!計画、ふたたび……!
「とにかく、今は、あの化物の近くに戦闘可能な魔術師達を集結させるしかナイよ」
真っ暗な空を見上げたままの綾。見上げるその表情が、次第に顰めっ面に変わる。
「……場所が分からんな。超鳴、お前は分かるか?」
超鳴も空を見上げ、眉を八の字にしながら口にする。
「分からないアル……。あそこら辺の区域の仕事は、カリオストロ達がやっていたアルから」
「何だよ、ジジイ達しか知らないのか。しゃあねえ、不本意だが、ここはジジイ達に場所を訊くしかねーな」
そう言い、綾は瞳を閉じた。
瞼の裏は暗く、何も映らない。
そこに、一本の線が走る。
最初は、真っ直ぐ走っていた。
一本の線は、やがて、山を作りながら走るようになった。
「お、つながったか」
どうやら、その線は電話線の役割をしているようだ。見えない電話線となって。
受話器はないが、
「綾辻君か。あの空にいる化物は一体なんなのじゃ?」
声が直接、脳に届く。
声を受信する者の体の一部に触れていれば、任意でその声を聞き取ることができる。同時に会話を送信することも可能だ。
「こっちが聞きたいくらいだ。ところで、アンタらは、今、どこに向かってるんだ?」
むろん、三老師は雪の国にいた。だが、
「“雪の国に向かっておる“」
嘘を吐いた。
綾も超鳴も疑う理由がなく、
「雪の国? ああ、そういや最近、そんな国が見つかったっけな。分かった」
嘘を本当だと信じてしまった。
「戦闘可能な魔術師達をそこへ集結させてくれ。揃い次第、化物退治を開始する」
そして、交信は切られた。
雪の国。三老師の一人・カリオストロの体から手を離す、チェルブリオとゲインシュタインの二人。
「――だ、そうだ。どうするのじゃ? このままでは計画は失敗に終わってしまうぞ」
ゲインシュタインは黙り込み、思考に入る。
チェルブリオは退屈そうに空に目を向けていた。
「神を、一度、どっかに封印できねーのかよ」
と口にしたのは、チェルブリオ。しかし、本人はあまり興味は無さそうな感じだ。
対象的に、カリオストロは興味深く食い付いてきた。
「神を封印じゃと?」
ああ、とチェルブリオ。
「封印したら、条件さえ揃えば、いつでも復活できるだろ?」
「チェルブリオ。君は、ちゃんと話を聞いたのか?
人尾の血で失敗に終わったのに、それよりも下級の人間の血では確実に失敗するじゃろう」
「いや、そうとも限らない」
否定に入ったのが、あろうことか条件を口にしたゲインシュタインだった。
「要は、血の量だ。それ相応の代価を支払えば可能だ」
やや苛立った声で、カリオストロは言う。
「じゃから、その代価が――」
「あるだろ?」
その自信に満ちたチェルブリオの声が、カリオストロの声を掻き消した。
『“魔術界“って代価がよ』
ゲインシュタインは狂喜に満ちた表情を浮かべながら、それはそれは嬉しそうに言葉を口にした。
「六大大国は六芒星の魔法陣の役割を果たしている。国民全てを使えば、代価として十分に足りてる。――素晴らしい! なんて素晴らしい方法なんだ!」
大地の全て(ガンツ)を。
この世の全て(グランドガンツ)を代価にする。
三老師は顔を合わせ、不敵の笑みを交わし合う。
そして、不気味に狂笑を浮かべた。
「魔術師達を集結させるぞ。化物退治の開始じゃ」
|