87ページ目!綾辻家の秘め事!
綾と超鳴とジークフリードの三人は、人混みの少ない場所、宿屋に足を運んでいた。
活気溢れる中心街の市場を人混みを避けながら抜け、貧相な雰囲気のある木造二階建ての宿屋に立ち寄る。
扉を開ける。開けてすぐの場所にあるカウンター。
「いらっしゃいませー」
白と黒のメイド服を着た店員が、笑顔で応対する。
超鳴は、懐からキャッシュカードくらいの大きさのプレートを出し、提示した。
金色のプレートだ。プレートには何も書かれてはいない。
が、金のプレートを目にした瞬間だ。
「ビップルームへご案内させていただきます」
応対の仕方が変わった。そう、まるでお偉いさんを相手にした時の反応だ。
超鳴と綾は、争いの一線で活躍した魔術師だ。提示したプレートは本人の位を示すものなのだろう。かしこまった応対の仕方に変わったのはそれでだろう。
ビップルーム。この二階建て宿屋にそんな場所が存在するのだろうか。そう思っていた矢先のことだ。
店員が、鍵を開けた。
何もない。ただの空間に。
店員は、扉のノブを回す真似をしていた。
いや、実際に回しているのだ。背景の一部が扉となり開いたのだ。
中に見えるは、幻想的な空間。配置された日用雑貨は、全て鏡のようなもので作られており、しかし、ハッキリとは写らない。
そう、まるで氷の世界だ。
寒さこそ感じないが、このビップルームは氷のように透き通った部屋だった。
中心に置かれたテーブルと四方に並んだソファ。質感は水のようだ。
一行は別々の場所に座り、入って手前のソファだけ空けるよう座った。
出入口は閉じられている。
今、この場にいるのは、綾と超鳴とジークフリードの三人だけだ。
「おい! ここまでついてきてやったんだから、話してもらおうか!? 手前達は何者だァ!」
早速、ジークフリードは二人に食いかかってきた。
綾と超鳴は顔を合わせ、先にどうぞ、と顔を振って合図を送る。
先に答えたのは、綾だ。
「アタシは、革命の魔術師・綾辻綾。弟が随分と世話になったみたいじゃないか」
鋭い目つき。睨みつけられただけで体が動けなくなってしまいそうだ。
ジークフリードは圧倒されつつも、冷静を装いながら話を進めた。
「臓腑の野郎の姉か。……まあいい。手前が革命の名を持っているのは何故だ?」
「そりゃ、アタシが昔、革命の名を語ってたからだよ」
ジークフリードは首を横に傾げる。
「昔って、手前は臓腑の野郎と同じで、日本から来たんじゃねーのかよ」
綾は目を丸くしていた。
「神の臓腑のことは知ってても、他は何も知らないみたいだな」
ソファの後ろに手を回し、足を組み、堂々とした態度に変わる。
『アタシもアイツも、元は魔術界で生まれた人間だ。
綾辻の名は、アタシが魔術で作った“架空の戸籍“なんだよ』
超鳴が深刻そうな表情をし、伏せる。
「意味が分かんねえなァ。何で、そんな面倒くせえことをしてんだ?」
遠い昔を懐かしむような眼差しを、透き通った氷のような天井に向けた。
「こんなことを喋る日は来ないと思ってたんだが、来ちまったなっちまったからには、喋るしかないか。
教えてやるよ。終戦の中に隠蔽されてきた真実――“空白の開闢“の真実をさ」
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