85ページ目!集う!偉大なる魔術師たち……!後編!
鋼鉄の巨人と化した、チェルブリオの体の随所に見られていた赤錆が縮まっていく……。
最終的に赤錆は完全に姿を消し、チェルブリオの体は新品同様の姿に変わっていた。
チェルブリオは手足の感覚を試しながら、
「お前のミスリルには惚れ惚れするぜ。これなら、全盛期の力が発揮できる」
と言った。
綾の警戒がより強くなる。
(一発。一発だけ避ければ、空いた後ろの壁から脱出できる)
一歩、慎重に後退する。
手が背後の壁に当たっている。逃げ場はない。
まさに、綱の上に立たされている状態だ。
(たとえ、一発避けれたとしても、反動を耐えきれるかどうか……)
綾は不敵に薄ら笑いを浮かべる。
(いや、やるしかない。アタシ達に残された手段はそれだけしかないんだから)
チェルブリオの腕が蒸気を吹き出しながら前後に可動する。ピストン運動だ。
熱。拳が遠くにあるにも関わらず、熱気が綾側の方に行き届いていた。
ピストン運動が徐々に加速していき、そして――
刹那のやり取りが始まる。
拳、熱を帯びた鋼鉄の拳が蒸気を潜りながら迫る。それ単体で巨大な化物が襲ってくるような圧迫感を感じる。
綾はジークフリードと黒姫を脇に挟み、その場をジャンプする。
迫り来る拳は暴走特急のように勢いを止めることなく飛んできた。
このまま行けば、壁に穴が空く。作戦は成功だ。そう思っていた矢先のこと。
カリオストロのミスリル・帝王艦隊が左側の壁より出現していた。
どうやら切口を壁に残していたようだ。
大気に痕を残すのは不可能だが、物体になら残すことは可能だ。
綾は八基の大砲と目が合う。
前方から鋼鉄の拳が。左方からは八基の大砲が。
「黒姫、まだ喰えるか?」
(無理だわ。さっきので、綾のミスリルが満杯になってしまったもの)
ちっ、と再び舌打ちをする綾。
目線のやり場に困る。
どちらを対処すればいいのか。綾の決断はすぐそばまで迫られていた。
「――後方! 急ぐアル!」
ドガンッ! と岩石の板が倒れてくる。
綾は己の耳を疑った。そして、目も疑った。
後方から聞こえた、懐かしい友の声とその姿。
中国人独特の訛りと似た口調。赤いチャイナドレス姿の見た目二十歳前後の女性。黒髪のショートカットが縦なびく。
手を差し出す、その女性。
「ちょ、超鳴!」
ジークフリードと黒姫の二人を抱えた綾を片手で引っ張り上げ、
「話は後ネ!」
雲が広がる空の頂から、落下する。
鋼鉄の拳が穴を通り抜け、砲撃は紙一重で避けることに成功した。
三人分を支える超鳴と呼ばれるその女。急降下しているにも関わらず、何も動じることなく、静かに瞑想を始める。
(――万物の守護神!)
強く、念じる。
全身の動脈に流れる魔力が足に向かって走る。
ロケット花火のような音を鳴らしながら、超鳴は勢いを落とすことなく、地面に着地した。
ズンッ、と魔術図書館前に地鳴りが轟く。
町中の人々の視線が、天より降り立った超鳴に向けられている。
その場にいる全員が、ただ呆然と固まっていた。
超鳴は、三人を投げ下ろし、体を払う。
と、大衆の視線に気づき、
「どうかしたアルか?」
などと間抜けなことを口にしていた。
乱暴に下ろされた綾とジークフリードと黒姫の三人は、そんな彼女を遠い目で眺めていた。
その間抜けな彼女の名は、李超鳴。
二つ名は、封魔。
封魔の魔術師だ。
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