80ページ目!魔天老が動き出す!
中心、円状のスポットライトが一人の魔術師に照らされた。
顔以外はその身に纏う外套により隠れている。しかし、袖の尺の関係上、手の甲だけは顔半分だけ露となっている。
その手の甲には、魔法陣が刻まれていた。
革命の魔術師・ジークフリードだ。
ジークフリードは、綾辻立麻と言う、異質の力を秘めた人間との戦いに敗北した直後、ここに強制的に送還された。
この、魔天老の聖殿へと。
つまり、彼を送還したのは、他でもない魔天老である。
ジークフリードは傷を負っていた。――はずだったが、傷は完全に癒えていた。
周囲を見渡すが、何故か、人気を感じない。
(クソジジイ共がいねえなァ)
人気のない、空間。
その物静かな空間は、いつにも増して不気味である。
と、空間の前方、陰影に覆われたそこから、地面を擦るような足音が聞こえた。
最初に光が捉えたのは、小麦色の草履。
次いで、群青色の着物の裾。
全体像が露となった時、その、侍のような格好をした老人が露となった。
刀身が湾曲した鋭利な刀・カットラスを佩刀し、胸に晒しを巻いている。
胸元から片腕を出し、口にキセルを咥えており、風流を感じさせる。
白髪を後ろで一本で束ね、口回りに白い髭を生やしていた。
外見を見ての通り、かなり年老いた印象があるが、どこか若々しい印象もある。
その老人は、清澄な口調で話を切り出してきた。
薄く開かれた細目が向けられる。
「何故、儂等の所へ呼ばれたか、分かるな?」
ジークフリードは、感じる。
いつもとは違った空気を。
(人気がないように感じたのは、氣を消していたってことか)
ジークフリードは、不敵な笑みを浮かべた。
人をおちょくるような口調で、
「何故だろうなァ。俺には、ちっとも分からねえなァ」
と言った。
ふむ、と老人は頷く。
刀に手を掛けて、
「この世の革命を邪魔する事。それは即ち手前の終焉を意味する。――“そういうこと“じゃよ。ジークフリード君」
空を裂いた。
「今回の騒動の責任は、君の命で償ってもらうよ」
ふふ、と不気味に笑みを溢す、ジークフリード。
「老いぼれが言うねェ。いいぜ? くれてやるよ。俺の命をよ」
ただし――、と続けて、
「手前が死んでなけりゃなァ!!」
威勢よく叫ぶ。
手を前に出し、魔術を唱えようとする。
が、魔術が唱えられない。
ジークフリードは、己の手の甲を見た。
燃え、てる……?
それは、自分の目を疑いたくなる光景であった。
手の甲に刻まれていた魔法陣が、青白い炎を上げて燃えているのだ。
それこそ、紙が燃えるように。
「――どうした? ジークフリード君。早く、儂を殺してみろ」
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