7ページ目!お稲荷さまの日常!
朝十時。
未だに目を覚まさない白。悪い夢でも見ているのか、先ほどからずっとうなされっぱなしだ。
(お前……白みたいな耳も尻尾も生えてない……名を名乗れ! なんでこんなことするのじゃ!)
(なぜか、か。その問いには答えられない。……いや、貴様がその答えを知ることはできない。何故なら貴様もこの場で――)
――焼え尽きるのだから。
「……!!」
ようやく白が目覚めた。
嫌な汗が全身から吹き出ている。良い目覚めでは無さそうだ。
白は辺りを見渡した。
「そうか……そうじゃった」
そこは、ありふれた日常の景色。非日常の景色とはまた違った、温度がある。
「んっ――!!」
白は座った状態で背伸びをした。耳がぴょこんと動き、尻尾がピンッと上がっていた。
そして、立ち上がる。
「んしょ」
布団を綺麗に畳んで押し入れに蔵おうとする。が、若干背が届かない。
白は押し入れの中を見つめて、諦めた。
布団を壁の端っこに寄せておき、下へ向かった。
一階には誰もいなかった。この時間になると、立麻は学校で綾は仕事に出ているのだ。
グー、と腹の音を鳴らす白。
(お腹減ったのぅ……)
白は何か食べれる物を探しているのか、一階にある全ての部屋を回っていた。
階段を上がらず突っ切った先には、トイレと風呂と洗面所の計三つの部屋がある。しかし、ここに食べ物はない。
今度は逆方向にある居間に向かった。
テーブルの上には、醤油で炙り焼かれた煎餅があった。むろん市販で売っているものだ。
白は鼻をクンクンと動かしている。醤油煎餅から発せられる香ばしい匂いに反応したのだろう。
(アレは食べれそうじゃ)
白はその匂いに釣られるように、居間へと足を踏み入れていた。
そして一枚、煎餅を手に取り口に入れる。
手にした時にその堅い質感に気づいたのだろう。白は煎餅の表面をチロチロと舐めていた。
それがかじるものだと知らず、ただ表面につく醤油だけを堪能していた。
(むっ、米の味がするのう?)
残念ながら煎餅がそれ一枚だけしか無かったため、白は煎餅を置いて再び食べ物を探しに向かう。
とは言っても、残るは居間の反対側に位置する台所しかない。
白は台所の入口から顔を出していた。キョロキョロと辺りを見渡す。
中心に置かれたテーブルの上に“シロ“へと書かれた紙が置かれた、食事が用意されていた。
目の前に食事があるのに、白は何故か落ち込んでいる。
(シロじゃなくて、白なのに……)
グー、と腹の音が鳴る。
白は席につく。どうやら食事を頂くことにしたようだ。
用意されていたのは、海苔の巻かれたおにぎりと味噌味と醤油味の焼きおにぎりだ。その隣にはお茶碗とお吸い物の袋も置いてある。
お吸い物の作り方を分からないのか、白は首を横に傾げていた。
しかし、おにぎりの方は大変気に入っているようで、次々と口の中に放り込んでいった。
「うむ、満腹じゃ」
水の入ったお茶碗を口に注ぎながら、そんな感想を口にする。
と、白はお吸い物を目にした。どうしても気になるようだ。
「…………」
白はお吸い物の袋を開けた。
何を考えたのか、その袋の中身を口の中に流し込み――
「っ……っほ! っごほ!」
むせる。
涙目になりながらお吸い物の袋を睨む。
そして、指でそれを弾き飛ばす。
「ひどいものを食わされた」
そんな感想を口にしながら、お茶碗に残った水を飲み込んだ。
(むっ、何かしょっぱいのう?)
白は手を洗い、居間に向かった。
「さて、もう一眠りするかのう」
陽光が差し込む場所へ身を置き、ぐてんと横になる。
背伸びをして、目を瞑る。
現刻は、十一時を迎えようとしていた。
立麻が帰ってくるまでまだ時間がある。
白は一人、日溜まりの中で昼寝をするのだった。
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