57ページ目!ロミオの愛!ジュリエッタへの愛!
「フフフ……」
ロミオが不気味に微笑んだ。
背を曲げて腕をぶらりと下げているその姿。その姿が妖艶の照明によって照らされた壁に二回りほど大きい影となって写っていた。
まるで、悪魔のようだ。
周囲に隙間無く置かれたガラス張りの入れ物。一つにつき一人の人間が入れられている。厳密に言えば漬けられている。
入れ物の中には妖艶に輝く液体が入っているのだ。
大人子供問わずに漬けられた人間は皆が干からびており、腐敗した植物のような状態に変わっていた。
立麻は口と鼻を押さえた。
この部屋は臭い。生魚が死んだような刺激臭がする。
「私は、ただ、信愛なるジュリエッタを愛していただけだよ」
「へぇ、あんたがその人を愛したら、俺達の身体が麻痺するのか?」
「えぇ、そうですよ」
立麻は強く拳を握り締めた。
深い霧が不気味に漂う部屋の中、立麻はそこへ向かって駆け出した。
「――私とジュリエッタの愛を邪魔するのであれば、容赦はしない……!」
白が寝かされた手術台に。
手術台に駆け出す途中、立麻はある魔術を唱える。
その材料は有り余るほど漂っていた。
そう、深い霧だ。
立麻は、想像した。
妖艶の煙が部屋全体を包み込むイメージ。
立麻は、創造した。
「くらいやがれ! 特大のスモークだ!」
自分達の身を隠す、妖艶の煙を。
「逃がしませんよ……っッ!」
ロミオは、想像した。
その手には、メスが握られている。
不気味な歌声が木霊する。
(((闇夜に徘徊する地獄の神よ。我にその鋭利な力を与えたまえ――)))
瞬間、握られていたメスの大きさが形ともに変化していった。
銀色の刃はやがて、銀色の鎌と成る。
鎌の周りを悪戯に動き回る半透明な青い霊。
キキキ、と青い霊達の嘲笑が響き渡る。
「冥王の遊具」
大きな鎌を横一線に一振り――すると、漂う妖艶の煙が一斉に消え去った。
が、消え去った後の視界の中に、二人の姿はなかった。
扉が開いている。閉ざされていたはずの扉が。
「何度も言わせないでください。逃げても無駄ですよ……!」
冥王の遊具を振り抜き、壁を切断する。
そして、廊下に出た瞬間、
「私の可愛い下僕達よ……! お客様二人を御奉仕してあげなさい……!」
誇り高く、そう叫ぶ。
古城全体に響き渡るその声により、吸血鬼の美女達は紅き瞳と立派な二本の牙を生やす。
そして、漆黒の両翼を羽ばたかせながら、廊下を飛び回る。
漆黒の川が一斉に流れ出す。
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