51ページ目!ジュリエッタvs鈴鳴!ラウンド1!
三十メートルはあるであろう長方形のテーブル。白いテーブルクロスが敷かれており、その上にロウソクの立った金属製の置物とバスケットに入った彩り豊かな果物が置かれていた。
だが、それは一行が座るテーブルではない。
一行が座るテーブルは隣に位置する。
むろん、果物だけでもてなす訳がない。肉や野菜などの多種多彩な飲食物が調理された状態で並べてある。
立麻は吸血鬼の美女に酔い、白は香ばしい薫りが引き立ったローストビーフを食べていた。
雑な食べ方をしているせいで、照り焼きのタレが口元に染まっている。
しかし、鈴鳴だけは何も口にしていなかった。いや、厳密に言えば、一口だけは食べたことになるのだが。
小皿に盛られた肉が少しだけかじられていたからだ。
あまりお腹が減っていないのか。何にせよ、一生に一度だけしか堪能できないかもしれないくらいのこの贅沢を堪能しないのは勿体無いと思う。
「おや? 鈴鳴さんはお召しあがりにならないのですか?」
傍らにジュリエッタを置いたロミオが訊いてきた。
鈴鳴はジュリエッタを見た。人形ように動く事のないジュリエッタを。
「……ワタシはお腹が一杯アルね。気にしないでヨロシ」
ロミオは顔を伏せる。
「……そうですか」
吸血鬼達の胸の谷間に蹲りながら、立麻は間抜けな声で口にした。
「こんな贅沢を前にして満腹状態なんて不幸なやつだなあ」
「全くじゃあ! ――あ、この赤い飲み物をもう一杯くれぬか?」
溜め息が出るほどのアウトローっぷりに鈴鳴は悩ましげに頭を抱えた。
そして、席を立つ。
立麻はそれに気付いた。
「おい、どこに行くんだ?」
背後を横切る鈴鳴。
「少し風に当たってクルね」
白は完全に酔っ払っていたため、気づいていない。
その場で鈴鳴が席を立ったことに気付いたのは、二人。
立麻とジュリエッタだ。
――もっとも、見た目で判断したらの話なのだが。
ロミオがジュリエッタにむけて何かを呟いている。
ジュリエッタは軽く縦に頷き、その場を立ち去ってしまった。
鈴鳴は村が一眸できる場所に足を運んでいた。空気は最悪だが、鈴鳴からすれば中の空気よりはマシなのかもしれない。
半月を描くように掛けられた石柵に背もたれする。
「まだ舌が痺れてルね」
鈴鳴は何度も舌に手を触れて確認していた。
と、眼前の窓際にジュリエッタが立っていることに気付いた。
鈴鳴は、不思議そうな目でジュリエッタを見ている。
しかし、その表情とは裏腹に手の中では微量の電流を発生させていた。
紅い空がガラスに写り込んでいた。真っ赤なカーテンの向こう側にジュリエッタが立っていた。
(((夜に詠い、月に応えを求めよ。さすれば、汝、光照らされるであろう。――マザーズ・ホーリー)))
雲は泳ぎ、そして、月は顔を出す。
月から紅い光線が届く。
鈴鳴の元に。
瞬間、落雷の如し紅き閃光が地に轟く。
鈴鳴の背中を狙ってそれは音速の速さで飛ぶ。
(((鯰の皮を剥がせば、疫を祓う衣となり、我を守るであろう。――疾風陣雷!!)))
だが、背中を覆う電流を纏った衣が出現した。
そして、爆発音と共に紅き閃光を相殺した。
鈴鳴はジュリエッタを睨む。
「今度はこちらから歓迎スルよ。少し手荒い歓迎になるケドね」
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