39ページ目!チャイナ娘にご注意を!
「悪い。オッサン」
立麻は照れ臭そうに頬を掻きながら、
「――また今度にするわ」
そう、告げた。
そうかい。店主は笑顔でそう答えた。その笑顔はどこか向日葵を連想させる。
こうして、立麻と白の二人は店を後にしたのだった。
中心街を離れた立麻と白の二人。少し歩いた先には旅の宿があり、そこに向かっている。
中心街と離れた場所に位置するため、騒音に困ることもなさそうだ。
逆に考えれば、近場で買い物が出来るという利点になる。ついつい財布の紐が緩くなってしまいそうだ。
立麻と白が泊まる宿は木造二階建ての宿だった。外見だけ見れば今にも崩壊しそうな印象があるが、内装はきっとしっかりしているのだろう。
二人は扉を開けて中に入った。扉は正常に動いたようだ。
入ってすぐ目の前に受け付けがあった。
受け付けを担当しているのは、見た目二十代後半くらいのメイド服姿のお姉さんだ。
「お泊まりですか?」
一階はリビングルームの役割をしているようで、調理場と共有されていた。
中心を陣取る巨大な赤い絨毯。暖炉もある。
調理場の後ろの方にはいくつかの食事スペースが設けられてある。レストラン感覚で訪れる客もいるのだとか。
しかし、外見からは想像もつかないくらいの豪華っぷりだ。
「はい。あ、別々の部屋でお願いします」
その言葉を聞いた瞬間、白が立麻の服の袖を引っ張った。
立麻は白の方を見下ろす。
「なんだよ?」
「なんだよじゃない! び、白は一人だと寝れないんじゃ……」
白は頬を赤らめ、そっぽ向きながら強気にそう口にした。
ぷっ、と立麻の笑い声が漏れる。
ビクッ、と、白の耳が動く。
「悪い悪い。そういやお前、まだ子供だったんだよな」
ガーン、と、白の頭の中に重い衝撃音が響き渡る。
子供だったんだよな。立麻のその言葉が除夜の鐘の如く鳴り響く。
バンッ! と、お客様名簿を叩く。
「部屋は別々でよい!」
周囲を圧倒させる憤怒のオーラ。肉眼で捉えることはできない。
受け付けのお姉さんは恐る恐る白に部屋の鍵を渡し、白はそれをぶん取り、ズカズカと行儀悪く足音を立てながら二階へ続く階段を上がっていった。
取り残された立麻も部屋の鍵を受け取り、二階へ向かった。
気まずい空気が煙っている。
――と、新たな旅人が来たようだ。
外套を羽織っており特徴が掴めないが、強いてあげるとすれば、肩から掛けている二メートル近い布製の入れ物。恐らく武器が入っているのだろう。
「お泊まりで」
――すか。と言い切ろうとする前に、その旅人は手を差し出した。早く鍵をよこせを言わんばかりの横暴っぷりだ。
とりあえず、鍵は渡された。
そして、二階へと上がっていった。
一階にようやく静けさが戻って、――バキッ!!
二階の方で大木が折れたような物音が響いた。
受け付けのお姉さんが二階へと駆け足で向かう。
そこにいたのは、チャイナドレス姿の女性。外套と布製の入れ物が床に落ちている。あの無愛想な客だ。
「な、なんじゃ! お前は!」
二メートルはあるであろう。その細長い槍。
長い棒に刃が付いた。一見、淡白な槍に見えるが、その槍の刃には風が渦巻き、その中で雷が放電していたのだ。
その名は、風雷穿槍。
その威力は、三十メートル先まで離れた相手に行き届いている。その雷のような亀裂が物語っている。
「李鈴鳴ね。
――弧月を返してもらうアルよ」
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