お稲荷さまの秘め事!(37/135)PDFで表示縦書き表示RDF


お稲荷さまの秘め事!
作:俺とキルマシーン



37ページ目!空白の開闢の欠片


「いらっしゃい」

 店の中は驚くほど殺風景だった。
 何故なら、店の中にはカウンターしかなかったのだ。
 土で埋められた地面。三方には煉瓦の壁がある。
 カウンターに腰をかけている店主。白い外套を羽織っているのだが顔だけは表に出している。
 気の優しそうな明るい老父である。
 立麻と白は辺りを見渡していた。

「君達と会うのは、今日が初めてかな?」

 店主は笑顔でそう訊いてきた。

「う、うむ、そうじゃ」

「よかったよかった。私が忘れてしまっていたのかと思ったよ」

 店主は照れ臭そうにそう答えた。立麻は首を横に傾げている。

「もしかして、来た客全員頭に入ってるとか?」

「はは、そうなるね。最近は頭に入らなくなってきてるんだがね。――それより、二階に案内しよう」

 よっこらせと言った感じに重々しく腰を上げ、カウンターの端を折った。金具が軋む。
 どうやら、元々折れるように作られているようだ。
 カウンターの奥には通路がある。恐らく、二階へ続く階段だろう。
 立麻と白は店主の後を追っていく。やはり、そこは二階へと続く階段だった。

「足元には十分に気をつけてくださいね」

 暗くて何も見えない通路。
 店主が立ち止まる。軽く軋んだ音と共にその扉は開かれた。
 部屋へ踏み込んだ二人。眼前には幾数にも及ぶ、筒状の望遠鏡のような物が壁に埋め込まれていた。
 店主はその壁の横に立ち、二人の方を振り向く。

「これは“異次元鏡(いじげんきょう)“と呼ばれる物でね。この筒は召喚獣が潜む別空間と繋がっているんだ。欲しい召喚獣がいたら覗く部分を吹いてごらん。それが呼び出しの笛になるんだ」

 立麻と白は適当に場所を選んで筒を覗いてみた。

「上から順に、火、水、風、光、闇で並んでいて、横から順に下級、中級の下、中級、上級の下、上級の五段階に強さが定められてるよ」

 立麻がたまたま覗いた場所は、水属性の上級召喚獣・リヴァイアサンの場所だった。
 外光も差し込めない深海の奥底を泳ぐ水竜神リヴァイアサン。

(水の野郎が持ってたな。こいつ)

 ちなみに白は身体の関係上、風属性の中級の下の召喚獣・フェアリーを見ていた。
 彩り豊かなお花畑の中を華麗に舞う妖精フェアリー。その動きはどこか蜜蜂を連想させる。

「水の野郎との戦いでは全然役に立てなかったからな。何か強そうな奴を」

 ――買うか。そう言う前に白が割り込んできた。

「何を言っておるのじゃ? 水の魔術師を負かしたのは立麻のおかげだぞ?」

 立麻は白の方を振り向く。
 白も立麻の方を向いていた。
 二人とも思い違いが発生しているためか、不思議そうな表情をしている。

「だって、俺は戦いの途中で気絶して……」

「うむ、そうなんじゃがな。その後、立麻の体内から“青い不死鳥“が現れてのう。――そいつのおかげで水の魔術師の最後の攻撃を防ぎ切れたんじゃ」

 と、そこに、

「青い不死鳥……まさか“アレ“なわけ……」

 店主が何か独り言を呟いていた。
 立麻は店主の方を振り向く。

「アレって、おっちゃん。何か知ってるのか?」

 心の中で何度も自問自答しているのだろう。店主は意味もなく首を振ったりしていた。
 そして、目をうつ向かせたまま、

「昔、魔術界で大きな争いがあったのは知ってるかい?」

 そう訊いてきた。
 うむ、と、白が頷く。

「実は、その争いは“青い不死鳥の暴走“が原因で始まったんだ」

 店主は、二人の顔を真っ直ぐな目で見た。

「その青い不死鳥の名はグランドガンツ。そう、神のことだ。――十数年前のあの争いは“神の暴走“が原因だったんだよ」












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