37ページ目!空白の開闢の欠片
「いらっしゃい」
店の中は驚くほど殺風景だった。
何故なら、店の中にはカウンターしかなかったのだ。
土で埋められた地面。三方には煉瓦の壁がある。
カウンターに腰をかけている店主。白い外套を羽織っているのだが顔だけは表に出している。
気の優しそうな明るい老父である。
立麻と白は辺りを見渡していた。
「君達と会うのは、今日が初めてかな?」
店主は笑顔でそう訊いてきた。
「う、うむ、そうじゃ」
「よかったよかった。私が忘れてしまっていたのかと思ったよ」
店主は照れ臭そうにそう答えた。立麻は首を横に傾げている。
「もしかして、来た客全員頭に入ってるとか?」
「はは、そうなるね。最近は頭に入らなくなってきてるんだがね。――それより、二階に案内しよう」
よっこらせと言った感じに重々しく腰を上げ、カウンターの端を折った。金具が軋む。
どうやら、元々折れるように作られているようだ。
カウンターの奥には通路がある。恐らく、二階へ続く階段だろう。
立麻と白は店主の後を追っていく。やはり、そこは二階へと続く階段だった。
「足元には十分に気をつけてくださいね」
暗くて何も見えない通路。
店主が立ち止まる。軽く軋んだ音と共にその扉は開かれた。
部屋へ踏み込んだ二人。眼前には幾数にも及ぶ、筒状の望遠鏡のような物が壁に埋め込まれていた。
店主はその壁の横に立ち、二人の方を振り向く。
「これは“異次元鏡“と呼ばれる物でね。この筒は召喚獣が潜む別空間と繋がっているんだ。欲しい召喚獣がいたら覗く部分を吹いてごらん。それが呼び出しの笛になるんだ」
立麻と白は適当に場所を選んで筒を覗いてみた。
「上から順に、火、水、風、光、闇で並んでいて、横から順に下級、中級の下、中級、上級の下、上級の五段階に強さが定められてるよ」
立麻がたまたま覗いた場所は、水属性の上級召喚獣・リヴァイアサンの場所だった。
外光も差し込めない深海の奥底を泳ぐ水竜神リヴァイアサン。
(水の野郎が持ってたな。こいつ)
ちなみに白は身体の関係上、風属性の中級の下の召喚獣・フェアリーを見ていた。
彩り豊かなお花畑の中を華麗に舞う妖精フェアリー。その動きはどこか蜜蜂を連想させる。
「水の野郎との戦いでは全然役に立てなかったからな。何か強そうな奴を」
――買うか。そう言う前に白が割り込んできた。
「何を言っておるのじゃ? 水の魔術師を負かしたのは立麻のおかげだぞ?」
立麻は白の方を振り向く。
白も立麻の方を向いていた。
二人とも思い違いが発生しているためか、不思議そうな表情をしている。
「だって、俺は戦いの途中で気絶して……」
「うむ、そうなんじゃがな。その後、立麻の体内から“青い不死鳥“が現れてのう。――そいつのおかげで水の魔術師の最後の攻撃を防ぎ切れたんじゃ」
と、そこに、
「青い不死鳥……まさか“アレ“なわけ……」
店主が何か独り言を呟いていた。
立麻は店主の方を振り向く。
「アレって、おっちゃん。何か知ってるのか?」
心の中で何度も自問自答しているのだろう。店主は意味もなく首を振ったりしていた。
そして、目をうつ向かせたまま、
「昔、魔術界で大きな争いがあったのは知ってるかい?」
そう訊いてきた。
うむ、と、白が頷く。
「実は、その争いは“青い不死鳥の暴走“が原因で始まったんだ」
店主は、二人の顔を真っ直ぐな目で見た。
「その青い不死鳥の名はグランドガンツ。そう、神のことだ。――十数年前のあの争いは“神の暴走“が原因だったんだよ」
|