30ページ目!vsベネチア戦!ラウンド4!
まだ国は泣いている。
その様子をただ見つめるアカ。その表情は不安一色と言ったところ。
しかし、その不安を煽るように長老は訪れ、皮肉な言葉を発した。
「他人の為に命を張ろうなどという考え自体が愚かなのじゃ」
ピシャン、という轟音と共に雷が暗い空に走る。
長老は出入口の方に立ち、ただその様子を眺めていた。
空を眺めてもつまらない。
何故なら、雨しか降ってないから。
だったら、空を眺める必要なんてない。
だけど、長老は空を眺めている。
その行動に何の意味があるかなんて誰にも分からない。
だが、もしかすると長老は、雨が止む事を期待をしているのかもしれない。
つまり、名も知らない二人の魔術師達の勝利に期待している。そういうことだ。
たまらず、アカは走り出した。
長老の脇を通り抜ける。
長老はアカを止めなかった。
鋭い雨が縦横無尽に襲いかかる。突風が吹き荒れるその中で、それは不規則な動きをしていた。
立麻と白の二人は背中合わせになりながら、それらを対処している。
しかし、一方的に攻撃をくらっていた。
目も開けられぬ鋭い雨の猛襲。白は弧月を振れない状態で立たされている。
(口を開けたら針が入ってきそうだし……これじゃ作戦も練れねぇよ)
全身に走る赤い傷。傷の走る位置なんて読めない。それぐらいの速度で襲ってきているのだ。
(ちくしょう。あれだけ威勢の良いこと言っといて、結局、何も出来ねぇじゃねーか)
ベネチアは水竜神の背中に乗りながら、地上を眺めている。
立麻と白――神の臓腑をその内に宿す者達を眺めていた。
その顔は、心底つまらなそうな表情をしている。
(更なる覚醒を期待してみましたが、どうやらこれ以上は無理そうですね)
と、その時、退屈していたベネチアの視界にある人物が入ってきた。――アカだ。
つまらなそうな表情をしていたベネチア。表情は一変する。
アカは立麻と白のいる場所へと走っていた。
苦手な雨など気にせず、そこへ向かう。
(神に頼らずに自分で何とかする。二人はそれを私達に教えてくれた)
――だから、自分も戦う。
アカは走った。仲間の元へ。
が、その時だ。
雨で足を滑らせてしまった。
体が地面に投げ出され、盛大に泥を塗る。
褐色肌に泥が圧化粧された。しかし、直ぐ様立ち上がる。
後少し、後少しで仲間の元へたどり着けるから。
――パラベラム・レイン。
その声は遥か上空から聞こえた。
気付くと、立麻と白を猛烈な勢いで襲っていたはずのあの鋭い雨が止んでいた。
変わりに、螺旋状に渦巻く水の球体が飛んできていた。
アカに向けられて。
開いた瞳。その目が捉えた者は、大事な仲間の姿。
「……!! アカ……!?」
白は弧月を構えた。が、アカとの距離が遠い。
「駄目じゃ! 間に合わん……!!」
「諦めるな……!!」
立麻は叫ぶ。
そして、突っ走る。
が、不運にも雨は立麻の足を奪った。
水の球体はアカに肉追している。その様子が視界から消え、やがて、立麻の視界にはアカの足元だけが写っていた。
白は先程の傷に体がついてこれず、膝をついてしまっている。
立麻は歯を食いしばり、草を強く握り締めた。が、手から草は抜け落ち、力尽きた。
ドクン、ドクン。
鼓動。
地面に倒れる立麻。その背中から、ある生き物が姿を見せていた。
それは、青き灼熱を纏った不死鳥だ。
土砂降りの雨に打たれているにも関わらず、全く消える様子のない青き灼熱。
光輝く火の粉が粉雪のように舞い散る。
形は一定せず、その炎の動きによって形を変えている。
「クワァァァァ!!」
甲高き叫び声。
不死鳥は舞う。そして、翼を振るう。
突風が吹き荒れ、螺旋状に渦巻く水の球体が一瞬にして打ち消された。
白とアカは、まるで化物を前にしているような、そんな表情をしている。
対して、ベネチアは至って普通の表情をしていた。
が、笑いが止まらないご様子だ。口元が引き攣っている。
「あれが、神・グランドガンツ……この世の全て。ふふ、これなら魔天老様方も喜ぶでしょう」
――私の責務は終えた。
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