10ページ目!お稲荷さまとお風呂?
「遅いのう……」
白は玄関前で突っ伏して寝ていた。脚をバタバタと動かす。ドンドンと耳障りな音がうっとうしく響いていた。
「うるさいぞー、静かにしろー」
居間から綾の退屈そうな声と笑い声が聞こえた。笑い声はテレビの中からだろう。
音が止まる。廊下に静けさが戻る。
バイト終わりの立麻が帰宅するのは夜九時前後。もうすぐ帰ってくるはずだ。
「ふむぅ」
呆然と玄関を見つめていた白。どうやら睡魔が忍び寄ってきたのか、今にも寝てしまいそうな雰囲気がある。
くるん、と一回りした尻尾が、したん、と地に伏せる。耳も畳まれる。
――ガラララ、と玄関が開いた。
ピクッ、と畳まれていた耳が起き上がる。
「ただいまー」
立麻が帰ってきた。
今までの眠気を吹き飛ばすように、白は勢いよく立ち上がった。
「遅いぞ!」
「げっ! インチキ魔術師! お前まだ居たのか!」
「インチキとはなんじゃ! 白は正真正銘の魔術師じゃ!」
立麻は白の肩を軽く叩き、スタスタを横を通っていった。
「そうだったな。魔術師ごっこをするんだっけな。まぁ待ってろ、飯と風呂が終わってからだ」
「だから、白は……!!」
正真正銘の魔術師、とは言い切れなかったようだ。
立麻は居間に立ち寄る。
「姉貴、風呂は?」
ぎゃははは、とテレビの中から笑い声が。
綾は立麻の方を見向きもしないで口にした。
「沸いてねーよ、だからお前が沸かしなさい」
「ったく、しゃーねぇーな」
立麻は頭をポリポリと掻き、退屈そうな表情のまま廊下を歩いていった。
が、居間を通り越した時だ。
「あー、つか白い奴も一緒に入れてやれ」
「白い奴?」
立麻は後ろを振り向く。
白い奴。
白が疑問符を浮かべたような表情をしながら、立麻の方についてきた。
立麻は居間にダッシュで駆け込み、不思議そうな表情をする白の頭をガッと掴み、これみろとばかりに指を指しながら訴えた。
「ちょっと待て! 何でコイツを入れる?! 助けられた礼があるとはいえそこまでしなくても」
綾は立麻の方を振り向かないまま、
「あー、そいつは家で預かることにしたから」
と、冷静に口にした。
立麻は白の方を振り向く。白は平然とした表情をしていた。
(ど、どうやって脅したんだ?)
白は不思議そうな表情をしている。
(いかん。いつの間にか綾辻家のパワーバランスが変わっている……一人ならまだしも二人の貧乳娘に負けるなんて)
ドガッ、と鈍い音が立麻の後頭部からした。
「いてっ!」
振り向くと、そこには綾が立っていた。
「何故殴る!?」
「なんとなくだ」
(ちょ、超能力でもあるのか……この貧乳娘は)
ドガッ、と、もう一発殴られた。
「さっさと風呂に入れてこい!」
立麻は複雑な表情をしながら、風呂のお湯を入れに向かった。
風呂が沸くまでの間、立麻は白と一緒に部屋の中にいた。
二人は人形の置物のようにポツンと座っていた。
「お前先入れよ」
「何に入るのじゃ?」
立麻は間抜けな表情をしていた。
「何って風呂だよ。風呂」
「風呂とはなんじゃ?」
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