1ページ目!二度目の初対面
――刀身の先端が、現れた。
都市の中心に位置する大型デパートの屋上。白いタイルが眩しい地面。それを囲むように張られた金網。百円を入れることで使用可能な望遠鏡が数台、等間隔で設置されている。
しかし、現刻は深夜帯であるため、それらは輪郭がハッキリと写らない状態だ。
だからこそ、それが余計に映えて写った。
空間を割って現れた、これでもかと言わんばかりに長い刀身が。
やがて、その空間から刀を握る真っ白な手が現れた。あまりにも真っ白なものだから、どこか死者を連想させた。
その空間から姿を現そうとするそれは、まるで自力で卵から出ようとする動物のようにも見える。
しかし、中から現れたのは人間だった。いや、半人とでも言うべきか。
まだ幼い顔立ちをした、年にして十歳にも満たない少女。身長もその年齢に相応したくらいの小柄な身長。髪型は短めの白髪で、バッサリと切り落とされたようなその髪を見る限りでは、お洒落に対する気遣いは少々乏しいという印象を受ける。
そして、その髪の天辺からは、黄金色の毛を生やした狐の耳が顔を出していた。可愛らしい耳ではあるが、人の頭から生えていると考えると不気味だ。
白を基調としたその服装は巫女装束のようだが、袴が黒いせいか剣道の胴着と袴にも見える。
凛とした眼差しはどこか勝気な印象を受ける。恐らくその瞳の色が異色だったからだろう。
少女の瞳の色は燃え盛った炎を写し取ったような、緋色の瞳をしていたのだ。凛とした眼差しにこの緋色の眼。道理でそう印象受けるはずだ。
その小柄な身長に不釣り合いな長い日本刀を片手に、少女は望遠鏡のある方へと足を進めた。
子供が上がらぬよう設置された金網の、天辺に難無く飛び移る。
そこから見える光景は、まさに絶景と言えよう。
夜の町に点々と輝く人工的な光。それが何とも美しく映えた。
喧騒が見られないため、自然と心が落ち着く。しかし、交差点を行き来するあの雑踏を思い出すと、どこか不気味にも思える。
その少女は、町を一眸していた。
望遠鏡を使わずに肉眼のままで一眸しているのだから、これまた不気味なものだ。
しかし、どうやら少女には見えているらしく、ボソボソと感想を口にしていた。
一つ一つに、それこそ人一人ずつに感想を口にしていた。やはりこの少女、どこか不気味だ。
と、少女が一眸していたその目を止めた。
シュン、と、緋色の瞳が鋭い目付きに変わる。
その瞳が捉えたものは、この絶景とは大違いのまるで見映えのない。ごく普通の高校生だった。
少女にはその高校生が珍しく見えるのだろうか。
「……“青い“」
ふと、その高校生を見て、少女は意味不明な感想を呟いた。
呟いてから一間も空けずに、少女は夜の闇に飛び降りた。
一般人なら確実に即死するであろうその高さから、少女は飛び降りた。
その“青い高校生“に会いに行くように。
こうして、
非日常の世界から訪れたその少女・白は、
日常の世界に住むごく普通の高校生・綾辻立麻と、
出会った。
全てはこの出会いから始まる。
この出会いから始まったのだった。
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