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東方神記録 作者:ドラゴン

地上の都

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7/10

八雲と八意

やっぱりね、最近は忙しいんですよ。
テストもあるし、ほら勉強が……。



はい、ずっと遊んでました。
では、今回も……

ゆっくりして逝ってね!
 ゼウスは兵士の姿に化けていた妖怪達、その長と思わしき妖怪と顔を合わせていた。
 近くにあった椅子にお互い座り、向き合っている。
 目の前の妖怪に目を向けながら、ゼウスは能力を展開し、もしもの事態に備えている。
 神とは言え、こうやって妖怪と向き合う機会はあまり無い。なにより、ここは敵地のど真ん中。警戒して当然だろう。

「……それで、手を組むとは?」

「そのまんまの意味だ」

 椅子に腰掛けている妖怪は腕を組みながら答えた。

「我々妖怪は、ここ都をどうにか出来ないかと模索しているんだよ。人間は大好物だからな」

 そのセリフに、ゼウスは首を傾げる。

「普通に攻め落とせば宜しいのでは?何やら人間は知能に長けているようですが、その他の性能に関しては恐るるに足らないかと。私と手を組む必要性は見当たりませんね」

 やはり油断させる為の口実か?と、その妖怪の行動に注意しながら目を細める。
 対して、その言葉に妖怪は首を横に振る。

「奴らは最早、神・妖怪に並ぶ一大勢力と考えた方がいい」

「……どういう事です」

 ゼウスは顔をしかめた。
 確かに、人間は知能が高いのだろう。だからこんな都市を作れたに違いない。だが、言ってしまえばそれだけだ。真っ正面から叩けば潰せるものだと思っていた。
 だが、神と妖怪に並ぶとは、一体どういう意味なのか。

「奴らの中の……永琳と言ったか?」

 永琳。赤と青の服を着たあの女が頭に浮かぶ。

「奴がこの都市の要であり、知能であり、兵器だ。奴は能力という存在を持つ、普通の人間とは違うんだよ」

「人間が能力を?」


 それを聞いて鼻で笑う。
 能力がどういうものなのか、この妖怪達には理解できていないのか?と。

「能力は神の力、たかだか人間風情に能力が宿るわけ」

 そこまで言い、言葉が途切れた。

(そういやァ、なんで龍神様は俺を地上に向かわした?)

 ゼウスは疑問を感じた。
 龍神は神を統べる最高神であり、それ故、生物の一種如きに気を割く時間など無いのだ。それなのに龍神が命令を出した、という事はそれは龍神にとって無視出来ないから・・・。

「奴らは月に行こうとしている」

「月?」

 その単語を聞いたゼウスはまたも鼻で笑った。
 あまりにもおかしいのだ、月に行く?どうやって?たかだか人間が?
 どう考えても無理だろう。
 まず、月に行くには宇宙を越えずしては行けない。酸素が無くなれば地上に住んでいる人間は死に絶えるだろうし、それに重力の力もあり、地球から離れる術など無い。
 宇宙空間ではありとあらゆる生物は動きを封じられ、妖怪ですら動けない。
 それに、とゼウスは付け足す。

「あんな馬鹿でかい壁で囲っている時点で、奴ら人間が妖怪より下、という事を主張していますね」

「ツクヨミ」

 その名前を聞いたゼウスの眉が動いた。
 ツクヨミ……確か行方が知れなくなった神の一人だった筈。
 なぜその名前が?

「最高神の一人、ツクヨミ。その存在がこの都市にいる」

 今度こそ、ゼウスは驚愕を露わにした。目を大きく開き、思考を張り巡らせる。
 ツクヨミがこの都市に?
 龍神様からの命令では無い筈。
 なぜこんな場所に?

 いくら自問しても答えが分かることは無かった。

「我々妖怪のリーダーもツクヨミという名前だが、偽名でな。本当の名前は『八雲』」

 八雲。
 その名で思い出すのは、昔からいる大妖怪。
 その大妖怪は生き絶える瞬間に転生を図り、生まれ変わると同時に記憶を失う、代わりに力をつける。非常に厄介な妖怪。

「八雲様が何回か忍び込んだのだが、八意永琳。奴に気付かれてしまうのだ」

 八雲と八意。
 この二人の実力は知らないが、互いに各派閥の頂点。
 この妖怪達は八雲側。この同盟行為も、八雲に絶対に勝たせる為のものなのだろう。
 だが、ゼウスに話したのだけは失敗だった。戦闘好きであるゼウスがこの機を逃す筈は無い。

「!!」

 それは妖怪が何かの動作を起こす事より早かった。
 一瞬にして、ゼウスの周辺が吹き飛んだのだ。
 机や椅子は粉々になりながら拡散していき、座っていた妖怪も遥か先に吹き飛んでいく。
 それだけでは無い。ゼウスは一歩で、一匹の妖怪の懐へと飛び込むと、その手に持っていた無線機らしきものを奪い取り、能力を付加させた拳を腹に叩き込む。
 力を入れていないその攻撃は能力によって強化され、敵を拳から壁へ跳ね返す。
 くの字に折れ曲がり、吹き飛んでいく妖怪は壁に激突し、意識が消えた。

 全ての妖怪が攻撃体制に変わる。妖力が溢れ、殺気が膨れ上がる。
 常人なら気絶でもしそうなその空間の真ん中で、ゼウスは平然とした表情のまま、その無線機に耳をつけた。

「あ、もしもし?こちら『妖怪の敵』、ゼウスでーす。八雲さんって方に伝言を頼めますー?『こちらは手を組むつもりは無い、徹底的に殺し合う』です。では、宜しくお願いしますねー」

 言うだけ言い、ゼウスはその無線機を破壊した。
 バラバラと音を立てながら、その残骸は地面に落ちていく。
 妖怪の目の前で正々堂々と喧嘩を売ったゼウスは、うっすらと笑みを浮かべながら妖怪達へ向かい合った。

「さて、貴方達は如何なさいます?」

 その言葉に首を傾げた妖怪達。

 ふと、その耳に大量の足音が聞こえてきた。

「ここは人間達の場所ですよ?無闇に妖力を放出すればどうなるか、分かりますよね?」

 このおびただしい数の足音は、妖力を察知して駆けつけてきた人間のもの。

「チッ!」

 一匹の妖怪が舌打ちをすると、高々と手を上げた。
 それを合図に、妖怪達は反対側の扉へ飛ぶようにして駆け込んでいく。
 そして、妖怪で埋め尽くされていた部屋は、ものの数秒でゼウス一人だけとなった。
 先程の扉を見ながら、ゼウスは笑みを浮かべた。まるで、悪戯を成功させた子供のような笑顔。

「ふふふ……たかだか人間風情が、妖力なんて探知できるわけないでしょう・・・」

 確かに足音らしき音は聞こえた。だが、それは足音では無い。
 何か物が落ちて、上から下に物が叩きつけられた音。その正体は、先程ゼウスが吹き飛ばした『机や椅子、そして妖怪』。

「んー、やっぱ気持ちいいものですね。さて、これからは忙しくなりますよ」

 人間と妖怪。 八意と八雲。
 さて、どちらを先に潰そうか。
 ゼウスは、楽しそうに笑みを浮かべながら脳を動かしていた。
 そこに

「おい」

「待ってくださいね、考えを纏めますから」

「おい」

「待って下さいって」

「おい!」

「あーうるさいですね!なんです……か……」

 怒号と共に振り向いたゼウスは、それを見て固まった。
 気付けば、大量の人間の兵士に囲まれている。

「えっと……よく分かりましたね?」

「そりゃまあ、騒ぎ声が聞こえてきたからな」

 あんだけ暴れれば当たり前か、とゼウスは納得する。
 よく考えてみれば、物が落ちる音と足音を間違えるか?
 とすれば、あの妖怪達は本当の足音を聞いていたのか・・・。

「……私はどうなるんですかね?」

「幽閉」

「ですよねー」

 ゼウスはニコリと微笑み、そして、重力に体を預けるように『ゆっくりと倒れていく』。
 そして背中が床に着いた……その瞬間。

「!」

 一瞬にして、床に弾かれたかのように上空へ跳ね上がった。
 突然の行動に兵士達は頭がついていかず、武器を構える事すら許されなかった。
 天井へ弾かれたゼウスは腕を前方に伸ばす。天井へ掌が当たる。直後、その屋根を守る防壁はいとも簡単に破壊された。

「ふふ、跳ね返す力はこんな事にも使えるんですよ!」

 一段上の階へ降り立ち、下にいる兵士達へドヤ顔で言った。
 兵士達は舌打ちをすると、踵を返しその部屋から去っていった。恐らく、此方へ来るのだろう。

「さて、では追い付かれる前に退散すると……!」

 突然の殺気。思わずゼウスは後方へ飛んだ。
 一本の矢が、先程まで自分の頭が合った位置を、空気を切り裂きながら飛んでいく。その矢は何処までも飛んでいき、壁に追突しても、その壁を食い破りながら直進していく。
 矢が飛んできた方向を見てみると、そこには誰もいない。

『さて、第二ラウンド。やられっぱなしは性に合わないのよね』

 甲高い声が何処からか聞こえてくる。
 ゼウスはこの声を知っている。

「八意 永琳……でしたか?」

 返事は来なかった。
 代わりに、一本の矢が上空から飛来してくる。
 その矢を跳ね返し、周囲へ注意を向ける。

「無視ですか、どうでもいいですが、私への攻撃は無意味ですよ」

『此方は貴女を逃がさなければ問題無いのよ、後もう少し粘ればいいだけだしね』

 粘ればいい?その言葉に、ゼウスは首を傾げる。
 そして、脳内に一つの名前が浮かんできた。

 ツクヨミ。

 あれは月を守護する月の神にして、上位に君臨する神。
 もし、ツクヨミが本当にこの都にいるのなら、ツクヨミはこの人間達の味方なのでは?そして、その人間の敵に回った俺は……。
 嫌な考えがゼウスの頭をよぎる。
 ツクヨミはゼウスに劣るとは言え、その実力は確かなもの。普段ならともかく、今の劣化したゼウスなら、恐らくは。

(クッソが……さてどうすっかな……)

 ゼウスが思考を張り巡らせている間に、四方八方から矢が放たれていく。
 全てを跳ね返していくが、その矢は本体を捉えることは無い。つまり、本体である永琳はこの場にいない事になる。

「ふむ、人間の科学力というものですか?全く、どんなものを取り付けているのやら」

 どんな兵器を使っていてもゼウスへは届かないが、此方も同様。相手が見えていなければ攻撃が届かない。
 せめて神力が使えれば・・・、とゼウスはあの時の、体の内部で何かが暴れまわっているかのような痛みを思い出しながらそう思う。
 神力さえ使えれば、この部屋まとめて破壊できるのだが・・・。

(しょうがないですね、全身からではなくて、腕のみに神力を集中させてそれを武器にしましょう)

 腕に、肉体の中心に宿る神力を集中し集合させる。
 ここまでは上手く出来た。さて、次だ。
 神力を体の外に放出し、武器としてあつかーーー。

「あッッッ!?」

 その時、異変は起きた。
 肩から肘にかけての部分が破裂した。
 血が飛び散り、白い骨が粉末となり赤い血と空中で混ざり合う。肩の断面から、血が滝のように流れ落ちてゆく。
 神であるゼウスは出血多量では死なないが、全く大丈夫との訳ではない。
 鋭い痛みが肉体を蝕む。

『あら、自爆かしら?』

 ゼウスが腕の痛みに気を取られている間に、扉から紫色の気体が流れ込んでくる。
 その煙に気がついたのは、煙がすぐ側まで近付いてきた時だった。

(なんだこの煙……?いや、まずはこの現象か。なんなんだ?神力を出そうとした瞬間に自滅する……一体……?)

 とりあえず、神力を操るのは止した方がいいか。と結論を出した所で、改めて紫色の煙へ目を向けた。
 恐らく何か効力があるのだろうが、跳ね返す程度の能力を持っているためそんなものは意味をなさない。

(殺したい所だが……今じゃ難しいな……とりあえず、ここから脱出することに集中すっか)

 ゼウスは足に力を入れて、地面を蹴った。芯の細い体が空中に躍り出る。
 そして、ゼウスは天井へ手をつけ、能力を使用して破壊した。
 また次の階に脱出すると、もう一階、もう一階と天井を破壊しながら突き進んでいく。
 こうすればいつか外に出るはず。
 出口は、すぐそこだーーー。






 八意 永琳は巨大な機材の置いてある小部屋にいながら、ノートのようなものに記録を取っていた。

「壁を硬質化させる特殊気体によって強化された物質は意味をなさない、よって硬さは意味なし・・・直撃したものを溶かす特殊矢は意味をなさない、よって酸は効果なし……と」

 それは、あの女の妖怪の記録だった。あの妖怪はこれまでのものとは規格外の力を持っているらしく、どんな方法でも傷つけられなかった。

(純粋な破壊力も意味は無かったし、さて、どうしようかしら)

 永琳の中には、幾つかの仮説が成り立っていた。
 攻撃力や防御力を下げる、または上げる力。
 無力化する力。
 有力なのはこの二つだが、まだ永琳は悩んだ。
 それは、彼女に直撃した矢の軌道だ。あの妖怪の体に触れた瞬間、急激に向きを変えて何処かへ飛んでいった。

「ものの向きを変える力……という線もありえるわね」

 都の知能、永琳は凄まじい速度で考えを纏めていく。だが、決定打を与えられそうなものは思いつかない。

(唯一、アレがダメージを負ったのは本人の自爆・・・自爆したって事は制御が難しいのかしら・・・?)

 険しい表情でモニターに写っている部屋を眺めながら舌打ちした。

「……全兵士に告ぐ、これ以上の深追いは止めて、所定の位置へ戻って。」

 それは苦汁の決断だった。
 ここで戦闘させ続ければデータが取れて対抗策が見つかるかもしれない。
 だが、同時に兵力を削ってしまうことになってしまう。
 いつ妖怪共が攻めてくるか分からない状況で消耗してしまうリスクは避けたい。
 破壊しながら逃げていく妖怪をモニター越しに見ながら、永琳は言った。

「いつか、お前の能力を暴いてやるわ。そして対抗策も……ね」

 すぐさま、永琳は取れたデータを照らし合わせていった。




 その頃、ゼウスは

「……あれ」

 道に迷っていた。
大切なのは文章能力じゃない、やろうとする心だ!←文章能力のない人間の戯言である。
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