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この小説は完全なフィクションです
あなたが好き
作:志内 炎


 それはどうしようもなく、わがままな意見だ。
 お互いの誕生日も、クリスマスも正月もバレンタインもそのお返しも会えず、
「そんなのは俺には関係ない」
と言われ、
(そういう考えなら仕方ないよね……)
と納得したふりをして、いい子になる。
 仕事上、しかたない。
 もう大人なんだから。
 他人の決めた記念日に踊らされるなんて、ねぇ。
 大人だもの。ましてや子供の頃から優等生だもの。いい子でいるための言い訳なら、いくらでも並べたてられる。
 他人の評価は勝手だ。
「しっかりしてるもの」
「一人でやりたい事もたくさんあるでしょう」
「仕事も大変だもんね」
「男で変わるタイプじゃないよね」
「そうでもないよ」
曖昧に笑って答える。
 でもイメージって怖い。
 一番知っていてくれるはずの彼でさえ、本当の私を見ない。
「お前らしくないよ」
私らしいって何?駄々をこねて、拗ねている私が事実で、そんなことはしない私は、あなたのイメージの中にしか存在しない。
 定番のセリフ。
「お前は一人で大丈夫だ」
そんなわけないじゃない。
 連絡のとれない日には、どこかで誰かと楽しくやっているあなたを妄想し、引き裂かれそうになる心を。
 約束がダメになった時には、大声で不満を叫びたいその声を。
 昔のカノジョとの思い出を垣間見てしまった時には、切なさに溢れそうになる涙を。
 どれだけの痛みで殺しているかを知らないくせに。勝手な事ばかりいう。
 それでも。
 声が聞きたい。必要とされたい。愛されたい。できるだけ、そばにいたい。信じたい……
 だから私は曖昧に笑う。

 真夜中に目が覚める。
 腕の中で眠っていたはずが、目に入るのは、背中。呼吸に合わせて、肩の骨がゆっくり上下する。
 空調の作動音。ブラインドが天井に作る、縞縞の薄明かり。乾いた空気。あなたの匂い。
 どんな夢を見ているんだろう。この背中は、毎日どんなふうに動いているんだろう。明日は誰と言葉をかわし、何に集中するんだろう。
 そのすべてが許せない。
 私以外の誰も何も、空気でさえも、あなたの回りに存在しなければいいのに。
 静かにベランダに出て、空を見る。真夜中でも街の明かりが邪魔をして、星なんて見えない。
 (天の川はあの辺りかな)
地球から見ると、年に一度しか会えない織姫と彦星も、違う角度から見れば三秒に一度、会っているらしい。
 それに比べれば、人間の恋愛なんてすべてが、遠距離だ。仕事や、勉強や、付き合いや、事件や事故や……様々な事に引き裂かれ、大切な時間を失っていく。
 部屋に戻ると彼が目を覚ます。
「何してたの?」
「空を見てた」
小さく頷いて腕を広げる。
「おいで」
 その腕に包まれて、目を閉じる。
(このまま世界が終わればいいのに)
 それでもきっと朝は来て、代わり映えしない日々が繰り返される。私はいい子でいるために、嫉妬の炎がこの身体からはみ出さないように、ただ曖昧に笑って受け流す。愛されているために。
 わかってる。
 あなたが好き。
 それは誰にも、私にも変えられない事。
 そしてどうしようもなく、わがままな事。


考えてる事は大して変わらないのに、大人になってしまう……そんなところを書きたいと思いました。













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