☆3 「へー。」
「へー。それじゃ、先生たちの高校の時の担任が……」
「そう! 何を隠そう、なんと君の母上、ななこ先生だったんだヨ!」
初めこそ、先生たちの登場や母さんとのやり取りに面食らっていた僕だったけれど、いまはだいぶ落ち着いていた。
他の先生方が母さんを中心に談笑している中、僕と泉先生は少し離れたところで今の状況を整理するべく、話をしていた。
「そうか。ってことは、先生たちはみんな、僕の先輩でもあるんですね」
僕の義母、七ヶ瀬ななこ(旧姓・黒井)が以前陵桜学園で教師をしていたことは知っていた。
まだ『黒井先生』時代の母さんにも会ったことがあるからね。
けれど泉先生たちが元・教え子だっていうのは初耳だ。
「うん。そのとーりだよ!」
そう言って胸を張る泉先生。
うわー、改めて見ると、先生ほんとぺったんこ。
「……君、いま何か凄く失礼なこと、考えなかった?」
心を読まれた!? 僕は慌てて首を横に振ると、急いで話を変えることにした。
「そ、それにしても! いくら高校の時の担任だったとはいえ、わざわざ見送りに来てくれるなんて、先生たちずいぶん義理堅いですよね」
母さんは三年前、父さんとの結婚を機に学園を退職したから、僕の知っている限り先生たちと母さんが教師として一緒に働いていたりしたことはないはずだ。
だから高校時代から五、六年経った今でも交流があるっていうのは、なんというか、珍しい気がする。
「あー、そうかもねー。でも私たち、卒業後も先生と一緒に旅行したり、披露宴の二次会に参加させてもらったりしてるしねー。それに、個人的には今だにネトゲ仲間だったりもするから、単純に義理ってわけでもないのダヨ」
「そ、そうなんですね……」
なんか、初めて知った上にちょっと気になるセリフが幾つかあ……。
「ままのばかーっ!」
突然、空港のロビー全体に響く甲高い声があがった。
話の途中にも関わらず、先生が驚いたような顔できょろきょろしている。きっと声の主を探しているんだろう。
普通なら、人並みに野次馬根性のある僕も一緒になって辺りを見回したりしただろうけど、残念ながらというか何というか、僕にはこの声の主に心当たりがあった。
「まりん……」
僕はため息をついて声の主の方を向く。
泉先生も僕に釣られたようにそちらを向いた。
そこはもちろん、他の先生と母さんがいる辺りだ。
「まりんおにいちゃんといるのー! ばいばいするのやーなのーっ!」
「……あー。なんていうか七ヶ瀬くん、意外と女泣かせだね」
「やめてくださいよ……。でもさすがに、ちょっとマズいかな」
さらに張り上げられたまりんの声に、周りにいる人たちが何事かとばかり注目しだしていた。
「とりあえず、あっちに行った方が良いんじゃない……?」
泉先生の提案に、僕は二度目のため息をつきながら、頷いたのだった。
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