☆2 「五月の、初め。」
五月の、初め。
世の中はGWに突入し、僕は一人暮らしをすることになった。
毎年GWに、僕たち家族――父、母、僕、妹の四人――はイタリアにいる祖父母の所へ遊びに行くことが慣習になっていた。
僕も毎年一緒に行っていたのだけれど、今年はちょっと、事情が違った。
『ええっ! 母さんが倒れた!?』
クラスメートの名前もまだ覚えきれない四月の半ば過ぎに、お祖父ちゃんからかかって来た国際電話。その電話口で、父さんが叫んだ。
内容が内容なだけに、僕は一瞬ギクリとする。側にいた母さんも、表情を硬くしていた。
『……どうやら、命に別状はないらしい。今は特に入院もしてないそうだ。だけど、ねぇ』
心配だよ、と電話を終えて戻ってきた父さんが言った。
『そうやね……。お二人とも、もうお年やしなぁ……』
普段、無駄なくらい快活で、めったに顔色を変えたりしない母さんも、珍しく困ったような顔をして、言った。
『……ねぇ、ななこさん。それと、ななせ』
何か思いついたらしい父さんが、僕と母さんに声をかけた。
『良い機会だから、僕たちもしばらく、向こうで暮らすことにしないかい?』
『向こうって……イタリアで?』
尋ねた母さんに父さんは言った。
『そう。幸い僕の仕事は日本にいなくても何とかなるしね』
『そやなぁ……。思い切ってそうした方が良いかもな。……けど、ななせは、どうする?』
そして、僕は日本に残る事にした。
☆☆☆
出発の日。空港まで家族を見送りに来た僕は、そこで見知った顔をたくさん見つけ、少なからず驚いた。
「おっ。七ヶ瀬くん! ヤッホー」
「こらっ! アンタももう教師なんだから、そんな適当な挨拶すんじゃないわよ」
「あー、ななせくんだー!」
「あらあら。うふふ」
「せ、先生たち? どうしてこんなところに……」
出発の手続きをしにいった父さんたちを待っていた僕の所に、担任の泉先生を筆頭として、僕が通う私立陵桜学園の教師が四人、近づいて来た。
先生たちは皆私服で、楽しそうにしていた。
「ああ、もしかして、先生たちみんなで旅行とか?」
僕は思いついた事を言ってみる。この四人の先生たち――さっきの声の順番に、泉先生、柊先生、つかさ先生、高良先生――は、全員女性で歳も若く、おまけに(好みの問題はあるにしても)美人揃いってことで学園内では有名だった。
またそれとは別に、先生たちは仲が良いことでも知られていたから、ひょっとしてと思ったのだけれど。
「そうねー。それはそれで楽しそうなんだけど、でも残念ながらハズレよ」
ちょっと苦笑混じりに柊先生が答えてくれた。
「そうじゃなくて、実はね……」
「泉に柊姉妹、それに高良まで! 皆こんなとこでなにしとるん?」
「あ、母さ……」
『黒井先生、お久しぶりです!』
「……ふぇ?」
僕は思わず変な声をあげていた。
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