主人公の七ヶ瀬ななせ(♂)以下数名オリジナルキャラが出てきますが、基本的にはらき☆すたのキャラクターたちが動き回る小説です。
ただしキャラクターは見た目と性格以外の設定は大幅に変わっているので、注意して読んでいただければと思います。
☆1 「大丈夫かなぁ?」
この向こう側にあるものを、僕は知りたい。
☆☆☆
四月になった。
僕は高校二年の始業式と同時に、十七歳になった。
十七歳。
そろそろ彼女の一人でも欲しいところだけれど、今のところ何の宛もない。
男の友達は無駄なくらいに多いのに、女の子は知り合い程度ならともかく、親しく話をするような子は全然いない。
これじゃ折角の共学生活も何の意味も無い……と言うのは言い過ぎで、例え話が出来なくても、周りに女の子がいるのといないのでは、それだけで人生の密度が変わって来るものなのだ。
それは中学の三年間、男子校(しかも寮制)という閉鎖空間で過ごして来た僕には、とても素晴らしいものに思える。
まあもちろん、親しく話せる女友達がいるに越したことはないし、もし彼女なんか出来た日には天にも昇る気持ちになるだろうことは間違いないのだけれど……。
しかし差し当たり、僕が気をおいて話が出来るのは男子だけだし、話しかけて来るのも男子だけだ。
そんな訳で、新クラスでも一番初めに僕が言葉を交わしたのは、後ろの席の野郎だった。
「よお、七ヶ瀬! また同じクラスだな!」
「……えーと、どなた様でしたっけ?」
「……お願い、どうか思い出して……」
「冗談だよ白石。また一年、よろしく」
話しかけて来たのは、去年同じクラスで仲良くなった白石みのるだった。
糸目でぼぉっとしたような風情だけど、意外と(無駄に)テンションが高かったり、色々とバイトをしてたりする。基本的に悪い奴じゃないはずだけど、なぜか良く皆に忘れさられる可哀想な男だ。
「良かった……。本気で忘れられたかと思った……」
ほっと胸を撫で下ろすような仕草をする白石。どうやら本気で心配だったらしい。
「そんな訳ないだろ。まあ、話しかけられるまでは忘れてたけどね」
「泣こう……」
そんな他愛ないやり取りをして、しばらく時間が過ぎたのだが。
「……先生、来ないな」
「ああ」
とっくにHRの時間は過ぎているのに、担任の教師が来る気配が無かった。
最も、クラス分けが掲示されていた紙に担任の名前も書いてあったから、誰だかは判っているんだけど。
「ほら、担任あの人だから。たぶん遅刻して……」
ガラッバンッ!
僕がそこまで言った時、教室のドアが勢い良く開いて、我らの担任が現れた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
肩で息をして、髪の毛はボサボサ。寝不足なのか、よく見ると目の下にクマがある。
これはどう見ても……と誰もが思った、その瞬間。
「ち、遅刻じゃない……ヨ!」
『遅刻だろっ!』
この時、僕たち新2年B組の心が初めて一つになった。
「ち、違うよ! 地下洞で迷っていた初心者を安全な街まで案内してたら遅れたんだよ!」
「先生……せめてその『地下洞』は『道』で、『初心者』は『おばあさん』とかに、ならなかったですか……?」
僕は席がたまたま教卓に一番近い位置だったから、クラスを代表して先生に突っ込む。
これじゃ遅刻の言い訳どころか、何で遅刻したかまで丸わかりだった。
「あ……。それは、思い付かなかったヨ。ナハハハハッ!」
悪びれる様子もなくニヨニヨと笑う先生。
僕たちは誰からともなく、
「はぁ……」と深いため息をついた。
――これが、僕たち2年B組と、担任である泉こなた先生とのファーストコンタクトだった。
そして、僕個人にとっては、人生を左右する、波乱に満ちた一年の始まりだったのだけど……当然、この時はまだ、僕はそんな事ちっとも知らず、
「この先生、大丈夫かなぁ?」なんて、思っていたのだった。
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