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廃遊園地のウワサ 作者:菱沼あゆ
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羽田さん、行きますよっ!

 


 夏になると、絶対言い出す奴が居るのはなんでだろうな。

 狭川飛鳥さがわ あすかは懐中電灯を手に、その錆びた大きな門の前に立っていた。

 五年前に廃園になった遊園地、裏野ドリームランドだ。

 そこら中が草まみれなせいで、虫の音も大音量だったが、それよりも更に、みんなの話し声が騒がしく、全然肝試しな感じがしない。

 今日は此処で、小学六年のときの同窓会を兼ねて、肝試しをやることになったのだ。

 そんなしょうもない企画に、クラスの半数以上が集まっている。

 いやまあ、私もだが、と思いながら、飛鳥は廃墟と化した遊園地を見上げていた。

 少し高台にあるので、街の灯りからは遠いが、何処までも突き抜けるパチンコ屋のレーザービームと月明かりで、ライトをつけずとも、ぼんやり景色は窺える。

「ねえねえ、なにか出たらどうする?」
と浴衣姿の椎名まゆが、飛鳥の肩に手を置き、テンション高く言ってくる。

「この状況だったら、出なかったらどうする? の方が正しいと思うんだけど。
 此処まで来てなにもなしとか、つまらなくない?」
と飛鳥が言うと、

「大丈夫だろ」
と今日の会の企画者であり、小学校のときからお調子者だった島田智樹しまだ ともきが機嫌よく言ってくる。

「今日のメインは花火だ。
 去年見たんだよ。

 此処の遊園地、花火大会のとき、ちょうど照らし出されて綺麗なんだ」

「へー、島田、それ、デート?」

 それ、デート? と女子たちがにやにや笑いながら突っ込んでいた。

「……それがデートだったら、今日、お前らを誘ってないだろ」

 今日もその彼女と来ているはずだ、と島田は主張する。

 いや、既に別れているというのもアリだと思うのだが。

 まだ誰とも付き合ったことがないらしい島田には、付き合っても別れることもある、という想定がまだ出来ないようだった。

 高校生とか、男子の方が夢見がちなお年頃だったりするからな、と思いながら、飛鳥は、まだ揉めている女子たちと島田を眺めていた。

 もしかしたら、この中の誰かが島田に気があって、しつこく訊いてるのかもしれないが、島田はその可能性にまるで気づいてはいないようだった。

 島田が、
「昼間、俺と神崎が此処に来て、怪しい噂のある七つのアトラクションの前にスタンプを置いてきたから、みんな、これにスタンプを押してくるんだ。

 最後は観覧車の前に集合だぞ」
と言って、気のいいヤンキー、神崎悠馬かんざき ゆうまと二人でスタンプカードを配り始めた。

 ちゃんとパソコンで印刷されたもので、可愛い一つ目小僧やヒトダマのイラストまでついている。

「暇ね、島田」
「暇ね、神崎」

「こりゃ、彼女居ないわ」
と女性陣は笑いながら、辛辣なことを言う。

 うるせーな、と言った島田は、
「じゃ、男女ペアで、五分置きに出発だ。
 クジを引け。

 そこの、やる気のない奴も」
と飛鳥の側で、まったく他所を向いている麻生由真あそう ゆまの頭を手にしていたくじ引き用の箱で小突いた。

 麻生由真は、名前もちょっと女の子のようだが、顔も、子供の頃は女子的に可愛らしかった。

 それが、高校二年になった今では、透き通るように肌の綺麗なイケメンになっていて、ちょっと近寄りがたい雰囲気になっている。

 自分は高校でも、部活の美術部でも同じだし、免疫があるが、小学校以来会っていない女子たちは、声をかけづらいらしく、由真からは、ちょっと距離を置いていた。

 昔からよく島田とペアで居る、神崎が女子用のクジの箱を持ってきたので、飛鳥はそれを引いた。

「おお。
 飛鳥は六番。

 俺は残りの八番、残念だ」
と言った神崎は、おーい、六番、誰だー? と言う。

「俺」
と側に居た由真が広げた白い紙を見せると、まゆが、

「飛鳥は由真とペアか。
 いいなあ」
と言う。

 だが、横で、ぼそりと由真が言ってきた。

「ペアじゃないよな」

 もうひとり居る、と言う。

 そうだ。
 由真とこの遊園地を歩くのは危険だった、と飛鳥は身構える。

 何故なら、由真は自分と同じように霊が見えるからだ。

 やがて、みなゾロゾロと錆びた門に向かい、歩き始めた。

羽田はねださん、行きますよ」
と由真は飛鳥の隣を見て、話しかけていた。

 あーあ、と真横で男の声がする。

 暗闇の中、ぼんやりとした人影が、
「……此処、嫌なんだけどなあ……」
と文句を言っていた。

 霊なのに、闇夜でも見えにくいとはめんどくさい人だ、と思っていると、その霊―― 羽田は、
「ま……、此処は、飛鳥と出会った思い出の地だけどな」
とにんまり笑ったようだった。

 そう、自分は羽田と此処で出会ったのだ。

 廃園になる直前、五年前の裏野ドリームランドで――。


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