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お嬢様と秘密の恋。 作者:庚 真守
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12/15

残念な令嬢

 四時限目終了のチャイムが鳴った。
 ――長かったな……今日の授業。
 いや、授業のせいではない。今朝はいろんなことがありすぎて、キャパシティオーバーだ。
 この先の学校生活やっていけるのか不安を抱えたまま、今日も昼休みがきてしまう。

 隣の席とはいえ気持ちの上では、真雪が何光年も遥か遠くにいるような気がする。
 だけど、伊達に言われたではないか。

 ――がんばれ、あたし! 真雪さんを誘うのだ!
 萌花は、自らを励ましつつ弁当の包みを抱える。
 脳内で何パターンも話しかける言葉を考えた。
 断られても大丈夫。そのシチュエーションも想定内だ。
 自らを励ましつつ弁当の包みを抱える。
 脳内で何パターンも話しかける言葉を考えた。
 断られても大丈夫。そのシチュエーションも想定内だ。

「あの……真雪さん。お、お、お弁当……一緒に食べませんかっ!」
 やだ、噛んじゃった。
 それに、なんでクラスメイトに敬語使っちゃうんだろう。
 挙動不審にもほどがある。
 噛み過ぎだし、声がひっくり返ったし……いろいろ残念すぎて、もうダメかも……。
 真雪は、少し驚いたような顔をして萌花を見ている。突然すぎたのかもしれない。
 さらにクラスでも目立つタイプのグル―プが集まってきた。
「ご一緒しません? 真雪さん!」
「こちらへ、いらっしゃらない」
 すぐ隣にいるのに、その存在さえないかのような扱いだ。まるで透明人間になったような気がする。
 この事態は、考えていなかった。

 ――恥ずかしい。もう逃げちゃおうかな。

「萌花さん」
 ちょっと低めのハスキーな声が、弁当の包みを抱えて抱えて立ち上がった萌花を呼び止める。
「あなた、そこどいてくださらない」
 割り込んできたクラスメイトを押しのけて、真雪は萌花の手をつかんだ。
 真雪を取り巻く子たちだけではなく、教室にいる子たちが一斉にこちらを振り返った。
 何なの……この状況。

「行きましょう」
 周囲のことなど気にとめる様子もない。
 そんな強気な振る舞いすら、彼女の美貌を引き立てている。

「は、は、はい! はいっ!!」
 勢いあまって大きな声になってしまった。
 焦る萌花を見て真雪は、口元がすこし緩んだ。
 もしかしたら、少し笑ったのかもしれない。
 この状況、まるで真雪を独り占めしたみたいだ。
 嬉しいことは、嬉しい。だけど……。

 ――クラスの子たちの視線が痛い。

 強引に手を引いて、席を立たされる。
 片手に弁当の包みを抱えて、真雪に引っ張られて教室を出た。
 もの言いたげな萌花に気づいたのか、真雪はあっさりと言ってのけた。
「別に約束してるわけじゃないわ」
 それはそうなのかもしれないけど……本当にいいのかな。
「外がいいわ。さあ、行きましょう」
 真雪の固い声のトーンが少し和らいだような気がする。……たぶん。



 クラスメイトの視線を背中に感じながら廊下に出ると、他の教室の生徒たちまでもが真雪を振り返る。
 彼女の美しさは、その顔立ちやスタイルだけではない。
 まっすぐに背を伸ばして先に歩く所作の美しさが一際目をひく。



 ――真雪さん、手をつなぐのが好きなのかな。

 二人で廊下を歩きながら、そう思った。
 女の子どうしで手を繋いだり腕を組んだりするのは、この学校ではよく見かける光景だ。
 前の学校では、あり得ないことだ。そんな空気があるから校内でラブレターのやりとりもあるのかもしれない。
 いわゆる同性愛とは違う。女の子同士の濃密な友情とでもいうのだろうか。
 真雪が萌花とそんな友情を望んでいるようには見えない。
 ただ、この状況で黙っているのも気まずい。

「真雪さんって、手が大きいね」
 言ってしまった後で、失敗したと思った。
 女の子に手が大きいとか、背が高いとか……なんて、あまり嬉しいことじゃないかもしれない。

「中学生のころ弓道をやっていたせいね。手だけじゃなくて肩幅がひろくなるの。いやね」
 ――もしかしたら、肩幅のこと気にしてカーディガン着ているのかしら。
 この学校の夏服は、襟が大きくデザインされているから、肩の広さはそれほど目立たないはずだ。
 それでも気になるなら、カーディガンを着ればなで肩には見える。

「あ、あの……剣道部の子も剣ダコとか出来ているよ」
「ヘタだと、すぐにタコができるから」
「真雪さんの道着姿カッコいいだろうな」
 本気でそう思ったのだが、お世辞だと思われたのだろうか。
 真雪は表情が変わらないので気を悪くしたのかどうか、よく分からない。
「えっと……どこか部活入るトコ決めた? やっぱり弓道部かな」
「演劇部に誘われているけど、目立つことは苦手ですの」
「そうだったの……でも、もったいないな」
「萌花さんは、部活どこか決めましたか」
「う……んと、まだ決まってない。前の学校では、家庭科部に入ってたけど……ここ、ないもんね」
「女子高らしいところで言うなら、箏曲部や茶道部がありましたね」
「一度、放課後に見学してみようと思うの。真雪さん、よかったら……一緒に」
「ごめんなさい。わたくし、どこの部にも入らないの」
「そうなんだ……残念」
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