昔の昔の、ず−っと昔のことでした。とてもとても、とてもとーい遠いある国にお城がありました。そのお城には、宝石や金銀財宝の宝物がなによりも大好きな王様がいました。
よその国に宝物があると聞くと王様は我慢が出来ません。
家来の兵隊たちに命令して、その国にある宝物をぜんぶうばってしまいます。そうしてあつめた宝物はみんなお城にある自分の部屋にかくしてしまいます。
「ふっふふ、わしは世界中でいちばん美しい宝物をもっている。なんてわしはステキなのだ」
部屋中を埋め尽くした宝物にかこまれ王様はとても幸せでした。
しかし…王様のために、いっしょうけんめいに戦って、宝物をあつめた家来の兵隊たちは少しも宝物をわけてもらえなかった。
そのため王様は家来たちにたいそう嫌われていましたが、王様はそんなことをぜんぜんしりません。そのわけは、家来たちは王様がとても怖いのです。なにしろ王様は王様です。国中で一番偉いのです。だれ一人として文句がいえません。
家来たちは、王様の前ではいつもニコニコ笑顔をたやしませんでした。だけど…王様がいないところでは…いつもヒソヒソボソボソ。王様の悪口をいっていました。
「あんな王様なんか、だいきらいだ」
「ほんとうだ、あんなよくばりな王様なんかいないほうがいい」
「そうだ、そうだ!王様は自分のことだけしか考えていない。働いても働いても、家来たちには少しも宝物をわけてくれない王様なんて」
「あ〜あ〜」
いつも王様だけが宝物を一人じめ。 そのため宝物がたくさんあっても、王様の国の住人たちはとても生活が貧しかった。
王様の部屋は宝物であふれていました。数えきれないほどの宝物を持っているくせに、王様はまだよくばって世界中の宝物を自分の物にしたいと思っていました。
そのうえ、王様はとても疑いぶかい人だったのです。いちど自分のものにした宝物は部屋の中に隠してぜったいほかの人には見せませんでした。
もしかしたら・・・心の悪い人間に宝物を盗まれてしまう。と、王様は思ったのです。
それで、宝物を隠した部屋の窓という窓をぜんぶ厚い壁で覆ってしまいました。それでも安心できない王様は、たった一つの出入り口、ドアまでもものすごくがんじょうな鍵を掛けてしまいました。
「ふっふふ、これでわしの宝物は安心だ」
ロウソクを立てたほの暗い部屋の中で美しい宝石や世界中の珍しい金銀財宝にかこまれ王様は毎日がとても幸せだった。
そんなある日、いつものようにうっとりした顔で宝物をながめていると王様は、壁の隅から小さな光が漏れているのを発見しました。
「はて?…なんの光だろう」
首をかしげ小指の先ほどの小さな光が漏れる小穴を見つめていた王様は、きゅうに怖い顔をして喉の奥でうーんとうなりました。きっと『どろぼうがわしの大切な宝物をねらって壁に穴をあけたのに違いない』王様はム−っとしました。
「ええ〜い、ゆるさんぞ!−わしのだいじな宝物をねらうやつは」
自分のだいじな宝物をねらう悪いやつ。いったいどんな顔をしているのかな?。
王様は壁にピタッーっと顔を寄せ穴の中を覗きましたが、穴の向こう側は薄暗くてよく見えませんでした。王様は目を細め中の様子を伺っていると、ときどきなにかがキラッとひかっています。そして『ふっふふふ』と不気味な笑い声が聞こえてきました。
その声を耳にしたとたん王様の心臓がドキッと高鳴りブルッと震えてしまいました。その声は今まで聞いたことの無いゾーっとするような声だったのです。
ビックリした王様は恐る恐る壁から離れ光の漏れる小穴をみつめていましたが、薄暗い穴の中でキラリと光ったのは宝物に違いないと思いました。
大好きな宝物がたくさんあると思った王様はジッ−としていられなくなりました。
王様は不気味な笑い声がとても怖かったのですが宝物が気になって仕方がありません。
「ええーい、穴の中にはどんな宝物があるのだろう?」
宝物を見たい王様は勇気を出して壁に顔を寄せ小穴の向こう側に目をこらしました。すると…目がだんだんと暗さになれ、薄暗い穴の中がぼんやりと見えてきました。
「あ!−」
王様の心臓がまたビックリ、ドッキン。
その穴の向こうがわは大きな部屋になっていました。そして、その内には王様とおなじくらい大きい王様と、たくさんの宝物がうずたかくつんでありました。
隣の部屋の王様はこっちの王様にぜんぜんきづいていないようです。手にした宝物をながめながらニタニタと口を歪めていました。
「……!」
王様はこしをぬかしてしまいました。中にいる王様のなんと恐ろしい顔。薄暗い部屋の中でも欲に顔の皮がつっぱり、目がキューンと吊り上っているのがはっきりと分かりました。
まるで…まるでおそろしい怪獣だ。
「なんて怖い顔をした王様だ」
王様はブルッと震えてしまいました。あんなに醜い顔を今までで見たことがなかったのです。
「ああ〜あんなによくばりで、怖い顔をした王様の国の住民は、なんて可哀相なんだ」
ふ−っと、ためいきをついた王様でしたが、壁にピターっと寄せた目はピカッピカッと光る宝物から離れませんでした。
「わしも、あんなにきれいな宝物がほしいな〜」
しかし、内にいる怖い顔をした王様は怖い。だけど…宝物はほしい。王様はいつまでも中をのぞいていました。
すると…どこからか、ヒソヒソと、ないしょ話をする大勢の人たちの声が聞こえてきました。
その声に耳をすましていた王様の顔がニコッとほころびました
「家来たちが王様のためにいっしょうけんめい働いても、宝物は王様が全部一人じめ…」
「あんな欲張りな王様は、ほんとうの王様じゃない」
「そのとおりだ!―ほんとうの王様というのはみんなに優しくて、とても思いやりがあると聞いている。あんなよくばりな王様は、王様の仮面をかぶったにせものにちがいない!」
「そうだ、そうだ−あのにせものの王様なんか力を合わせつかまえて、この国からついほうしてしまえ!」
「はっはは、なんてまぬけな王様なのだろう。家来たちが、あんなに怒っているのも知らないで。はっははは」
こっちらがわの王様は、なんだかとてもゆかいになりました。宝物を一人じめするから罰があたるんだ。王様は大笑いです。笑いすぎておなかが痛くなるほどです。
「わ−わ−!それ、こわせ。それ、こわせ
−」
家来の兵隊たちは、隣の部屋の王様の入り口のドアを力いっぱいたたきましたが、さすがに王様のドアです。ビクともしません。
穴の中の王様も、家来たちのさわぐ声に気づきあわてています。ポケットというポケットに宝物をつめこみ、部屋の中をウロウロとしています。早くこの部屋から逃げだしたいのです
が、たった一つの出入り口、ドアの前には家来たちが沢山います。
「はっはは、これはおかしい」
穴をのぞいていた王様は、おかしいやらあきれるやら大笑いです。
笑いすぎておなかの痛くなった王様は、腹を両手で抱えながら、また穴の中をのぞいてみました。すると…いままで中にいたはずの、王様の姿がどこにもありません。
「おかしいな…?」
首をクイッと傾げ、王様はもういちど穴の中の部屋をのぞきました。
すると『だめだ、どうしても、ドアを打ち破ることができない。しかたがない、こうなったら王様が部屋から出てくるのをまっていて、つかまえることにしょう』と、言っている家来たちの声が聞こえました。どうやら、家来たちはドアをこわすのをあきらめたようです。
「しめた!いまのうちだ。向こう側の王様のいないうち。この穴のあいている壁をこわして、あの宝物をぜーんぶ、わしのものにしてしまえ。ふっふふ、なんてわしは頭がいいのだろう」
王様は、自分のステキな考えにニコッとしました。
ゴンゴンゴン、ドンドンガッコン、ドンコラショ。
王様はいっしょうけんめい、大鉈をふるい壁を叩きました。かたい壁も、王様のがんばりに、とうとうこわれそうになりました。
「しめしめ、これであの宝物は、ぜんぶわし一人の物になる」
ひたいに流れる汗をぬぐい、はあはあと大きく息をはずませ王様は、ちからいっぱい壁をたたきました。
いままで汗を流したことのない王様の顔にっ玉のような滴が浮き、王様が鉈を振るうごとにパラパラと汗が飛びキラキラと宝石のようにきらめいていましたが、そんなことを王様は知りませんでした。
パカ〜ン!
王様の頑張りに大きな音がしてとうとう壁はくずれました。
やっーたーと思ったトタン王様は、
「ありゃ〜?…」
王様は、目を丸くしました。
なぜかって?
こわれた壁の前には自分の国の家来たちが、たくさん立っていた。のさ。
終わり
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